ガザで飢饉発生、国際機関が初の宣言…「人為的」指摘し停戦要求

21日、ガザ南部ハンユニスで、支援物資の配給を待つパレスチナの人々=ロイター

 【エルサレム=福島利之】国連機関などが参加する食料危機の深刻度を判断する枠組み「総合的食料安全保障レベル分類」(IPC)は22日、パレスチナ自治区ガザ北部のガザ市で 飢饉(ききん) が発生しているとの報告書を発表した。イスラエルとイスラム主義組織ハマスの戦闘が続くガザを巡り、国際機関が飢饉を宣言するのは初めて。IPCは「飢饉は人為的」と指摘し、停戦を求めた。

 IPCはガザ市について、壊滅的な飢饉の段階「フェーズ5」と判断した。ガザ全体では50万人以上が「フェーズ5」、107万人が危機的な「フェーズ4」と分類した。

 ガザの飢饉は「急速に拡大している」と指摘し、9月末までに中部ディール・アルバラハや南部ハンユニスにも及ぶと予測した。その上で、ガザ全域に支援物資を届けるためには「停戦が前提条件だ」と訴えた。

 ガザ住民は2023年10月に戦闘が始まって以来、食料を十分に得られていない。イスラエルが今年3月上旬にガザへの物資搬入を全面的に阻止したことで飢餓は深刻化した。5月末から搬入が本格的に再開されたが、物資は十分に行き渡っていない。

 ガザの保健当局によると、20日現在の飢饉による死者は269人で、そのうち子供が112人を占める。イスラエルと米国が主導する「ガザ人道財団」(GHF)の配布所で食料を得ようとして殺害された住民は2018人に上る。

 イスラエル首相府は22日、「IPC報告書は全くのうそだ」と反発する声明を出した。ガザでの戦闘開始以来、200万トンの物資をガザに搬入させたとして、「イスラエルに飢餓政策は存在しない」と強調した。その上で、「ハマスが援助物資を盗み、戦争の資金としている」と主張した。

 IPCは「飢饉を終わらせるのは時間との闘いになる。即時停戦と紛争の終結が重要だ」と強調している。

  ◆総合的食料安全保障レベル分類= 国連の食糧農業機関(FAO)や世界食糧計画(WFP)のほか、国際NGOなどが参加する国際的な枠組み。食料危機の深刻度を科学的な基準に沿って1(軽度)から5(飢饉)の5段階で評価する。

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