トランプ関税発動、11の質問で判断か-為替レートや「指導者の態度」
将来的なドル安誘導につながる多国間取り決め「マールアラーゴ合意」というアイデアに為替の専門家らは最近、強い関心を寄せている。米大統領経済諮問委員会(CEA)委員長に指名されたスティーブン・ミラン氏が提唱者であることが、主な理由だ。
しかし、1985年のプラザ合意の再来かもしれないという側面に注目することは、重要だが可能性の低い取り決めに目を取られ、より現実に直結する他のアイデアを見落とすことになる。それを今読めば、新たな世界秩序形成の過程で、トランプ政権が発動する関税と対ウクライナ政策が衝突しようとする状況を理解することは難しくない。
「国際貿易システム再構築のユーザーガイド」と題する論文が昨年11月に公表された。多くの部分が実際に関税に割かれており、トランプ氏の構想への同調を迫る手段として、長年の安全保障のコミットメントと組み合わせ、関税を活用すべきという次期CEA委員長の考えが反映されている。
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トランプ政権は4日、カナダとメキシコからの輸入品を対象に25%の関税を発動。貿易相手国の関税率と非関税障壁に応じて関税を課す「相互関税」を4月2日に導入するとしており、欧州連合(EU)からの輸入品への25%関税にも言及した。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ氏らとの米大統領執務室での激しい口論を受け、欧州の指導者らは難局の打開に急ぎ動いた。
ミラン氏が考える関税発動の判断基準は多岐にわたる。「自国通貨の為替相場を抑制していないか」「米国の知的財産を尊重しているか」「北大西洋条約機構(NATO)への義務を完全に履行しているか」「その国の指導者が国際舞台で米国にこれ見よがしの態度を取っていないか」など11の質問リストからそれは始まる。
貿易不均衡を理由に挙げ、ミラン氏は中国の報復力に否定的だ。米国は中国からの輸入品に対し、中国が米国製品に課すより大きな痛手を与えることが可能だ。だが同氏によれば、中国以外の国・地域について、トランプ氏は「国家安全保障と通商政策を明示的に結び付けている」に過ぎない印象だ。
米国は「報復関税を実施する国・地域への『防衛力の傘』を従来ほど拘束力のある、あるいは信頼に足る約束と捉えない可能性がある」と同氏は指摘した。
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ミラン氏の論文には、関税のコストを実際に誰が負担するかなど、他のエコノミストが根本的な誤りと指摘する内容が含まれる(為替レートの変動に伴い他の国・地域が負担するとミラン氏は言い、輸入業者は自分たちが関税に小切手を切ると言うだろうが、最後は消費者が痛みを感じるとエコノミストは主張するだろう)。
そうした誤解こそがトランプ政権下のホワイトハウスの根本的真実だ。経済・安全保障の同盟関係も共通のビジョンを結び付ける永続的手段ではなく、新たな取引の世界で使い捨て可能な資産と捉える世界観も同様だ。
米国の最も重要な経済同盟国、自由貿易パートナーのカナダとメキシコに対するトランプ政権の行動は、北米企業に深刻な影響を及ぼすと予想される。北米での今後の出来事が大西洋を挟んだ欧州との関係やウクライナと無関係と考えるのは誤りだろう。より広範な西側諸国の同盟関係が試されている。トランプ大統領のアドバイザーの少なくとも1人にとって、それが問題の核心だ。
原題:How Trump’s Ukraine and Tariff Policies Collide: Supply Lines(抜粋)