追加利下げに「ちょっと待った」、FOMCは一時停止が賢明-社説
最近のインフレデータは米連邦公開市場委員会(FOMC)に25ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)追加利下げのゴーサインを送ったと、投資家は受け止めている。しかしFOMCは「ちょっと待った」方が賢明だ。2025年は追加利下げが恐らく必要になるだろうが、今は一時停止が理にかなう。
11月の消費者物価指数(CPI)は前年同月比で2.7%上昇し、前月の2.6%上昇からペースが加速した。食品とエネルギーを除いたコアCPIの上昇率は、4カ月連続で3.3%となった。市場はこれらの数字をほぼ予想通りと受け止め、追加利下げ観測を調整する必要はないと判断した。しかしそれは間違っている。問題は最新の数値が良くないサプライズだったかどうかではなく、インフレ率が2%目標に下げる軌道を外れていないかどうかだ。
Consumer prices, % change over a year earlier
Source: BLS via FRED
現時点でそれは明白ではない。コアインフレは2022年に付けたピークの7%弱から下げているが、その進展は足踏みしており、物価はまだ連邦準備制度理事会(FRB)が目指すよりもいくらか速いペースで上昇している。向こう数カ月は両方向の圧力が予想される。FRBが重点を置くのは個人消費支出(PCE)のインフレ統計であり、CPIではないことに留意してほしい。PCE物価指数は2%目標に近づいている。それは住居費のウエートが低いからだ。そして家賃の上昇はCPIを押し上げ続ける最大の要因となっている。最近では住居費の伸びは減速しており、両物価指標の差は縮小するはずだ。
一方で米国の労働市場は依然としてタイトだ。最新のデータによる失業率は歴史的標準から見れば低く、実質時給は前年同月から1.3%上昇した。旅行コストは高止まりし、自動車価格も依然高い。住宅とエネルギーを除いたサービス価格は11月も0.3%上昇し、目標達成に必要なペースを上回っている。これらの数字は概して、現行政策が不当に抑制的だと示唆するものではない。そしてこの議題について話すのは好まれないかもしれないが、トランプ次期米大統領が大規模な関税措置や減税を提案していることはFOMCでも周知されている。いずれも物価をさらに押し上げる政策だ。
FOMCは投資家との意思疎通という任務を自ら難しくしている。「フォワードガイダンス」と「データ次第」の両方を好むからだ。前者は安定した政策期待の重要性を裏付ける。つまり中央銀行がその考えを説明することによって、金利の変化が十分事前に織り込まれ、市場にショックを与えないようにすることだ。これと整合するのがFOMCが定期的に発表するメンバー「予測」(予想ではないとFOMCは主張)であり、向こう数カ月にあるべき金利水準についてメンバーの認識が明らかにされる。これとは対照的にデータ次第というのは、不確実性を強調するものだ。将来の金利はインフレ見通しに左右され、インフレ見通しは変動する。変わらないのは2%という目標だけだ。
FOMCの重点は時折シフトするが、総じて両方の良いところを最大限生かそうとする。金利見通しを安定させると同時に、物価に関して変化する情報に注意を払うという具合だ。しかしこの2つが相反する場合、どちらかを選ばなくてはならない。今週のFOMCは「データが決定する」を優先することを投資家に思い出させる好機だ。
原題:Federal Reserve Should Wait Before Cutting Again: Editorial(抜粋)