【米国市況】株は反落、貿易戦争に沈静化の兆しなく-143円台前半
15日の米株式相場は小反落。トランプ米大統領が仕掛ける関税戦争には沈静化の兆しがほとんど見られず、相場が前日まで2営業日続伸していたこともあり、過大なリスクを取りたくないとのムードが強かった。
株式 終値 前営業日比 変化率 S&P500種株価指数 5396.63 -9.34 -0.17% ダウ工業株30種平均 40368.96 -155.83 -0.38% ナスダック総合指数 16823.17 -8.31 -0.05%この日発表された米銀大手の決算は、株式トレーディングの好調および、消費者と企業がなお健全さを保っていることを示唆した。しかし、株式相場は取引終盤にかけて軟調な展開となった。
トランプ大統領は、激化する米中貿易摩擦の解決に向けた交渉を開始するには、中国側からの接触が必要だとの見解を示した。米中両国が強硬な姿勢を崩しておらず、対立に終わりが見えないことを示す動きだ。
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その中国は国内の航空会社に対し、米ボーイングの航空機の追加納入を一切受けないよう指示した。米国が中国製品に課した最大145%の関税への報復だとして、事情に詳しい関係者が明らかにした。
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チャールズ・シュワブのシニア投資ストラテジスト、ケビン・ゴードン氏はこの動きについて、「貿易戦争が米国の輸出業者にも打撃を及ぼしている事実を示す」と指摘。輸出は米国内総生産(GDP)の11%を占めると説明し、「米国が課した関税措置に伴い外需が弱まれば、米国の経済成長も押し下げられる」と述べた。
また、欧州連合(EU)は今週、米国と貿易交渉を行ったが、意見の相違を埋められず、ほとんど進展は得られなかったという。
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アメリプライズのアンソニー・サグリンビーン氏は「関税を巡る動向が最終的に経済と企業利益にどのような影響を及ぼすかについて、性急な思い込みを避けるよう投資家に助言する。中期的に起き得るさまざまな結果に備えることを勧める」と述べた。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)が毎月実施しているファンドマネジャー調査で、経済見通しに対する投資家のセンチメントが過去30年で最も悲観的になっていることが分かった。ただ、そうした見方は資産配分にまだ十分には反映されていないため、米国株の一段安につながる可能性がある。
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マイケル・ハートネット氏ら同行ストラテジストはリポートで、「ファンドマネジャーはマクロ経済に対して極端に弱気だが、市場に対してはそこまでではない」と指摘した。
国債
米国債相場は中期債を中心に上昇(利回り低下)。米国債市場への補完的レバレッジ比率(SLR)規制の緩和を検討しているという米当局者の発言が好感された。実現すれば、銀行の取引コストは低下する可能性がある。
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国債 直近値 前営業日比(bp) 変化率 米30年債利回り 4.78% -3.3 -0.69% 米10年債利回り 4.33% -4.3 -0.98% 米2年債利回り 3.84% 0.0 0.00% 米東部時間 16時52分10年債利回りは一時7ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下した。
10年債のタームプレミアムは71bpに上昇した。ニューヨーク連銀のデータによると、これは2014年9月以来の高水準。
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外為
外国為替市場ではドル指数が6営業日ぶりに上昇。この日発表されたニューヨーク連銀製造業景況指数は2カ月連続で縮小圏だったものの、市場予想以上の改善を示した。
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ブルームバーグ・ドル・スポット指数は一時、0.4%近く上昇した。
為替 直近値 前営業日比 変化率 ブルームバーグ・ドル指数 1234.32 4.26 0.35% ドル/円 ¥143.24 ¥0.18 0.13% ユーロ/ドル $1.1284 -$0.0067 -0.59% 米東部時間 16時52分別の米経済統計では、輸入物価指数も前月比0.1%低下と、エコノミスト予想に比べて物価の落ち着きを示した。
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円は対ドルで、ニューヨーク市場の前日終値を挟んだ推移となり、小幅安。朝方に142円60銭まで買われ、その後143円20銭台に下げるなど、方向感に乏しい展開だった。
