ホンダ・日産がともに抱える難題、中国の過剰生産能力-統合へ対応急務
経営統合を含めた選択肢を検討していることが明らかになった日産自動車とホンダが共通して直面する課題の1つは、比亜迪(BYD)など地場の新興勢力が台頭する中国での過剰な生産能力の解消だ。世界最大の自動車市場である中国で日系を含む海外勢の販売は激減しており、早急な対応を迫られている。
業績が悪化している日産は、再建計画の一環として世界での年間生産能力を100万台引き下げ400万台にする計画だ。日産のデータによると、同社の中国での前期(2024年3月期)生産台数は77万9756台と近年のピーク時からほぼ半減した一方、野村証券によると同社の中国生産能力は150万台。足下では約72万台の余剰が生じている計算だ。
日産の23年度の中国生産台数は約78万台と近年のピーク時から半減
出典:日産
苦しい状況はホンダも同様だ。中国での生産能力149万台に対して前期の生産実績は約117万台にとどまった。ホンダの青山真二副社長は11月の会見で、今期(2025年3月期)中に96万台まで削減する一方、新たに立ち上げるEV専用工場で24万台が上乗せされる見通しだと述べた。120万台となる生産能力は販売のペースに対して過剰で、さらなる削減を前提にパートナー企業などと協議を進めているとしていた。
中国では日系に限らず海外勢は厳しい戦いを強いられており、米ゼネラル・モーターズも今月、中国での工場閉鎖や事業再編などに伴い50億ドル(約7700億円)を超える費用・評価損が発生する見通しだと発表した。日産とホンダは依然生産能力に余剰を抱え、中国での拡販もすぐに見込めない中、削減に向けてさらなる努力に迫られそうだ。
マッコーリー・グループのアナリスト、ジェームス・ホン氏は18日のブルームバーグテレビジョンのインタビューで、ホンダも日産も販売の減少幅が大きい中国市場が「最大の懸念事項」との見方を示した。「両社とも中国市場における固定費負担を少なくともいくらかはカバーするために大幅な生産能力削減を行うことになる」と続けた。
次世代技術に期待も
日産の坂本秀行副社長は11月のアナリスト向け説明会で、グローバルの生産能力約500万台に対し、今期(25年3月期)の生産見通しは320万台だと説明した。平均稼働率が全体では64%なのに対し、中国を除くと72-73%で中国の不振が際立っている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の吉田達生シニアアナリストによると自動車業界で「望ましい水準」とされる稼働率は約8割。
日産は今年3月に公表した中期経営計画で、26年度までの3年間に年間の世界販売台数を100万台上乗せする計画を示していたが、中国などの販売不振を受けてわずか7カ月あまりで撤回。逆に生産能力の2割削減や9000人のリストラなど事業規模の縮小に迫られているが、詳細については明らかにしていない。
シティグループ証券の吉田有史アナリストは11日のリポートで、稼働率が低迷する中国が日産の削減計画の半分以上を占めると予測を示した。
日産の地域別生産能力と稼働率一覧
地域 生産能力(万台) 稼働率 中国 150 40%強 北米 135 米国約70%、メキシコ100%以上 日本 110弱 60%弱(日産車体含む) その他 100 - 英国 40強 65% 出典:野村証券BIの吉田アナリストは、「中国市場が日本メーカーにとってまた儲かるマーケットにならないとは言わないが、目先3-5年はそんなうまい話にはならなさそうだ」と話す。そのため日産も少なくとも一旦は生産能力を削減し、販売が回復したら能力を再び伸ばせばいいと続けた。
過剰な能力削減が急務となる中、日産も手をこまぬいているわけではない。坂本副社長によると、生産ラインのスピードやシフトパターンの変更、老朽ラインの新鋭ラインへの統合、栃木工場(栃木県上三川町)に導入した次世代生産技術の活用については既に取り組みを始めており、来年や再来年に効果が出てくることを見込んでいるという。