ウォール街の米株目標引き下げ相次ぐ、エバコアも-貿易戦争を懸念

貿易戦争への懸念が強まる中で、米国株の指標S&P500種株価指数の時価総額は先週、わずか2日間で5兆4000億ドル(約790兆円)吹き飛んだ。これを受け、エバコアISIも他のウォール街の金融機関に追随し、2025年の目標が楽観的過ぎたと認めた。ただ年末までに相場は今の水準から上昇すると予想している。

  株式およびクオンツ担当チーフストラテジストのジュリアン・エマニュエル氏は、S&P500種の年末予想を5600に引き下げた。これは4日終値の5074を約10%上回る水準。トランプ大統領が打ち出した幅広い関税措置がグローバル金融市場を混乱させ、2日連続で投資家を動揺させた。

  年末予想をこれまで6800としてきたエマニュエル氏はウォール街屈指の強気派の1人だったが、見通しを大きく転換した。S&P500種の25年と26年の1株利益予想もそれぞれ255ドルと272ドルに引き下げた。

  S&P500種は2月のピークから17%下落し、弱気相場入りの瀬戸際にある。エバコアISIに先立ち、RBCキャピタル・マーケッツやゴールドマン・サックス・グループ、バークレイズ、ヤルデニ・リサーチも、トランプ関税の不確実性を理由に年末目標を大幅に引き下げた。

  エマニュエル氏は6日の顧客向けリポートで、「長期にわたる不確実性は資産のボラティリティーを高め、信頼感を損ない、スタグフレーションや本格的なリセッション(景気後退)を引き起こす。トランプ氏のディールメーキング能力が試され、勝利をもたらす可能性もあるが、報復やエスカレートを招きかねない」と警告した。

  直近の下方修正は、トランプ大統領が4月2日に相互関税を発表したことが引き金となった。トランプ氏は貿易相手国・地域からの全ての輸入品に一律10%の関税を賦課し、対米貿易不均衡の大きい中国など約60カ国・地域を対象に上乗せ税率をそれぞれ適用するとした。

  パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長は4日、新たな関税に伴う経済的影響は想定より大きくなる可能性が高く、米金融当局としては労働市場の悪化を警戒しつつ、インフレ抑制を図る必要があるだろうと述べた。

  エマニュエル氏は「第2次大戦後80年にわたり基盤となってきた経済と地政学、国内政治の秩序を80日間でつくり直そうとするのは、めちゃくちゃだ。1930年成立のスムート・ホーリー法より大規模な関税の『大きなハンマー』でそれを行えば、混乱を招くのは必至だ」と指摘した。

原題:Evercore ISI Is Latest Firm on Wall Street to Cut S&P 500 Target(抜粋)

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