BofAが実施したファンドマネジャー調査では、ドル軟調予想が2006年5月以来の高水準となった。向こう1年でドルが下落すると見込む回答者の割合は約61%に達した。
ユーロはドルに対して下落。一時0.8%近く下げた。欧州中央銀行(ECB)が発表した銀行の貸し出しに関する四半期調査で、ユーロ圏の銀行が企業への与信基準を厳格化していたことが分かった。
ポンドは対ドルで上昇。これで6営業日続伸と、昨年7月以来の長期上昇局面となった。
クレディ・アグリコルのストラテジスト、バレンティン・マリノフ氏は「ポンドがきょう相対的にアウトパフォームしている理由の一つは、米英貿易協定の可能性が大いにあるとしたバンス米副大統領の発言のようだ」と指摘。「英メディアの大半でこれがメインの記事となっており、ユーロなど他の通貨と比べたポンドの優位性を浮き彫りにしている」と話した。
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カナダ・ドルは対米ドルで一時0.75%下落。カナダ消費者物価指数(CPI)は市場予想に反して伸びが鈍化した。しかし、米関税政策を巡る強い不確実性を背景に、カナダ銀行(中央銀行)は16日の会合で政策金利を据え置くとの見方がやや優勢だ。
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原油
ニューヨーク原油先物は小幅安。恒常的な供給過剰が続くとの見方が強まり、売りが優勢になった。貿易戦争における米国の最新の動きにも注目が集まった。
欧州連合(EU)と米国の貿易協議が今週ほとんど進展を見せず、トランプ政権はEUに課している関税の大半を維持する意向を示した。国際エネルギー機関(IEA)は今年の石油需要予測を下方修正し、供給過剰は2026年まで続くと予測した。
キム・フュスティエ氏を含むHSBCホールディングスのアナリストは「2025年の石油市場の余剰は拡大している」と、リポートに記述。「需要の低迷に、OPECプラスによる生産増加の加速が組み合わさり、数カ月前の予測よりも2025年の余剰が大きくなることが示唆されている」と指摘した。
ニューヨーク商業取引所(NYMEX)のWTI先物5月限は、20セント(0.3%)安い1バレル=61.33ドルで引けた。ロンドンICEの北海ブレント6月限は0.3%安の64.67ドル。
金
ニューヨーク金相場は反発。トランプ政権が貿易戦争の拡大につながり得る調査を進める中、買いが優勢となった。前日の取引時間中に付けた最高値に近づく場面もあった。
金スポット相場は一時、オンス当たり3223ドルを付け、最高値から20ドル未満の水準に上昇した。商務省は14日、関税賦課の前段階として、半導体および医薬品の輸入が国家安全保障に及ぼす影響に関する調査を開始したと発表した。
金融市場が混乱する中、金は今年に入って20%余り上昇。貿易戦争の悪化により世界経済の成長見通しが暗くなり、通常は安全とみなされる米国資産への信頼が揺らいでいる。ベッセント財務長官は最近の国債売りを重要視せず、必要であれば混乱に対処する手段を財務省は有していると強調した。
一方、ウォラー米連邦準制度理事会(FRB)理事は、関税がインフレに与える影響は一時的なものにとどまるとの認識を示した。仮に関税による軽微な影響が物価に現れたとしても、2025年下期には利下げが「十分に」選択肢になるとの見方を示した。通常、借り入れコストの低下は金利を生まない金にとっては追い風となる。
投資家が金に裏付けされた上場投資信託(ETF)の保有量を増やし、中央銀行が引き続き金を蓄積しているため、今後数四半期の金相場の見通しについて大手銀は楽観的な見方を維持している。ゴールドマン・サックス・グループは、2026年半ばまでに4000ドルまで上昇すると予測している。
世界最大の金塊市場である中国での強い需要が支援材料となる可能性もある。貿易戦争が激化するにつれ、投機的な取引が急増し、現地のETFへの資金流入も増加している。
グローバル・エックスETFのアナリスト、ジャスティン・リン氏は「人民元の切り下げやマクロ経済の変動、脱ドル化の議論の高まりは、中国における金需要の典型的で強力な推進要因だ」と指摘。世界的に見ると、「さらなる上昇には、連邦準備制度理事会(FRB)のハト派への方針転換あるいは米経済の大幅な減速の明確な兆候が必要になるだろう」と述べた。
金スポット価格はニューヨーク時間午後2時6分現在、15.93ドル(0.5%)上げて1オンス=3226.86ドル。ニューヨーク商品取引所(COMEX)の金先物6月限は14.10ドル(0.4%)高い3240.40ドルで引けた。
原題:Stocks Halt Rally Amid Lingering Trade-War Risks: Markets Wrap(抜粋)
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