これほど「コスパのいい就職」はない…MARCHから年収1600~2000万円超の「五大商社」を狙える"3大学の名前" じつは早稲田の「下位学部」より偏差値が高い

入試偏差値としては不十分な学歴でも、一流企業に入る方法はあるのか。受験・学歴研究家の伊藤滉一郎さんは「大企業は採用大学を『MARCH(明治・青学・立教・中央・法政)以上』に設定していることが多い。医師や弁護士より高い年収が狙える『五大商社』でも、その傾向は変わらない」という――。

民間就活において絶大な人気を誇る業界が存在する。「総合商社」だ。

総合商社とは、海外との輸出入貿易を行う商社のうち、特に幅広い商品・サービスを扱う企業のことを指す。これに対し、特定の分野に特化して業務を行う商社を専門商社という。

総合商社の中でも、三菱商事、伊藤忠商事、三井物産、住友商事、丸紅の5社は総称して「五大商社」と呼ばれる。日夜SNSや合コンで持て囃され、激務とプライベートを両立させるバイタリティをさまざまな場面で発揮している。

総合商社は民間就活を行う学生から文理問わず人気を集め、外資のコンサルティング会社などと並んで憧れの的となっている。

そんな「五大商社」の2024年3月期の平均年間給与は、三菱商事2090万円、三井物産1899万円、住友商事1758万円、伊藤忠商事1753万円、丸紅1654万円となっている。

医師や弁護士より高くなりうる年収を見ると、昨今の総合商社人気にも頷ける。

「五大商社」の採用大学は早慶が際立つ

優秀な学生から人気を集める総合商社だが、五大商社への大学別の入社人数は下記のようになっている。

各大学の発表(2024年卒)を基にプレジデントオンライン編集部作成

図表1は五大商社の「採用大学」の上位10位までを一覧にしたものだ。

東京大学はいうまでもないが、早慶(早稲田・慶應)の強さが際立つ。私学の雄・早慶は学生の母数が多いことに加え、特に慶應義塾大学の卒業生組織「三田会」は、就職活動において大きな影響力を持つことから、いずれの総合商社においても採用人数上位に位置している。

このほか、京都大学をはじめとする旧帝大や一橋大、商科大を前身とし就活に強いことで有名な神戸大など、錚々たる大学が並ぶ。

大学入学時の学力が一つの指標として働く以上、入試偏差値が上位の大学が占めることに違和感はない。

しかし、大学入学時に旧帝大や早慶レベルに受からなければ完全にその道は閉ざされるのかといえばそうではない。


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明治と立教の具体的な取り組みについても見ていきたい。

明治大学では、もともと「就職の明治」と呼ばれるくらい、民間就職に熱心だと言われている。大学の就職活動支援は非常に手厚く、「エントリーシート書き方講座」「グループディスカッション講座」などが外部業者と提携して実施される。キャリアカウンセラーの資格を持つ職員も多く、年間3万件を超える学生の就職相談に対応している。

また、明治大学は内部生の質も高い。特に、明大明治中高などは中学入試の難易度においては早慶附属に肉薄しており、東大合格者を10人以上輩出する進学校にも勝る実力を兼ね備えている。

こうした内部生たちは地頭の良さに加え、大学受験で燃え尽きるということもない。エネルギーを持て余したエスカレーター組には留学に行く者や体育会入部者も多く、そこで形成されたバランスの良い人格が就活の強さにつながっているのだろう。

続いて立教大学だが、こちらもキャリアセンターはかなり熱心なようだ。採用が内定した4年生がボランティアとして自主的に後輩を支援する「学生サポーター」という仕組みも構築されている。

また、立教も後述する青学と同様に立教小学校・立教女学院小学校からのエスカレーター組が存在する。政治家や芸能人の子弟も多く、今をときめくタイミーの小川嶺社長も立教内部生だ。こうした手厚いサポート×血統の良い内部生の存在が他学生にも刺激を与え、最上位層の高い就職実績に結びついているものと考えられる。

青学はMARCHで断トツの「血統」

青山学院は近年の駅伝での無双ぶりや表参道という抜群の立地にキャンパスを構えることから人気が上昇している大学だが、明治、立教と比べると入り口の難易度は少し劣る印象だ。

そんな青学が総合商社に強い理由は「血統」が大きく関係しているのではないかと考えられる。

青山学院は幼稚園から大学までの一貫教育を提供しており、特に青山学院幼稚園の初年度納付金額は160万5000円(2021年度入園)と、都内の私立幼稚園の中では最も高額だ。

お金というハードルに加え、そのブランドイメージを守るため誰でも入れるわけでなく、有名サッカー選手や有名俳優の子息でさえ不合格となった事例もあるようだ。

幼稚園から、といわずとも小中高とどこかしらのタイミングで青山学院を志す学生には、「両親も青学だから」という理由も多く見られ、一昔前には青学出身カップルが大学のチャペルで挙式するといった事例も多く見られたものだ。

