ネット系と対面証券が「接近」、連携強化へ本腰-機能補完で商機狙う
ネット系証券と銀行系の対面証券が互いに連携を強化しようとしている。少額投資非課税制度(NISA)拡充などで若年層を中心に株式投資を始める人が増える中、利用者へのアクセスやコンサルティング機能の拡充につなげる狙いだ。
ネット系と対面の「接近」は、12日までに相次いで開催された証券各社の2024年10-12月期(第3四半期)決算会見でも注目ポイントの一つとなった。
ネット系の三菱UFJeスマート証券(旧auカブコム証券)をグループ内に持つ三菱UFJ証券ホールディングス(HD)の山本慎二郎常務は3日、第3四半期の決算の会見で、「今やネット金融サービスは富裕層からマスまでどんな方でも利用する時代になっている」と述べた。
三菱UFJフィナンシャル・グループは最近、子銀行を通じてKDDIから保有株を取得し、eスマート証を完全子会社化したばかりだ。山本常務は顧客接点やサービスの拡充に向け、eスマート証などとのさらなる連携に意欲を示した。
個人投資家の投資意欲が旺盛となる中、ネット証が手数料無料化やNISA拡充を契機に口座数を伸ばす一方、銀行系を含む対面証券は富裕層向けの資産管理(ウェルス・マネジメント)業務を強化している。双方は互いに不足する機能を補完してサービス拡充を図りたい考えだ。
NISAで投資の流れ続く
金融庁が昨年12月にまとめた調査結果によると、同9月末のNISAの口座数は6月末比3.4%増の約2508万口座となった。累計の買い付け額は8.1%増の約49兆円。年代別口座数では20代が4.7%増と最も高い伸びを示した。楽天証券によると同社で24年中に新規を口座開設した人の約5割が30代以下だった。
楽天証の楠雄治社長は第3四半期の決算会見で、みずほフィナンシャルグループとは「補完関係が強い」とし、リテール顧客に「新しい商品やサービスなど何か提供できるものがあれば、色々と話し合いながらやっていく」と常日頃から協議していると明かした。
楽天グループは証券・カードなどの金融サービスを中心にみずほFGと資本・業務の両面で提携関係を強めている。
三菱UFJ証HDの山本常務はグループ内の別の資産運用会社であるウェルスナビも含めネットを入り口に投資を始めた顧客には「資産形成が進めば対面のアドバイスやポートフォリオ営業」を利用するニーズがあるとの認識を示した。ウェルスナビは三菱UFJ銀行の子会社。
ただ、対面証券側にとってネット系との提携効果がどれだけあるかは未知数だ。みずほ証券の浅井覚CFO(最高財務責任者)は楽天証との提携について、「残念ながら今の時点で当社の収支に大きな影響を与えるようなものには至っていない」と述べた。
一方で独自の成長戦略を描くネット系証券もある。NTTドコモの連結子会社となり、昨年1月から同社との連携を始めたマネックス証券の清明祐子社長は12日、社長を兼任するマネックスグループの決算会見で、ドコモは生活基盤に根差し、非常に多くの携帯利用者がいるとした上で、この中の投資未経験者に「資産形成を始めていただきたい」と話し、連携を強化する方針を示した。
清明社長は提携前と比べて直近の新規口座開設はドコモ効果で大幅に伸びていると説明。マネックス証はdポイントやdカードなどを利用した投資や積み立てなどでドコモとの協業を進めている。