とうとうパクチー苦手民がカップヌードル「トムヤムクン味」と向き合う時が来たので初実食してみた / ビッグサイズ新発売によせて

ついに来てしまったか、と思う。ついに、とうとう、この時が来た。カップヌードルの人気フレーバー、「パクチー香るトムヤムクン味」と向き合う時が。

カップヌードルを心底愛しているもののパクチーを苦手とする筆者は、長らく同商品に対して見て見ぬ振りを続けてきた。いや、より正確に言えば折に触れて熱烈に凝視しては唇を噛みながら目を逸らしたり、悔しげにうめいたりしていたのだが、ともかく手を出せずにいた。

しかしこのたび2025年8月4日に、多くのファンの要望に応える形で「トムヤムクン味」のビッグサイズが発売されると知ったことで事情は変わった。このままでは間違いなく世間の潮流から取り残されてしまう。ついでにそろそろ我慢もできない。

そういうわけで、筆者は「トムヤムクン味」の初実食に踏み切り、同商品を入手した。価格は他のフレーバーのビッグサイズと変わらず税別271円だった。

一足飛びにビッグサイズに挑むとは我ながら羽目を外しているが、これは期待の表れでもある。何せ「世界のカップヌードル」という特別枠に属していながら、もはや定番の地位を得ているフレーバーだ。見て見ぬ振りをしてきたなりに、そういった世評をわきまえてはいる。

一方で、やはり不安も拭えない。果たしてこの身はこの品を美味しく味わえるのか。「結局苦手でした」などということになれば、仕方ないとはいえ歯がゆさで泣いてしまう。

が、調理を進めるにつれ、その不安もたちまち霧散していった。何とも香ばしい匂いが鼻孔をくすぐる。

付属のトムヤムペーストを仕上げに投入すると、エキゾチックなかぐわしさとビジュアルが、いよいよ食欲を頂点へいざなった。

箸を差し入れ、すする。唐辛子とレモングラス、ライムリーフが織りなすスパイシーでいて爽やかな口当たり。そこへココナッツミルクのクリーミーさも加わり、筆者の舌はしびれ、浮かれ、とろけた。極めて複雑かつ調和の取れた味わいに、一口で驚嘆させられた。

しかし最も驚きだったのは、パクチーの風味がほとんど感じられなかった点である。これは一体何事か。人生においてあまりパクチーを摂取してこなかったとはいえ、あの独特のテイストを忘却しうるわけがない。

まさか筆者が日々呆けて暮らしているあいだに、この身は不得手な味覚を自動的に遮断する次世代生命に進化したのかと思ったくらいだが、おそらくパクチーがそこまで盛り込まれていないか、前述の複雑な味わいが全体を覆うほど濃厚かのどちらかだろう。

何度麺をすすろうと、何度スープを飲み込もうと、「結局苦手でした」などという感想は地の果てまで遠のくばかりだし、良い意味で味の全容がうかがえない

辛味と酸味と甘味、さらには魚介の旨味も混ざり、「目くるめく」ならぬ「舌くるめく」グラデーションが延々と口の中で繰り広げられる。味わうごとに美味しさが塗り替えられ、刷新されていくかのような、色彩豊かで刺激的な食べ心地がたまらない。

むしろ食事の終盤では、「パクチーの風味を探す」という逆転現象さえ起きていた。ついには全ての麺と具材を平らげ、スープを飲み干してしまったわけだが、仮に30口かけて食べ終わったのだとして、そのうち1、2口くらい「おや?」と思う瞬間があった程度だ。

何なら「パクチーの風味を探す」という名目で、ただこのラーメンをむさぼっていた側面の方が強い。もっとパクチーを浴びたい方には物足りないのかもしれないが、しかし多くの人間を魅了するクオリティであることは確かだし、実際、筆者もこうして夢中になった。

カップヌードル「トムヤムクン味」の初体験は、以上の通り幸福のうちに終わった。この記事が、かつての自分と同じく、興味はあっても本商品に手を出せていない誰かの役に立てたなら幸いである。ぜひとも臆せずに挑んでみてほしい。

筆者の心中では、さっそく食べ終わったそばから「もう一度食べたい」という叫びが上がっている。この欲望を見て見ぬ振りなど、できない。

参考リンク:日清 公式サイト 執筆:西本大紀 Photo:RocketNews24.

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