人里離れた森で生活する5人家族、子ども「保護」で裁判所が介入 イタリア

ネイサン・トレバリオンさんとキャサリン・バーミンガムさんと子どもたち(画像の一部を加工しています)/Courtesy Catherine Birmingham

(CNN) イタリア中部の人里離れた森の中で、5人家族が送電網に頼らない生活を送っていたが、裁判所が介入し、その暮らしが行き詰まっている。

イタリアの森で馬やロバ、ニワトリとともに暮らしている「牧歌的」を自称するこの家族に対し、裁判所は子どもたちの保護を命じ、教会が運営する施設に移すよう指示した。アブルッツォ州の自宅から子どもたちを引き離すため、警察が派遣された。母親は同じ施設に滞在しているものの、両親の子どもたちへの接触は制限されているという。家族の代理人である弁護士が明らかにした。

「森の子どもたち」として知られるこの子どもたちの行く末は、イタリア国内の大きな関心を集め、家族を再び一緒にするよう求めるオンライン署名には何万人もが参加した。

両親は、英国出身の元プロ料理人ネイサン・トレバリオンさん(51)と、オーストラリア出身のライフコーチで元乗馬トレーナーのキャサリン・バーミンガムさん(45)。裁判所が出した命令書には、この2人が8歳と6歳の双子の親と記されている。

命令書は「建物が居住可能と認定されていないため、家族は住宅難に陥っている」「トレバリオン一家は社会との交流がなく、定収入もなく、家にはトイレ設備がなく、子どもたちは学校に通っていない」と指摘。そのうえで、社会生活を送る権利を侵害するリスクを鑑み、子どもの心身の完全性に対する権利の深刻かつ有害な侵害を考慮して、両親を親権から除外すべきだとしている。

家族の弁護士は、一家は暖房に暖炉を使い、照明や充電には太陽光パネルを使っていると説明。マイクロプラスチックの混入を避け、費用を抑えるために水道を廃止し、代わりに敷地内の井戸の水を使っているという。屋内トイレはなく、屋外のコンポストトイレを使っている。

トレバリオンさんとバーミンガムさんと子どもたち(画像の一部を加工しています)/Courtesy Catherine Birmingham
ウェブサイトに掲載されている住宅の一部の写真/Courtesy Catherine Birmingham

この家族の生活に注目が集まるきっかけとなったのは、2024年9月に森で採ったキノコを食べて家族全員が中毒で入院したことだった。その後、家族のもとには社会福祉当局や警察が訪れたが、子どもに定期的な医療ケアを受けさせることや学校に通わせることなどの勧告に従わなかったという。弁護士は、今回の判断について、家族が控訴する方針だと明らかにした。

バーミンガムさんのウェブサイトによると、ライフコーチングや「エネルギーリーディング」の事業を営んでおり、サイトには動物や子どもたちの写真が数多く掲載されている。裁判所は、これらの写真について、子どものプライバシーを侵害しており、社会福祉当局の調査開始後、通常の生活を装うために投稿されたと指摘した。

イタリアのメローニ首相とサルビーニ副首相はいずれも、今回の決定を批判している。メローニ氏は子どもを引き離したことは「憂慮すべき事態」だとし、ノルディオ法相と連絡を取った。メローニ氏の報道官が明らかにした。

トレバリオンさんとバーミンガムさんと子どもたち(画像の一部を加工しています)/Courtesy Catherine Birmingham

この家族は21年に家を購入した。当時バーミンガムさんはウェブサイトに「永遠の理想の家を見つけた」などと投稿していた。

近隣のパルモリ市のマシュッリ市長も、子どもたちの引き離しに懸念を示した。「私自身も父親なので、深く衝撃を受けた」と語り、家族が水道の再設置や、学校と協力して子どもの学習状況を毎週確認するなど一定の条件を受け入れれば、状況は改善できるはずだと述べた。

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