【毎日書評】人間関係は聞き方で変わる。7つの「アクティブリスニング」テクニック
人間関係が苦手な人は、どうすれば人とのつながりを増やし、ウェルビーイング(幸福感)を向上させられるのか? 『脳科学が教える 一瞬で心をつかむ技術』(細田千尋 著、PHP研究所)の著者によれば、そのヒントは脳科学にあるようです。
私たちは皆、誰かとつながりを持ち、認められたいと願っています。それは、脳科学の観点からも明らかです。
たとえば、ある実験で被験者が自分のことを話しているとき、脳内の特定の領域、とくに側坐核(そくざかく)や腹側被蓋野(ふくそくひがいや)が活性化し、ドーパミンという神経伝達物質が放出されることがわかりました。
ドーパミンは快楽物質として知られ、美味しい食事や趣味を楽しんでいるとき、目標達成時、褒められたときなど、私たちが快感を得る瞬間に分泌される物質です。
つまり、人は自分のことを話すとき、それが会話であれソーシャルメディアであれ、お金や食べ物を手にしたときと同様の喜びを感じているのです。(「はじめに」より)
なぜなら、自分に関心を持ち、受け入れてもらうことで心に安堵感や喜びが生まれるのは人間の本能だから。そこで本書では、そういった人間の本質を踏まえたうえで、「一瞬で相手の心をつかむための技術」を脳科学の視点から探っているのです。
人を魅了する人は、「自分が何を得られるか」ではなく、「相手に何を与えられるか」という視点に立てる人です。すなわち、「私」という視点を超え、「あなた」に焦点を当てる思考法が求められます。
(中略)最初は難しく感じるかもしれませんが、これは誰でも身につけることができるスキルです。そして、それを身につけることで、仕事や人生において成功し、豊かな人間関係を築くことができるのです。(「はじめに」より)
きょうは本書の第2章「相手の話を聞き、自分の望む方向へ導く」のなかから、「アクティブリスニング7つのルール」をクローズアップしてみたいと思います。
ラポール(相互の信頼関係)の構築を望むなら、相手に関心を持っていることを明確に示す必要があります。そこで著者がおすすめするのが「アクティブリスニング」。
アクティブリスニングとは、相手が話す言葉を単に聞くだけでなく、相手の話す言葉の背後にある意味と意図を積極的に理解することです。そのためには、コミュニケーションのプロセスに注意を払い、より集中して傾聴する必要があります。(47ページより)
会話の相手と前向きに関わり続けるためのコミュニケーションにおいて、アクティブリスニングには重要な意味があるそう。
また、相手に自分の意見を聞いてもらえ、大切にされていると感じさせることもできるといいます。このスキルは、職場、家族、社交の場など、あらゆるシチュエーションで会話を成功させるための基盤であり、7種のテクニックがあるのだとか。(46ページより)
7つのアクティブリスニング・テクニック
1:話し手に全神経を集中する
アクティブリスニングでは、話し手に全神経を集中し、参加する必要があるそう。「話し手に集中する」とは、すべての感覚(資格、聴覚など)を使って耳を傾けることを意味するわけです。
2:ノンバーバルな合図に注意を払う
著者によれば、人とのコミュニケーションの65%がノンバーバル(非言語)だといわれているようです。それらの“非言語的な合図”に注意を払えば、その人や、その人が伝えようとしていることについて多くを知ることができるというのです。
なぜなら、相手のボディランゲージや態度には、“その会話がうまくいっているかどうか”が現れるものだから。たとえば、相手が後ろにもたれていたり、胸の前で腕を組んでいたり、唇をきつく結んでいたりしたら、会話がうまくいっていない可能性が高いようです。(48ページより)
3:アイコンタクトを心がける
アクティブリスニングを行う際には、アイコンタクトをとることがとくに重要。自分がその場にいて、話を聞いていることを相手に伝えることができるからです。また、周囲に気をとられていないことをも示しているそうです。
4:オープンクエスチョンを送る
多くの場合、「はい」と「いいえ」でしか答えない“クローズドクエスチョン”をすると、行き止まりの答えが返ってきてしまいがち。しかしそれでは、アクティブリスニング中に会話の流れを妨げることになってしまいます。
そこでオープンクエスチョンをして、会話と相手に興味を持っていることを示すべき。アクティブリスニング時に使用できるオープンクエスチョンには、以下のようなものがあるそうです。
その点について、もう少し詳しく教えていただけますか?
それについてどう思いましたか?
今後、どのような道が最善だと思いますか?
どのような違った対応ができたと思いますか?
(51ページより)
オープンクエスチョンの鍵は、相手に対する好奇心の枠組みを持つこと。
5:聞いたことを反映させる
相手が話し終えたら、聞いたことを伝えるのも大切。その方法のひとつが、いい換えること。たとえば、相手が過激なことを話していたとしても、「とても大変な状況でフラストレーションがたまってしまいますね」といい換えられるわけです。
6:応答するのではなく、理解するために聞く
相手に気持ちよく話してもらうために、忍耐力は重要なアクティブリスニングテクニック。相手に対し、考えていることをことばにする時間を与えることもできます。
7:判断と助言を差し控える
中立的で偏見のない回答をすれば、相手は自分の考えを安心して共有することが可能。そうすることで、恥をかかされたり、批判されたり、否定的に受け取られたりすることがないという気持ちを得られるのです。(49ページより)
コミュニケーションを円滑にするための思考法を、専門的な立場から、わかりやすく解説した一冊。人間関係への不安や悩みを抱える方は、手にとってみてはいかがでしょうか?
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Source: PHP研究所