モロッコ空軍の近代化が困難に直面、UAEがミラージュ2000
アラブ首長国連邦は米国の対イラン作戦=エピック・フューリー作戦で地域の安全保障環境が不安定化したため「ミラージュ2000-9×30機のモロッコ移転を延期した」と報じられており、モロッコはF-16C/D Block70/72×25機の取得も納入遅延に直面している。
参考:UAE delays Mirage 2000-9 transfer to Morocco
フランスから独立したモロッコとアルジェリアは政治体制の相違(立憲君主制と共和国制)、モロッコが領有権を主張する西サハラの独立を掲げたポリサリオ戦線へのアルジェリア支援、西サハラ領有承認と引き換えにパレスチナと対立関係にあるイスラエルとの国交樹立など両国関係には幾つもの火種が転がっており、アルジェリアは「モロッコが敵対的な行動を続けている」という理由で2021年8月に国交断絶を通告、両国は積極的に軍備拡張を続け、どちらが第5世代戦闘機を先に入手するのか注目されていた。
出典:Сухой Su-57
アルジェリアはロシアからSu-57を14機導入すると2019年に発表、Rostecは今年のドバイ航空ショーで2次元推力偏向排気ノズルを採用するSu-57の輸出バージョン=Su-57Eを展示し、UAC=統一航空機製造会社のヴァディム・バデハ最高経営責任者も「既に海外パートナー(恐らくアルジェリア)はSu-57を2機受領している」「この2機は既に配備され最高の性能を発揮している」と述べたが、アルジェリア北部のウム・エル・ブアギ空軍基地周辺でSu-57が飛行しているのが目撃され、アルジェリアのSu-57入手が確実視されている。
Military Africaは4日「アルジェリアは中国製のJ-10CとKJ-500の導入に向けた合意を最終調整中で、出回っている報道によれば2027年に納入が開始される見込みだ」「これが事実ならアルジェリアはアフリカで初めて両機を運用する国になる」「ロシア防衛産業は深刻な重圧に晒されている」「生産ラインはウクライナ戦争での損失補填に追われており、2025年2月に契約を締結したアルジェリア向けのSu-57E製造も遅々として進んでいない」「ロシアは2023年から2024年の間にSu-57を7機しか製造できておらず、稼働可能なSu-57の数はおよそ19〜25機だ」「中国製の戦闘機を購入することでSu-57Eの遅延リスクを軽減できる」と報じた。
出典:L.G.Images / Public domain J-10B
Military Africaの報道が事実ならアルジェリア空軍の戦闘機戦力はSu-57E×2機(10機納入待ち)、Su-35×9機(6機納入待ち)、Su-34E×14機、Su-30MKA×72機(ロシアの情報だと58機)、Su-24MK2/MRK2×42機、MiG-29C×21機、MiG-29M/M2×25機、J-10Cとなり、一方のモロッコ空軍はF-16C/D Block52+×23機(Block72へのアップグレード待ち)、F-16C/D Block70/72×25機、F-5E/F×22機、ミラージュF1C/F1E×25機で、F-35A導入、ラファールF4導入、アラブ首長国連邦が手放すミラージュ2000-9導入に関する噂もあるが、どうやらミラージュ2000-9のモロッコ移転は延期になったらしい。
アラブ首長国連邦はラファール調達と関連して「モロッコにミラージュ2000-9を譲渡したい」と表明、この計画についてフランスは決定を先延ばしにしてきたが、スペインメディアのLa Razónは2024年4月「フランスはアラブ首長国連邦が保有するミラージュ2000-9について別の計画を持っていた」「マクロン大統領は機体を買い戻してウクライナに提供することを考えていたがアラブ首長国連邦に拒否された」「最終的にフランスはモロッコへの譲渡に同意した」と報じ、モロッコのHespress Françaisも「モロッコとフランスの関係が改善したため最終的にマクロン大統領は譲歩した」と報じていた。
出典:Public Domain UAE空軍のミラージュ2000-9
管理人はMilitary Africaが2026年5月「アラブ首長国連邦は地域の不安定化が激化する中、自国の作戦遂行能力を維持する必要が生じ、ミラージュ2000-9×30機のモロッコ移転を延期した」と報じていたのを完全に見逃してしまい、Military Africaは「当初計画では2027年までにミラージュ2000-9×30機のモロッコ移転を完了する予定だったが、アラブ首長国連邦は米国の対イラン作戦=エピック・フューリー作戦の開始と同じタイミングでミラージュ2000-9の維持を決定した」「ラファールF4×80機の導入完了は早くても2031年になるため、同機をラファールF4導入前に手放すことで生じるギャップを懸念した」と報じている。
ミラージュ2000-9移転が延期されたモロッコについても「現在のモロッコ空軍はF-16C/D Block52と共に老朽化したミラージュF-1やF-5を運用しており、ブラック・シャヒーン巡航ミサイル(ストーム・シャドウのUAE向けバージョン)やMICA NGを運用可能なミラージュ2000-9の取得は、Su-57やSu-35を導入するアルジェリア空軍に対してモロッコ空軍の能力を向上させるはずだった。延期されたミラージュ2000-9のモロッコ移転に関する政治的支持は維持されているものの、移転の再開は湾岸地域の安定化とラファールF4の納入ペース次第だ」と指摘した。
出典:Armée de l’Air et de l’Espace
Africa Intelligenceは7月「モロッコ政府がF-16C/D Block70/72の納入遅延についてロッキード・マーティンに賠償を求めると表明した」と報じており、この全ての報道が事実ならモロッコ空軍はF-16C/D Block70/72導入とミラージュ2000-9導入が当初予定よりも大幅に遅れる見込みで、アルジェリアとの間の軍事バランス(対称的な作戦能力)と抑止力に影響を及ぼすかもしれない。
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※アイキャッチ画像の出典:U.S. Air Force photo by Master Sgt. Patrick OReilly