奇妙な生物の化石が中国で続々出土、複雑な進化は想定より数百万年早かった
中国雲南省の化石遺跡で見つかった、コップのような形状をしたクラゲの仲間の化石/Gaorong Li via CNN Newsource
(CNN) 小さな「腕」を持つコップ形のクラゲの仲間。ソーセージのようにずんぐりした体を持つ脚のない生物。平らな円盤型の器官で海底に体を固定する細長いミミズのような生物――。そんなユニークな生物の化石が中国南西部の雲南省で出土した。
出土した化石は驚くほど保存状態が良好で、6億3500万年~5億4200万年前のエディアカラ紀を垣間見(かいまみ)せている。今回の発見は、恐らく全ての脊椎(せきつい)動物の祖先だったと思われるこうした複雑な生物が、これまでの推定より何百万年も前から存在していたことを示唆している。
エディアカラ紀の生物はこれまでに複数種が確認されていたものの、複雑な生物の進化は長い間、生物の多様性と複雑性が爆発的に増大した後のカンブリア紀(5億4200万年~4億8800万年前)に関係すると思われていた。
カンブリア紀には、あらゆる種類の奇妙な構造を持つ生物が出現した。絶滅した種もあれば、現代の脊索(せきさく)動物や甲殻類、軟体動物などに進化した種もある。カンブリア紀の生物の化石があまりに多種多様だったことから、エディアカラ紀にはまだ複雑な生物は存在しなかったという説が有力だった。
しかし、中国で今回発見された化石はそれを覆した。こうした骨のない生物は積み重なった岩石の間に埋まって瞬時に押しつぶされ、二次元の有機組織の痕跡を残した。体全体が保全され、通常は化石化の過程で失われる摂食器官や繊細な四肢、さらには内臓の痕跡までがはっきりと残った。
エディアカラ紀後期の生物について、これほどの詳細が分かる化石が見つかったのは初めてだった。国際研究チームによれば、これは複雑な生物の出現がおよそ5億5400万年~5億3900万年前だったことを示唆している。この年代は、カンブリア紀より400万年以上も前だった。今回の研究結果は2日付の科学誌サイエンスに発表された。
論文を発表した英オックスフォード大学のロス・アンダーソン准教授は「カンブリア紀のような生物の一部がエディアカラ紀に出現していたことが分かり始めた」と解説する。
化石の宝庫
化石は雲南省にある江川生物群化石遺跡で見つかった。遺跡の面積はわずか48平方メートルほど。中国と英国の国際研究チームは、2022年から25年にかけて複数回の調査を行い、約700点の化石を発掘した。そのうち約200点は生物の化石で、多くは体長2.5センチにも満たなかった。
コップ形の標本6体は、カナダのニューファンドランド島で出土した5億6500万年前のエディアカラ紀の生物に似ていた。体を固定するための円盤型の器官を持つミミズのような生物(56点の化石が出土)は、ほかのどの古代生物とも異なっていた。体節と触手を持つカンブリア紀の海洋生物に似た生物も見つかった。これまではカンブリア紀でしか見つかっていない生物だった。
生物の進化に詳しいハーバード大学のジョー・ウルフ氏(今回の研究には参加していない)は、「エディアカラ紀とカンブリア紀の生物が一カ所で混在しているのはかなり特異な状況だ」と評し、「これでエディアカラ紀とカンブリア紀の生物の境界が曖昧(あいまい)になった」と解説する。
ソーセージ形の生物の体内に残った消化管がはっきり見える化石も、エディアカラ紀としては極めて珍しいとウルフ氏は言い添えた。
今回出土した化石の多くは体が左右対称だった。これは現代の生物のほとんどが持っている特徴で、カンブリア紀以前に生物が進化していたことを裏付ける。
「まさに、これまでの我々にはなかった左右対称の化石の宝庫」とアンダーソン氏は形容する。
恐らく最も興味深いのは、脊椎動物やヒトデ、ウニといった後口動物の仲間と思われる化石だった。これまで知られていた最古の後口動物の化石はカンブリア紀のものだったが、今回の発見で、後口動物の出現時期はエディアカラ紀までさかのぼることになる。
アンダーソン氏は「それでもカンブリア紀が極めて独特だという考えに変わりはない」としながらも、今回の化石の発見は、カンブリア紀の爆発的な進化がそれよりも前から始まっていて、「恐らくエディアカラ紀までさかのぼる」という説の裏付けになると指摘した。
今後は出土した化石を詳しく調べるとともに、化石が極めて良好な状態で保全されていた江川生物群の条件の解明を目指す。こうした生物の生態についてはまだ疑問が多いとアンダーソン氏は話し、今後の研究に期待を寄せている。