「ホテルを売ってくれませんか?」毎週届く手紙……「北海道が少しずつ外資に飲み込まれていく」実感する社長の思いとは|まいどなニュース

 円安なうえに海外に比べて物価が安く、安全、きれい、和食や土地固有の文化があるなど、海外の観光客にとって日本は魅力的な旅行先。その結果、インバウンドに人気の地域にはさまざまな問題が起こっています。

 北海道も観光業で儲かると見込んだ外国資本が、ホテルや土地を買うという動きが活発になっていて、場所によってはまるで海外リゾートのようになっているといいます。そんな現状を共有し、皆で考えようという発信がXで話題になっています。

売ってくれと手紙が来るふく井ホテルと、ゆうた社長(提供:ゆうた社長)

「毎週のように『ホテルを売ってくれませんか?』という手紙が届く。ニセコに始まり、富良野やトマム――北海道が少しずつ、外国資本に飲み込まれていく。こんな形でオファーが来るのかと実感する。お金に目が眩み魂を売って、その手にしたお金で、何が手に入るというのか。手放した土地は、二度と戻らない。このホテルは“商品”じゃない。そして、十勝という地域も“商品”じゃない。土地やホテルは、地域の誇りであり、みんなの思い出そのもの。

――売るわけないだろ!🔥」

毎週のように「ホテルを売ってくれませんか?」という手紙が届く。ニセコに始まり、富良野やトマム――北海道が少しずつ、外国資本に飲み込まれていく。こんな形でオファーが来るのかと実感する。お金に目が眩み魂を売って、

その手にしたお金で、何が手に入るというのか。…

— ゆうた社長(法人4社 社長)in十勝 (@yutahayashi0731) October 15, 2025

 こうポストしたのは、3年半前に、創業95年の老舗の「ふく井ホテル」を引き継いだ「ゆうた社長(法人4社 社長)in十勝」(@yutahayashi0731)さんです。この投稿は、969.2万回表示され、300を超えるコメントが寄せられるほどの反響に。ゆうた社長さんに、詳しい話を聞きました。

──たとえばニセコは、外国人観光客や外資がはいることで、元々いた住民が出て行ったり、どこにでもあるリゾート地のようになっていたりするのでしょうか。

 ニセコなどでは地元の方が所有していた土地の価格が急騰し、固定資産税の高騰によって出ていかざるを得ない状況も起きていると聞きます。「どこにでもあるリゾート」というよりは、もはや「海外に行ったような感覚」に近いのではないでしょうか。

帯広駅前で、「モール温泉」の源泉掛け流しがあることが、外国企業や外国人にも魅力にうつる

──ゆうた社長さんがいらっしゃる十勝でも、外資が入ってきていると感じられますか?

 十勝は、他の地域に比べるとまだ外資の影響は限定的に見えます。ホテルや土地の取得も現時点ではそこまで多くありません。ただ、帯広中心部から離れた場所では海外資本が入ったという噂も耳にしますし、隣の富良野・トマムが飲み込まれつつあるのは周知の事実です。

 だからこそ、僕は「十勝が北海道・道東の防波堤にならなければならない」と思っています。十勝が守られなければ、道東全体が飲み込まれてしまう…そんな危機感を持っています。

これぞ北海道! 自然いっぱいの公共牧場「ナイタイ高原牧場」(提供:ゆうた社長)

──そのように十勝や北海道に強い思いを持たれるようになったきっかけはありますか?

 僕は札幌出身で、広い意味では北海道民ですが、十勝という枠で見れば「よそ者」です。大学卒業後は東京と大阪で計11年間働き、特に大阪・淀屋橋では8年間過ごしました。そんな「よそ者」だからこそ、十勝の魅力に強く惹かれるのだと思います。

 最初に十勝に目が向いたのは、5年半前。大学時代の同期・米田から「十勝で起業しないか?」と声をかけられたのがきっかけです。

 実際に十勝で働くようになり、何もかもが豊かな土地だと感じました。自然、農業、食、人のどこを切り取っても魅力的。年を重ねるごとにその魅力に惹かれ、今では誇りそのものになっています。きっかけを一言で言えば「大学時代の友人と十勝で起業したこと」ですが、誇りに変わったのは「徐々に」という表現が一番しっくりきます。

──ふく井ホテルを引き継いだのはなぜですか?

 ふく井ホテルは、当時創業95周年を迎える帯広を代表する老舗ホテルでした。しかも、北海道・十勝の宝である「モール温泉」を源泉掛け流しで楽しめるビジネスホテルです。

 私たちは、継承の話が出た時点で創業1年11か月ほどの新しい会社でしたが、そんな私たちに「未来を託したい」と言ってくださったオファーに、「光栄」という言葉以外見つかりませんでした。あの瞬間が、十勝と真正面から向き合う覚悟を決めた瞬間だったと思います。

帯広の森にあるグランピング施設「グランピングリゾート・フェーリエンドルフ」(提供:ゆうた社長)

──現在は、十勝でさまざまな事業をされているのですね。

 ふく井ホテルのほか、帯広競馬場敷地内にある地元野菜などのショップやグルメが楽しめる「とかちむら」、帯広の森にあるグランピング施設「グランピングリゾート・フェーリエンドルフ」、天然モール温泉「ひまわり温泉」などがあります。すべての事業の軸足は十勝に置き、「この十勝に“人とお金を呼び込む”」をテーマに取り組んでいます。

──十勝を自分たちの手で盛り上げようとされているのですね。今回の投稿がとても話題になりました。あまり実感を持っていなかった人も、北海道の現状を知り、考えるきっかけになったように思います。

 「ホテル、売ってくれませんか?」という手紙は、来るたびにゴミ箱に直行していましたが、今は来るたびにXに投稿するようにしています。その甲斐あって、多くの人に見ていただき、いろいろな方とこのことについて会話をするようになりました。

 「飲み込まれてからでは遅い」。今ならまだ、地元の意思で守ることができる。だからこそ、“手が打てるうちにみんなで守る”という意識を共有したいという想いで発信を続けています。

「土地やホテルは、地域の誇り。売るわけないだろ!」(提供:ゆうた社長)

 ◇ ◇

 ゆうた社長さんの投稿には、さまざまなコメントが集まっています。

「地域も商品じゃない本当にその通りですね!十勝住みではないですが十勝は北海道が誇る素晴らしい地域だと私は思います!

共に北海道を守りましょう」

「頑張って下さい。十勝は日本にとって貴重な食料庫でもあります。個人的には北海道で一番好きな土地です。

絶対に諦めないで下さい!!」

「釧路の方に土地を持っています。両親が別荘用にと買った土地ですが、度重なる地震で価値が落ちてしまいました。それでもソーラー目的で『買いたい』と問い合わせきますが、絶対に外資には売りません!」

「私は、父からもらった土地を手放して後悔しています。父の魂が宿っていた土地だったと今になって、つくづくと思われます。土地は夢です!土地あれば夢を語れます🌟

お金では買えない大切な夢😴🌟」

「富良野で札幌の不動産会社に土地売った人がいたんだけど、後でこの土地が実は中国人に渡ったと知って死ぬほど後悔してました。不動産屋に、騙されたと騒いでも後の祭り😞

道民の皆さん、『土地売って!』には要注意です」

 これは北海道だけの問題ではありません。ゆうた社長さんが話すように、自分の大切な場所について考えてみませんか。

◾️ゆうた社長(法人4社 社長)in十勝さんのX https://x.com/yutahayashi0731

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