「肌が焼ける痛み」で銃乱射を止める...米企業「ブルナ」の非致死性護身用デバイスの「威力」とは?(ニューズウィーク日本版)
アメリカのある企業が、非致死性護身用デバイス「ブルナ(Byrna)」を学校や宗教施設に導入し、銃乱射事件の抑止につなげようとしている。 【動画】「銃で撃たれたかと...」護身用「ブルナ」の威力とは? 実際に発砲する「実験動画」 インディアナ州に拠点を置くブルナ・テクノロジーズ(Byrna Technologies)のCEO、ブライアン・ガンツ(Bryan Ganz)氏は本誌のインタビューに次のように語る。「多くの場合、襲撃者に対してブルナを構えるだけで発射する必要すらない。自衛の意志を示すだけで十分な抑止力になる」 K-12スクールシューティング・データベースによると、学校での銃撃事件は年々増加傾向にあり、2023年には約351件、2024年には約336件と過去最多を記録した。 今年もすでに208件発生しており、8月にはミネソタ州のアナンシエーション・カトリック教会付属学校で銃撃事件が起き、子供2人が死亡、30人以上が負傷する惨事となった。 過去には、ドナルド・トランプ大統領を含む一部の関係者が、抑止策として教師に銃を持たせる案を提唱し、懸念の声が上がっていた。 最近では、トランプと支持者が、銃の所有に対してさまざまな制限を設ける提案をしており、その中にはトランスジェンダーの人々による銃の所有を禁じる案も含まれている。これに対して、全米ライフル協会は強く反発している。
アメリカ連邦最高裁判所は、ハワイ州の厳格な銃規制法をめぐる審理を控えている。この法律は、私有地における銃の携帯を原則として禁じており、土地所有者が明示的に許可しない限り銃の持ち込みを認めない内容となっている。 アメリカ合衆国憲法修正第2条(人民が武器を保持、所持する権利を保護する条項)の支持者であるガンツ氏は、かつて危険な状況に発展しかねないあおり運転に遭遇した際、銃の使用を一時考えた経験があり、そこからこのデバイスの着想を得たという。 「相手が車から降りてきたのが見えたんだ。手には何も持っていなかったから、私も銃を持たずに車を降りた。正直言って、ろくなことにはならなかった。相手は突進してきて、私を地面に叩きつけた。幸い、本当に傷ついたのはプライドだけだったけれど、この経験は大きな教訓になった。銃を使う覚悟がなければ、持っていても意味がないと気づかされたんだ」 「この経験をきっかけに、非致死性の個人用防犯デバイスを開発したいと強く思った。これがブルナ誕生の出発点になったんだ」 このデバイスには複数のカラーバリエーションがあるが、見た目は拳銃に近い。ただし、作動原理はまったく異なる仕組みで、「拳銃にやや似た使い方ができるよう設計されている」という。 ブルナは、ペイントボール銃やTシャツランチャーに似たCO₂圧縮ガス式の発射機構を採用しており、2種類の非致死性弾を発射できる。ひとつは「痛みへの反応」によって動きを制止する高強度ポリマー製の弾(実質的には硬質プラスチック)、もうひとつはより一般的な唐辛子スプレー弾で、効果は20〜30分間持続するという。