青山学院幼稚園の正門(画像=江戸村のとくぞう/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

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図表2は早慶大の一つ下の大学群にあたる「MARCH(明治・青学・立教・中央・法政)」の総合商社入社人数の一覧だ。

各大学の発表(2024年卒)を基にプレジデントオンライン編集部作成

図表2を見てわかるように、少数ではあるもののMARCH出身者にも門戸が開かれていることがわかる。

特に伊藤忠商事の11人採用には目をひかれるが、伊藤忠商事は現在五大商社の中で唯一、一般職の新卒採用を継続しているという点は留意が必要である。実質的な総合職の採用数は他社と同様の3~6人ほどと推測するのが妥当だろう。

大学受験を経験した方ならおわかりの通り、一般受験における「MARCH」と「早慶」そして「早慶」と「旧帝大」の間には大きな溝が横たわっている。

「MARCH」から総合商社に行くことが叶えば、これ以上ない「高コスパ」な進路だといえるだろう。

総合商社を目指すなら「MAR」

MARCHの大学別の五大商社内定数は図表3の通りとなる。

各大学の発表(2024年卒)を基にプレジデントオンライン編集部作成

これを見てわかるのは、明治・青学・立教の「MAR」が比較的強いということだろう。

いったいどのような要因があるのだろうか?

まず、明治と立教は長らく、「MARCH」の中では入学難易度が相対的に高く、早慶にギリギリ届かなかった受験生が多く進学することが大きく影響しているだろう。

明治、立教の上位層が早慶に受かるかどうかはまさに紙一重であり、時の運ともいえる。

また、入試偏差値で見ても早稲田の下位学部であるスポーツ科学部や人間科学部、教育学部は偏差値(ベネッセ)が68~72であるのに対し、明治の上位学部である法学部や経営学部、立教の経営学部や異文化コミュニケーション学部は73であり、入り口の難易度で見てもそう変わらないどころか、上回っているケースさえある。

「MARCH」の中では最も学力面で早慶に近い人材が集まっていると考えて間違いないだろう。

その上で、受験での挫折も大学生活での取り組みにプラスに働き、大学スポーツにおいて明治大が早慶に向ける「絶対負けたくない」という想い同様のバイタリティを発揮し、下剋上をはたしているという側面があるのかもしれない。


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実際、青山学院が公式で出している総合商社内定者のインタビューには「祖父母や両親が青山学院大学出身のため、自然と青学が進学先の候補になりました」との記載があった。このように、長く続いてきた「青学ブランド」に共感し、成功してきた「血統」が就活において効いてくるのかもしれない。それこそ縁故採用の類は一昔前と比べ減ってきているが、財閥系も多い総合商社においては、ブランド力や育ちの良さが一定のバリューを発揮しているのだろうと考えられる。

一方で中央大、法政大の2校は例年、五大商社の内定者が少ない傾向にあるが、これはなぜなのだろうか。

まず中央大学だが、やはり法学部を看板学部に持つこともあり、優秀層が民間就職を志さない傾向がありそうだ。

中央大学法学部は入試偏差値で見ても早慶の下位学部と遜色なく、法曹志望者からすれば明治・立教などより進学優先度も高い、中央の看板学部だ。

MARCH「トップ層」のポテンシャル

そんな中央法の進路状況(2023年度卒業生)を確認すると、全体の約20%が法科大学院などへの進学か受験準備の道に進み、就職を選ぶのは約75%だ。

その75%の中でも、4分の1に迫る23%が公務員の道を選んでおり、合わせると法学部卒業生の約4割が法曹や公務員への道を選んでいると考えられる。

大学全体の中の優秀層がこのような志向性を持っていることが、総合商社内定数が少ない要因のひとつと見て間違いないだろう。

一方で法政大学は「MARCH」の中では最下位とされ、入試偏差値においては少なくともそのような傾向が出ている。

大学受験においては最後の追い上げで受かるという事象は多くみられる。上記で明治・立教のトップ層と早慶の下位層は紙一重、時の運の要素はあると述べたが、それは法政においても同様である。一つ下の大学群にあたる成蹊や成城の上位層と法政の下位層は紙一重だろう。

ここまで各大学の特徴を見てきたが、「MARCH」の上位大であれば総合商社の内定は十分に可能性がある。

しかし、当然ながら各大学のトップ層でいることは必要条件となる。

早慶の学生が高田馬場や日吉の街で飲み狂っている中で鍛錬を重ね、総合商社に求められるようなスモールビジネス起業や体育会、留学など多方面に力を発揮すれば、道を切り拓くことが可能だろう。

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