プロ野球、主力の穴埋めるならベテランより20代 評価指標が示す起用法
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まだシーズン序盤ながら、今年のプロ野球は主力にけが人が多く出ている。飛車角クラスの選手が早々に離脱したチームの首脳陣は、長いレギュラーシーズンを戦う上で思惑が外れたと感じているだろう。ただ、代えのきかない選手の不在は、腰を据えて若手を起用するいい機会と捉えることもできる。
代替可能な選手と比べてどれだけチームの勝利数を増やしたかを表す指標「WAR」について、データ分析を手掛けるDELTA(東京・豊島)が算出した2024年の野手上位20人のうち、1位の近藤健介(ソフトバンク)や岡本和真(巨人)、村上宗隆(ヤクルト)、細川成也(中日)、周東佑京、今宮健太(以上ソフトバンク)らが欠場している。現在は復帰しているが、2位の栗原陵矢(ソフトバンク)と3位のタイラー・オースティン(DeNA)も一時離脱した。
主力でこれだけ序盤に故障者が出るシーズンはまれではないか。不在によって開いた穴をどういう選手で埋めるかはチーム事情によって様々だろうが、思い切って若手を抜てきするいい機会で、実際にデータの裏付けもある。
14〜25年(25年は15日現在)について年齢別に600打席あたりの平均WARをみると、最も高いのが26歳と27歳の2.4で、次が28歳と29歳の2.3。シーズンを通じて試合に出た場合に最も活躍度が高いのが26〜27歳の選手だということが分かる。野手全体でみると20代前半から徐々に貢献が増え、26〜27歳の「最盛期」に高いパフォーマンスを発揮することが見込める。
世代別にみても、24年で最も高かったのは26〜29歳、次が30〜33歳で、34歳以降は最も低かった。主力が抜けると経験豊富なベテランに頼りたくなるところだが、20代後半での大成を見込んで若い選手を使っていくことが、短期的にも中長期的にもチームに最も利益をもたらすといえる。
実際、近年は若手を積極的に使う動きが出ている。25歳以下の野手が打席に立った回数は15年の1万3502回から増加傾向にあり、24年は1万7015回。最多が続く26〜29歳とは17年に9000以上の差があったが、24年は約1600にまで減った。若い選手にチャンスを与える機会が多くなり、球界全体で世代交代が進んでいるといえるかもしれない。
野手の起用平均年齢を球団別にみると、日本ハムは一貫して26〜27歳と若いが、最近では阪神や中日も低年齢化が進んでいることが分かる。ソフトバンクはここのところ高止まりし、昨年は12球団で最も起用年齢が高かったが、今年はこの傾向に歯止めがかかるかもしれない。
近藤や今宮のほかにも柳田悠岐ら故障者が多く出ているソフトバンクは一時、開幕スタメン9人のうち8人が先発メンバーから外れる試合があった。ここまでくるとさすがに若手を使わざるを得ない。4軍制を採用し、12球団で断トツの育成選手を抱えるチームの真価が問われるところだ。
過去、思い切った抜てきが奏功した例の代表に坂本勇人(巨人)がいる。08年に19歳ながら遊撃でスタメン起用されるようになり、そのままレギュラーの座をつかんだ。二岡智宏がけがで離脱したことで白羽の矢が立ったが、そこでポジションをものにしたのは見事で、あれだけスムーズに世代交代が実現したケースも珍しいだろう。
遊撃手は守備範囲の広さや中継プレーに関わる頻度の高さなどから守りの負担が大きい。それだけに、傑出した守備力や打力がある選手が担えば他チームに対して大きく優位に立つことができる。巨人が00年代後半から10年代前半にかけて何度もリーグ優勝を果たした要因の一つに、攻守で高いレベルのプレーを見せる坂本が最重要ポジションの遊撃を守ってきたことがある。
その坂本は今年、極度の打撃不振に陥っているが、今月7日、けがで離脱した岡本と入れ替わりで1軍に復帰し、貴重な適時打を打った。主砲の離脱で消沈するチームを奮い立たせるのに、これ以上の選手はいなかっただろう。
主力の離脱は若い選手を育てる好機だが、やみくもに出番を与えればいいわけではない。将来のレギュラー候補と見込む選手が多くの出場機会を手にするべきで、そうした人材が見当たらなければ、短期的な利益を重視しベテランに頼るのも手だろう。様々な兼ね合いをクリアし、どのようにして目先の勝利と中長期の強化の二兎(にと)を追うか。選手起用の仕方から各チームが何を目指しているかが見えてくるだろう。
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