「メガ干ばつ」が世界中で発生、気候変動で長期化も-研究論文
- メガ干ばつ、過去40年間で南極大陸を除く全ての大陸を襲っていた
深刻な干ばつがロサンゼルスの山火事を助長している。しかし、科学誌「サイエンス」に23日掲載された新しい研究論文で、気候変動により世界中で壊滅的な数年にわたる「メガ干ばつ」がさらに悪化するという警告が発せられている。
干ばつは相対的なもので、例えば雨の多いシアトルでの干ばつは、乾燥した気候のアリゾナ州フェニックスでは、異常なほど雨が多い時期と見なされ得る。しかし、干ばつは生態系を混乱させ、時には危険な形で住民らを脅かす。
スイス連邦森林・氷雪・景観研究所(WSL)の上級研究員で論文を執筆したディルク・ニコラウス・カルガー氏は、「それが今、カリフォルニアで起きていることだ」と指摘。「長い時間をかけて植生が乾燥し、火災の頻度が増え、家屋が焼失している。他の地域では農業に支障が出るだろう」と述べた。
カリフォルニア州の山火事は、降雨がほとんどない状態が8カ月続いた後に発生。気候変動により米西部では降水量が不安定になっているが、この論文は何年も続く干ばつについてグローバルな視点で考察。
研究のきっかけは、2010年に始まった干ばつに見舞われているチリに、カルガー氏と共同執筆者のオーストリア科学技術研究所教授フランチェスカ・ペリッチオッティ氏が滞在したことだった。
ペリッチオッティ氏は「生態系から農業まで、その影響は壊滅的だった」と説明。この干ばつにより、断続的な水の配給制限が実施され、首都サンティアゴなどでチリ経済の重要な一部である鉱業にも混乱が生じた。
21、22両年には、ロンドンに拠点を置くチリの多国籍企業アントファガスタが、干ばつにより生産量を削減せざるを得なくなったと発表。グーグルは昨年9月、水不足を理由に大規模なデータセンター建設計画を再考すると明らかにした。
同様のメガ干ばつに見舞われた可能性のある他の地域を特定するため、降水量と植生に関するデータと、干ばつがどの程度の地域に影響を与えたかを把握するために空間データも調べられた。
その結果、過去40年間でメガ干ばつは南極大陸を除く全ての大陸を襲っていたことが判明。モンゴルとオーストラリア南東部、米西部などで深刻な複数年にわたる干ばつが最も頻繁に発生していた。
研究対象の中で最も長期にわたった干ばつは、コンゴ東部の盆地で起き、10年間続いた。その範囲は149万4226平方キロメートルと、テキサス州の面積の約2倍に及んだ。
また、気候変動が長期干ばつに見舞われる地域の増加を促していることも分かった。メガ干ばつの拡大につれ、その被害も広がる。世界的に見ると、洪水よりも干ばつの方が5倍以上の人口を移動させる要因となっている。
世界銀行の分析によると、干ばつは低・中所得国において国内総生産(GDP)の0.5%余りを減少させている。地球温暖化が進むにつれ、この問題はさらに悪化する公算が大きい。
原題:Damaging Megadroughts Are Spreading Around the World (Correct) (抜粋)