2年で99.7%削減のAI計算コスト…労働者が知らない「前例のない淘汰」が始まるワケ(ビジネス+IT)
ChatGPTがわずか17カ月で8億ユーザーを獲得したが、それを実現できたのはAI推論コストが2年間で99.7%も削減されたからだ。生成AIの普及速度は人類史上例を見ない勢いで加速している。著名ベンチャーキャピタリストのメリー・ミーカー氏が「前例のない」という表現を51ページにわたって使用したレポートからは、AIが単なる技術革新を超えて「社会構造そのもの」を変革していることが読み取れる。同レポートのうち、4つの要点のうち、特に注目すべきは労働市場への影響だ。この大転換期において、我々はどのような準備が必要なのか。 【さらに詳細な図はこちら】
生成AIの登場により、社会・経済の変化速度がこれまでにないほど加速している。 この現象を如実に示すのが、著名ベンチャーキャピタリストのメリー・ミーカー氏が公開した340ページに及ぶレポート「Trends - Artificial Intelligence」だ。かつて「インターネットの女王」と呼ばれた同氏が2019年以来となる大規模な分析を発表し、AI革命の「前例のない」速度を数々のデータで立証している。 最も象徴的な数字は、ChatGPTの成長速度だろう。わずか17カ月で8億ユーザーを獲得したこの実績は、過去のどのテクノロジーも達成できなかった記録となった。比較すると、1億ユーザー到達までの期間でも、ChatGPTは2カ月という驚異的な速さを記録。これに対してInstagramは2年半、TikTokでも9カ月、Facebookは4年半を要している。 開発者エコシステムの拡大も劇的だ。NVIDIAの事例では、2009年にCUDA(NVIDIAが開発した並列コンピューティングプラットフォームおよびプログラミングモデル)の開発者は6万人だったのが、2025年には600万人へと100倍に増加。さらに広義のAI開発者を含めると2800万人に達するという。 グーグルのエコシステムでも同様の傾向が見られ、2024年5月から2025年5月までの1年間で、Geminiを活用する開発者数は5倍以上の700万人に急増した。 収益面でも前例のない成長が続く。OpenAIは2025年6月時点で年間経常収益100億ドルを達成。ChatGPT公開からわずか2年半での偉業となる。さらに同社は2029年までに、収益を1250億ドルまで拡大する意欲を見せる。 ミーカー氏のレポートで「unprecedented(前例のない)」という言葉が51ページにわたって使用されているのは、単なる誇張ではない。AIの開発・採用・支出・利用のあらゆる側面で、人類がこれまで経験したことのない速度での変化が進行中なのだ。