チーム戦術のキーマンはこの選手。 新たな居場所で躍動した井上健太をMOMに推したい [24節 名古屋戦レビュー]
トップ下抜擢は理に適っていた
井上健太のトップ下起用に大島秀夫監督の狙いが凝縮されていた。「今日のシステム的に(谷村)海那が走って(井上)健太が相手の背後を突いていく狙いで、前半からもっとロングボールを入れていこうと思っていた」とゲームプランを明かしたのは積極的にロングボールを狙ったGK朴一圭だ。
最前線で絶え間なくランニングを繰り返し、ハイボールに体を投げ出せる谷村海那の存在は大きい。それを井上が衛星的に援護射撃する形は、組み合わせとしては理想に近い。これについては植中朝日を起用しても同じことができるだろう。
ポゼッションの出口として機能した井上。それでも満足感はない。「谷村選手と横並びにならずにもっと縦になるような関係性でやりたかった。潜っていくのが自分の特徴なので、そこはもっと出したかった」と今後の課題が真っ先に口をついた。
ウイングプレーヤーとしては最終局面での精度という課題がどうしても残る。局面を打開する働きや点で合わせるようなクロスを求められる場面もある。右でも左でもあと一歩のプレーが続いていたのは、誰よりも本人が理解しているだろう。決定的な仕事をやり切れないもどかしさは、チームの結果にも直結してしまう。ヤン・マテウスやエウベルといったリーグ屈指のウインガーとの比較も、メンタル的なプレッシャーだったのは想像に難くない。
名古屋グランパス戦での役割は、誤解を恐れず言えば決定的な仕事ではなかった。それよりもチーム全体を機能させるために、背番号17は重要な役割を果たした。中央から斜め前へ抜けるランニングで効果的にボールを引き出し、相手を自陣へ背走させる。その繰り返しがボディブローのようにダメージを与えていった。仲間のために汗をかける選手なのだから、理にかなった起用法だ。
満足感は一切なくても、手ごたえはまずまずの様子。
「もっとプレスをかけたかった。でも今日は相手のボランチにつくというタスクがあった。もっと前から行って、後ろもついてきてほしい。それが自分たちの戦い方なのでもっと浸透させたい。(背後へのランニングは)自分の良さだし、それをやらなければ出る意味はないと思っていた。暑くてめちゃくちゃキツかったけどやれてよかった」
新たな居場所で躍動した井上健太をMOMに推したい。
最下位脱出は「ひとつ前向きになれる要素」(宮市亮)
チームとしての狙いを全員で体現したマリノスは、序盤に何度かピンチを迎えている。サッカーにおいて試合の趨勢を決めるターニングポイントだったように思う。相手のシュート精度に助けられた部分もあったが、GK朴一圭のファインセーブは大きな役割を果たした。
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