【宝塚記念】鮮やか逃げ切り! 7番人気メイショウタバルがGⅠ初制覇 武豊騎手は19年ぶり5勝目「涙が出そうになるぐらいうれしかった」

7番人気のメイショウタバルが武豊騎手に導かれて逃走V=15日、阪神競馬場、撮影・安部光翁

(宝塚記念、2025年6月15日 15:40、GI、阪神11R、芝・右2200m)

武豊(56)=栗・フリー=騎乗で7番人気のメイショウタバルが鮮やかに逃げ切ってGⅠ初制覇。鞍上は今年GⅠ初勝利。レース史上最年長となる56歳3カ月1日で、自身の持つ最多勝記録を更新する5勝目を飾った。石橋守調教師(58)=栗=は、開業12年目でGⅠ初勝利となった。2着に1番人気ベラジオオペラ、3着に10番人気ジャスティンパレスが入った。

すべてが必然であるかのようだった。人と馬が紡いできた縁はやおら形を成していく。メイショウタバルが鮮やかに逃げ切ってGⅠ初制覇。武豊騎手は2006年ディープインパクト以来19年ぶりのVで、歴代最多記録を更新する宝塚記念5勝目。左手でムチを天高く突き上げて、スタンドの大声援に応えた。

「涙が出そうになるぐらいうれしかったです。人がつないでくれた馬の縁、馬がつないでくれた人との縁。いろんな思いがありますね」

名手が完全にレースを支配した。発馬を決めると、二の脚を使っていつも通りハナへ。1000メートル通過は59秒1で「それ以上は速くしたくなかったし、スローにも落としたくなかったのでちょうどいいぐらいの入りかな」。後続に脚を使わせながらも、スローペースに落とさない絶妙なラップを刻んで気分良く運ぶ。直線入り口ではベラジオオペラが並びかけてきたが、余力十分とばかりに突き放した。2013年、14年と連覇したゴールドシップの産駒が、3馬身差をつけて父の日に同レース4組目となる親子制覇を決めた。

武豊騎手、石橋守調教師、松本好雄オーナーの3人は切っても切れない縁で結ばれている。鞍上はトレーナーと幼少期から親交があり、オーナーは若手の頃からサポートしてくれた恩人。GⅠ4勝を挙げたメイショウサムソンは、騎手時代の石橋師と武豊騎手が手綱を取っていた。その石橋師がトレーナーに転身して、開業12年目に鞍上・武豊でGⅠ初制覇。ドラマのような勝利に「騎手の時はうれしいばっかりでしたけど、(調教師になってからは)涙が出ましたね。オーナーに少しでも恩返しができたかな」と師は目頭を押さえた。

タバルは春のドバイ遠征を経験してメンタル面が一気に成長。今までは父譲りの激しい気性面が災いして暴走してしまうことがあったが、慣れない環境に身を置くことで折り合いがつくようになり、もともと高かった能力を最大限に発揮できた。

今後は未定だが、ビッグタイトルをつかんだメイショウタバルの将来は明るい。筋書きのない人馬のドラマをこれからも描いていく。(増本隆一朗)

■メイショウタバル 父ゴールドシップ、母メイショウツバクロ、母の父フレンチデピュティ。鹿毛の牡4歳。栗東・石橋守厩舎所属。北海道浦河町・三嶋牧場の生産馬。馬主は松本好雄氏。戦績11戦5勝(うち海外1戦0勝)。重賞は2024年GⅢ毎日杯、GⅡ神戸新聞杯に次いで3勝目。獲得賞金4億4164万6600円(うち海外2355万3600円)。宝塚記念は武豊騎手が1989年イナリワン、93年メジロマックイーン、97年マーベラスサンデー、2006年ディープインパクトに次いで5勝目、石橋守調教師は初勝利。馬名は「冠名+熊本県の地名」。

★アラカルト

◆武豊騎手 2006年ディープインパクト以来、5勝目。自身の持つ最多勝利記録を更新した。JRA・GⅠは24年のジャパンC(ドウデュース)以来で、通算84勝目。JRA重賞は目黒記念(アドマイヤテラ)以来で今年2勝目、通算365勝目。

◆騎手の宝塚記念最年長勝利 56歳3カ月1日での勝利は、最年長記録の蛯名正義元騎手の47歳3カ月8日を更新。

◆石橋守調教師 初出走で勝利。JRA・GⅠは管理馬延べ7頭目の出走で初勝利。これまでは24年天皇賞・春(スマートファントム)の4着が最高。JRA重賞は24年神戸新聞杯を同馬で制して以来で、通算3勝目。

◆ゴールドシップ産駒 産駒初出走で勝利。JRA・GⅠは21年オークス(ユーバーレーベン)以来で、通算2勝目(ほかJ・GⅠ1勝)。JRA重賞は日経賞(マイネルエンペラー)以来で今年3勝目、通算14勝目。

◆親子制覇 メイショウタバルの父ゴールドシップは13、14年に制しており、同レースでは4組目(母エイトクラウン-ナオキ、父グラスワンダー-アーネストリー、父ディープインパクト-マリアライト)の親子制覇を果たした。

◆馬主・松本好雄氏 01年(メイショウドトウ)以来で、24年ぶり通算2勝目。JRA・GⅠは13年エリザベス女王杯(メイショウマンボ)以来で、通算10勝目(ほかにJ・GⅠを2勝)。JRA重賞は24年の神戸新聞杯を同馬で制して以来で、通算72勝目。

◆生産牧場・三嶋牧場 生産馬3頭目の出走で初勝利。これまでの最高は20年メイショウテンゲンの5着。JRA・GⅠは24年スプリンターズS(ルガル)以来で、通算5勝目。JRA重賞はフェアリーS(エリカエクスプレス)以来で今年2勝目、通算36勝目。

◆牡馬の勝利 22年(タイトルホルダー)以降、4年連続60回目。

◆4歳馬の勝利 23年(イクイノックス)以来、2年ぶり37回目。

◆単勝7番人気馬の勝利 18年(ミッキーロケット)以来で、7年ぶり2回目。

◆馬番⑫の勝利 24年(ブローザホーン)以来で、2年連続4回目。

◆関西馬の勝利 24年に続き、2年連続で48回目。通算では関西馬48回、関東馬18回。

◆逃げ切り 08年(エイシンデピュティ)以来で、17年ぶり9回目。

★入場・売り上げ

宝塚記念の入場人員は4万8904人で前年比88・1%。売り上げは262億5772万7800円で同106・7%だった。

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