トランプ政権の米国は「地代を取り立てる地主」-シンガポール国防相
米国は「道徳的な正しさ」を象徴する国から「地代を取り立てる地主」のような存在に変わったというのがアジアの見方だ。16日に閉幕したミュンヘン安全保障会議に参加したシンガポールのウン・エンヘン(黄永宏)国防相がこう語った。
ウン国防相はドイツで開かれた同会議の討論会で、第2次世界大戦後の長きにわたり受け入れられてきた前提が根本的に変化したと指摘。
その一例として、60年余り前のケネディ大統領の就任演説以来、米国のイメージは、植民地支配などの専制を別の形の専制に置き換えることを許さない国というものだったが、今では「解放者から、大きな混乱を引き起こす者、そして地代を取り立てる地主へと変化した」と述べた。シンガポール政府のウェブサイトに同相の発言が掲載された。
ウクライナでロシアが続けている戦争の今後について、トランプ米大統領がロシアのプーチン大統領と直接交渉する方針を打ち出し、他の北大西洋条約機構(NATO)加盟国を驚かせた後のコメントだった。
ミュンヘンでの会議に集まった多くの政府高官は、トランプ氏がウクライナ支援を減らすことで、NATOが陣営の東部国境を守るスタンスをプーチン氏が試すことにつながるのではないかと懸念している。
ウォルツ米大統領補佐官(国家安全保障担当)は、ロシアの侵攻を受けたウクライナを支援してきた米国は、ウクライナから「見返り」を受けるに値するとの考えを示し、ウクライナのゼレンスキー大統領はトランプ政権が提示した鉱物権益を巡る提案を受け入れるのが「非常に賢明」だと語った。
ゼレンスキー氏は投資と十分な保護が提供されていないとし、戦争で疲弊した自国の重要鉱物へのアクセスを米国に認めるというトランプ政権の草案を拒んだ。
シンガポールは他の東南アジアの多く国々と同様、複雑化する地政学情勢の中で中道路線を模索し、安全保障上の主要パートナーである米国と、投資元であり最大の貿易相手国でもある中国との関係でバランスを取ることに腐心している。
米国はバイデン前政権下では南シナ海などでの中国の攻撃的な姿勢に対抗するため、アジアにおける安全保障体制のネットワーク構築に取り組んできた。また、中国が台湾を統治下に置くため必要であれば武力行使も辞さないと主張していることも、安全保障上の根強い懸念となっている。
原題:Singapore Says Asia Sees US as ‘Landlord Seeking Rent’ (1) (抜粋)