「痛み止めを飲んどけば大丈夫」は危険すぎる…すぐに救急車を呼ぶべき
9:17 配信
命に関わる危険な頭痛はどのようなものなのか。産業医・心療内科医の吉田英司さんは「頭痛の中には注意が必要なものも存在する。肩こりや気圧の変化で起こる頭痛は問題ないが、別の病気が原因となり、その症状の一つとして頭痛が現れるタイプのものは命に関わる場合があり、すぐに受診が必要だ」という――。 ※本稿は、吉田英司『一生健康に働くための心とカラダの守り方』(かんき出版)の一部を再編集したものです。■人間にとって不自然な現代の生活環境 現生人類のホモ・サピエンスは数十万年前から存在しています。しかしその当時から、私たちの筋肉や骨などの身体の構造や、自律神経の働きは、今もほとんど変わっていません。 数十万年前の人類は、狩猟や採集をしながら生活していました。朝は日が昇ると目を覚まし、夜になると眠ります。日中は食料を確保するために動き回り、やがて夕暮れを迎える生活を送っていました。 そのような生活をしていた彼らと、現代を生きる私たちの身体や脳の働きは、実はそれほど大きく変わっていません。環境に適応し、それが遺伝子レベルで変化するには、長い長い時間が必要であるためです。 しかし、文明の発展スピードは遺伝子の変化とは対照的です。特にこの数百年の文明の進化は、それまでの数万年の変化をはるかに上回る速さで進んできました。 その結果、私たちの身体や脳は数十万年前と同じままであるのに、生活環境だけが大きく変わってしまった世界に我々は生きているのです。例えば、1日のうちの7〜8時間も同じ姿勢で椅子に座り続ける生活は、昔の人類にはなかったものです。 そのため、私たちの身体は本来、そのような環境に対応する身体にはなっていないわけです。 また、昔の人類にとって、緊張状態はほとんどの場合、生死をかけた戦いや危険な状況で起こるものでした。そのため、身体は「戦うか逃げるか」という短時間のストレス(数分から数十分)に対応できるように作られていました。■古代と現代のスタイルの最適なバランス しかし、現代ではストレスが何カ月も続くことが珍しくなく、私たちの身体はそのような慢性的なストレスに適応できるようにはなっていません。 こうした現代の環境と合わない身体や脳神経の働きが、頭痛、肩こり、腰痛、自律神経の乱れなどの症状を引き起こしているのです。 つまり、自分の身体と心をケアするためには、今の働き方と数十万年前の人類の生活を比べて考えることが大切です。人間が本来持っている筋肉や骨、自律神経にとって不自然な状態を、どのように改善するか、あるいはその影響を最小限に抑えるかを意識する必要があります。
座っている時間やストレスを感じている時間と同様に、日光を浴びている時間、1日の多くをオフィスなど閉ざされた空間で過ごす、仕事で求められる細かい作業、就寝時間の遅さなど、数十万年前とは大きく異なる環境が数多くあります。
■現代ならではの症状や病気はたくさんある 生活の中には、数十万年前のスタイルに近づけるべき部分と、現代の環境に合わせて工夫すべき部分があります。そのバランスを考えることが、健やかに過ごすための重要な考え方の軸です。 身体は数十万年前のままでも、現代の生活では昔に比べて身体の使い方やストレスのかかり方が大きく異なり、そのために生じている症状や病気はたくさんあります。■たいていの頭痛は数日で気にならなくなるが… たとえば、身近な「頭痛」もその症状のひとつです。 頭痛のほとんどは一般的な頭痛ですが、緊急を要するものもあります。 市販のロキソニンSと、病院で処方されるロキソニンが同じものだとご存じでしょうか。ロキソニン以外にもバファリンなど、頭痛薬や鎮痛剤を薬局で購入したことがある人も多いと思います。 頭痛にはさまざまな種類があり、痛みの感じ方や表現も異なります。例えば、頭が締めつけられるような痛み、ズキズキする痛み、ドクンドクンと脈打つような痛み、頭が割れるような激しい痛みなどがあります。 また、頭痛の種類もいくつかに分類され、それぞれ原因や対処法が異なります。