「常軌逸した」為替ボラティリティー、関税巡る混乱でさらに悪化か

通貨トレーダーは為替市場の変動がさらに激化する状況に備えている。貿易戦争がエスカレートしつつあり、世界経済の秩序を揺るがしていることが背景にある。

  ドルなどの主要通貨は2008年の金融危機以来となる大きな価格変動で乱高下している。トランプ米大統領が関税に関して相反するメッセージを発しているためだ。オプションの取引高は先週、過去最高に急増。貿易戦争を巡る不透明感から、向こう1カ月の予想変動率は2年ぶり高水準に押し上げられた。

  スペクトラFXソリューションズのブレント・ドネリー社長は「為替のボラティリティーは完全に常軌を逸している」とリポートで指摘。「当社でも週間ベースで過去最大級の活発なトレーディングが見られた。取引量が膨大で、誰もがあらゆる取引を行っている」と述べた。

  1日当たり7兆5000億ドル(約1110兆円)規模の取引が行われる外国為替市場は、長らく続いた静寂を破り、突如として活気を取り戻した。トランプ氏の大統領返り咲き以降にボラティリティーが上昇、FX取引の収益性が既に高まっており、オプティバーやシティグループなどの企業はトレーディングチームを拡大している。最近は関税に関するニュースが異例の価格変動を引き起こしており、企業のこうした動きは絶妙のタイミングだったと言えそうだ。

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  ドルは先週、日中ベースで2009年以来の大幅安を記録した。その翌日にはオーストラリア・ドルが2008年に匹敵する急落となった。為替オプションの動きがガイダンスになるとすれば、トレーダーはこうしたレベルの混乱に慣れておく必要があるだろう。

  為替相場が最近のレンジをさらに大きく外れる場合に利益となるデリバティブの需要が増えている。激しい双方向の値動きに備える一般的なヘッジ手段とされるオプション取引は、ユーロとオーストラリア・ドル、スイス・フランで3年ぶりの高水準に達した。ポンドとノルウェー・クローネでは2年ぶりの高水準となった。

市場シフト

  トレーダーは金利差や財政赤字、リスク見通し、市場のポジション動向などさまざまな要因をもとに為替レートを分析する。今は貿易戦争が経済関係や金融政策を予測困難な形で覆す恐れがある。

  他の市場でもここ数日は大きな変動が見られており、S&P500種株価指数の先物では高いボラティリティーが数カ月続く可能性が示唆されている。しかし為替市場では特に顕著な構造の変化が起きている。米大統領選以降、為替市場のボラティリティーは新型コロナ禍後で初めて金利市場のそれを上回っている。ここ数年は、むしろボラティリティーをショートにする戦略が主流だった。

  今や一般的なオプション取引だけでなく、より極端な事態に備える取引までもが急増。市場参加者は大きな値動きが新たな常態になることに備えているほか、極端な動きへのリスクヘッジも強化している。

原題:Traders Bet ‘Insane’ FX Volatility Will Worsen on Tariff Chaos(抜粋)

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