求婚断った交際相手を斬首した男への死刑判決維持 パキスタン最高裁
発信地:イスラマバード/パキスタン [ パキスタン アジア・オセアニア ]
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【5月21日 AFP】パキスタン最高裁は20日、プロポーズを断られた腹いせに交際相手の女性の首を切って殺害したとして殺人罪で起訴された男の裁判で、死刑判決を維持した。この事件は、女性の権利活動家から激しい反発を呼んでいた。
裕福な実業家の息子で、パキスタン系米国人のザヒル・ジャファー被告(30代前半)は2021年、首都イスラマバードにある豪華な自宅で、交際相手だったヌール・ムカダムさん(27)にプロポーズを断られた後、ナックルダスター(メリケンサック)を使って拷問し、「鋭利な刃物」で首を切断した。
ムカダムさんの幼なじみ、シャファク・ザイディさんは最高裁の前で、「これはパキスタンのすべての女性にとっての勝利だ。わが国の司法制度に正義を実現できる能力があり、女性が法的手続きにもっと自信を持てるようにすべきであることを示している」とAFPに語った。
「これは私たちにとって最後の手段だった。この判決が私たちにとってどれほど意味のあることか、言葉で表現するのは難しい」と続けた。
ジャファー被告は2022年、レイプと殺人の罪で有罪判決を受けたが、弁護団は同被告がメンタルヘルスの問題を抱えていると主張して上訴した。
ハシム・カカール判事は20日、殺人罪に対する死刑判決は維持したが、レイプ罪に対する死刑は終身刑に減刑した。
だが、パキスタンでは近年、死刑はほとんど執行されていない。
ムカダムさんは元大使の娘。殺害された夜、何度も逃亡を試みたが、ジャファー被告の使用人2人に阻止された。
社会的に弱い立場に置かれた女性への法的支援を行う団体「アスマ・ジャハンギル法律相談所」は、女性に対する暴力事件の有罪率は3%未満だと指摘している。
性的虐待やドメスティックバイオレンスの被害者は、報復を恐れて刑事告訴しないことが非常に多い上、たとえ告訴したとしても真剣に捜査してもらえないことが多い。
被害者の行動が問題視されると、その家族に汚名を着せられることも多々ある。
今回の裁判でも、ムカダムさんが未婚であるにもかかわらずジャファー被告と2人きりで過ごしたことについて、判事らは裁判中にムカダムさんを侮辱する発言を繰り返し、カカール判事も20日、こうした行為は「私たちの価値観に反する」と付け加えた。
裁判を傍聴した女性の権利活動家のファルザナ・バリ氏は、こうした発言について、「男性には女性を拘束する正当な権利があるかのように示唆しており、有害で退行的な考え方だ」と批判。
「こうした司法の姿勢が、長く疲弊する裁判を助長しており、被害者は希望を失い、途中で諦めてしまうことも多い」と述べた。(c)AFP