ソシエダ番も「悪夢のような存在」「頭痛の種」と絶賛…久保建英との対峙に燃えた長崎22歳MF笠柳翼が豪快カットイン弾「仕掛けなかったらもったいないなと」

[7.22 国際親善試合 長崎 1-0 ソシエダ ピースタ]

 久保建英よりも2歳年下——。V・ファーレン長崎が誇る22歳の若きドリブラーがソシエダ相手に大きな爪痕を残した。後半19分からの途中出場で、同34分に唯一の得点を記録したMF笠柳翼は試合後、「たくさんの注目がある中で、良い結果が出せたのは良かった」と微笑んだ。

 託されたポジションは3-4-2-1の左ウイングバックで、マッチアップした相手は後半開始から投入された試合の主役・久保建英。今季は先発こそ3試合にとどまっていた笠柳だったが、直近3試合で2アシストと調子を上げていたなか、これ以上なくモチベーションが高まる舞台が整っていた。 「ウイングバックって言われた途端に熱いなと。マッチアップの相手も決まっていたし、対戦できて良かった」。久保の突破に対して守備に追われた場面では「もう強いし、速いなと。違いを見せられたし、そこがこの基準なんだなと思った」と“世界基準”を肌で感じたというが、どこか楽しげにプレーしている姿が印象的だった。  そして久保が後半27分に交代した後は、見事に主役の座を奪った。笠柳の持ち味は幼少期から磨き上げてきたドリブル。この試合で見せるべきことも明白だった。 「ここで仕掛けなかったらもったいないなと。いい経験ができるし、仕掛けるほうがいいのかなと思って入った。いい意味でリラックスして入れたし、公式戦じゃない独特の雰囲気もあって、僕としてもそこが少しやりやすかったかなというのがありますね」

 その言葉どおり、0-0での投入直後から積極的な仕掛けで相手を押し込み、対面のDFアルバロ・オドリオソラに対して優位に立った笠柳。そして運命の後半34分、大外でボールを受けると、迷わずに相手の守備網を横断していくカットインを選択した。

「試合前から今日の目標として、最近は縦に仕掛けることが多かったけど、ゴールに仕掛けていくことを意識していた。世界の選手は横断できるヤツが多いんで、それを見習ってという感じで」  近い相手と着実に駆け引きしながらゴール正面まで切り込むと、ペナルティエリア外から右足一閃。ミドルシュートは相手DFに当たる形となったが、軌道を変えたボールがゴールマウスに吸い込まれ、唯一の1点が決まった。

 試合後、来日してソシエダ日本ツアーを伝えているスペインメディアでは「(右SBの)オドリオソラにとって笠柳翼は悪夢のような存在だった」(ノティシアス・デ・ギプスコア)、「後半に入った笠柳はプレーした30分間、頭痛の種だった」(エル・ディアリオ・バスコ)との文字が踊るなど、絶大なインパクトを残した笠柳。2022年に前橋育英高から長崎に加入しプロ4年目、その名を大きく知らしめた。

 もっとも報道陣の取材に応じた笠柳は、ソシエダ相手に得点を決めたという喜びに浸るよりも、この日の成功に至った要因を自らの教訓にしようとしている様子だった。 「まず単純に回数を増やすことですね。今日もいい回数チャレンジできていたし、一見リスクを負って仕掛けるので勝たないといけないというのはあるけど、いい攻撃をするにはチャンスの数を増やすこと、ドリブルの回数を増やすことなのでそれはブレずにやっていきたいと思います」

 ラ・リーガ通算約100試合の実績を持ち、名門レアル・マドリーにも4シーズン在籍したDFアルバロ・オドリオソラを苦しめたドリブルについても「後半のオープンな展開だったので前半だったら違うと思う」と冷静に総括。ここから始まるJ1昇格争いに向け、浮かれた様子を見せなかった。

「何も変わらないですし、ゴール・アシストを積み重ねられればなと思います。個人としてもすごくいい状態で、アシストも増えてきて、今日もゴールを取ることができたので、そういうところでこれからもたくさん駆け引きしていければいいかなと思います」。勝負の舞台はあくまでも公式戦。自らの力で次なる栄誉を掴み取るつもりだ。 (取材・文 竹内達也)●2025シーズンJリーグ特集●海外組ガイド●ラ・リーガ2025-26特集▶お笑いコンビ・ヤーレンズのサッカー番組がスタート!

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