片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などは名前を聞いたことがある人も多いでしょう。 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛は、原因が明確ではない頭痛であり、一次性頭痛と呼ばれます。頭痛の8〜9割は一次性頭痛が占めています。このうち片頭痛、緊張型頭痛はストレスが原因の一つと言われています。 そのため、頭痛があると、肩こりや気圧の変化などとともに、原因となるストレスがないかなどと考えることがあるでしょう。 また家族や友人にも「お酒を飲みすぎたんじゃない?」「何か悩んでいるの?」などと聞かれたりもします。そして「いやぁ、最近仕事が忙しくってさ、睡眠不足なんだよ」「トラブルが続いてお客さんに怒られててさ」などと思い当たることを話し、マッサージに行ったり、薬局で鎮痛剤を買って飲んだりして対処します。
数日すると、痛みがそれほど気にならなくなっていることも多く、次第に頭痛のことを意識しなくなってきます。
■注意が必要な頭痛 そのため、多くの人は頭痛に対する検査を受けたことがありません。 しかし、頭痛の中には注意が必要なものも存在します。 それが二次性頭痛と呼ばれるもので、別の病気が原因となり、その症状の一つとして頭痛が現れるタイプです。わかりやすい例としては、インフルエンザなどの感染症にかかった時、発熱とともに頭痛が出現することがあるでしょう。 また頭部にケガをした時も、当然、頭痛の症状が出現しますが、これも二次性頭痛の一つです。■必ず医療機関を受診すべき3つの症状 そして、二次性頭痛の中でも特に注意すべきなのが、命に関わるものです。具体的には、脳腫瘍、脳卒中、髄膜炎、高血圧性頭痛などが該当します。 それぞれ医学的に特徴的な症状がありますが、一つ一つ詳しく覚えるのは難しいものです。そこで、頭痛が起こった時に必要な対応をお伝えします。 これは他の症状にも当てはまりますが、特に頭痛に関しては守るべきルールです。----------・普段と違う痛み・3日以上痛みが継続する・徐々に痛みが悪化する---------- 頭痛の症状でこの3つが揃った時は必ず医療機関を受診しましょう。 さらに、3つのうちで極端に症状が現れるものがあれば、躊躇(ちゅうちょ)なく、すぐに救急車を呼んでください。 例えば「普段と違う痛み」が「一生で感じたことのない痛み」(医療の世界では、バットで殴られたような、などと表現されます)であったり、「徐々に痛みが悪化する」のスピードが「時間単位で痛みが増したりする」場合です。 痛みがあっても救急車を呼べることが多いですし、もし電話がつながった後に様子がおかしくなれば、固定電話でも携帯電話でもオペレーターが察知して対応してくれます。 また、意識状態の変化がある時も当然受診するべきです。 頭痛はありふれた症状だけに慣れてしまいがちです。市販薬で対応する時も、「普段と違う痛みではないか」「3日以上継続していないか」「だんだん悪化していないか」などのチェックポイントには注意して、対応のルールを忘れないようにしましょう。----------吉田 英司(よしだ・えいじ)日本医師会認定産業医・心療内科医・ベスリ代表取締役研修医修了後に、外資系経営コンサルティングファームのベイン・アンド・カンパニーに参画。その後、シャープ、ルネサス エレクトロニクス、上場外資IT企業、外資化学メーカー、東京オリンピックパラリンピック組織委員会などで産業医を歴任し、社員個人の健康支援だけでなく、全社的な健康経営や健康施策の立案と推進を行う。産業医や心療内科医として働くかたわら、日本のビジネスパーソンの可能性を最大化するために株式会社ベスリを設立し、企業の産業保健活動支援やリワークでの復職支援を行なっている。
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プレジデントオンライン
最終更新:7/29(火) 9:17