マスク氏、政治献金を大幅に減らす意向-トランプ氏や共和党に打撃か

資産家イーロン・マスク氏は20日、今後は政治献金を大幅に減らす意向を示した。2026年の米中間選挙を前に、トランプ大統領および共和党にとって打撃となる可能性がある。

  マスク氏はカタール経済フォーラムでのブルームバーグとのインタビューで「今後はかなり控えるつもりだ」と発言。方針転換の理由を問われると、「もう十分やったと思う」と語った。インタビューにはリモート形式で参加した。

  トランプ政権の看板プロジェクトである「政府効率化省(DOGE)」を主導するマスク氏は、2024年の米大統領選ではトランプ陣営を支える大口献金者だった。

カタール経済フォーラムにリモートで参加したマスク氏

  ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、マスク氏の個人資産額は3750億ドル(約54兆2000億円)。昨年の選挙期間中には複数の政治団体に約2億5000万ドルを献金した。その多くはトランプ氏を支援するために使われ、トランプ氏は連邦政府の規模と権限を縮小する野心的な取り組みの責任者にマスク氏を任命した。

  DOGEを率いる特別政府職員に就任したことで、マスク氏はテスラのCEOを兼務しながら、ホワイトハウスで過ごすことも多くなった。

  しかし、政治におけるマスク氏の影響力には限界も見られた。ウィスコンシン州最高裁判事の選挙では、同氏が2000万ドルを投じて支援した共和党候補が10ポイント差をつけられて敗れた。一方、政治色が強まったことでマスク氏の事業に対する反発も広がり、テスラの販売店や車両を標的にした抗議活動や器物損壊も相次いだ。

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  議会共和党は来年の中間選挙で多数派を維持すべく、マスク氏からの多額の献金に期待していたとみられる。中間選挙では大統領の政党が下院議席を減らす傾向が強く、予測市場では、2026年以降も共和党が議会の主導権を維持できる確率は20%程度との見方が出ている。

テスラの将来

  テスラの将来についてマスク氏は、5年後も同社を最高経営責任者(CEO)として率いる意向だと言明。政治への関与を強める同氏の経営へのコミットメントを不安視する一部投資家の懸念を和らげた。この発言を受け、テスラ株は一時3.6%上昇した。

  同氏は、2018年にテスラが提示した巨額報酬パッケージを2度にわたり退けたデラウェア州の衡平法裁判所を批判したものの、この問題が自身のテスラ残留の判断に影響を与えることはないと説明。資産の問題ではなく、経営上の権限確保を理由にテスラ株の保有比率を高めたいとの考えを改めて示した。

  「金銭の問題ではない」とマスク氏は述べ、「会社の将来に対する合理的なコントロールの問題だ」と強調した。

  テスラは販売台数の低迷といった課題に直面しているが、マスク氏は「すでに回復している」と発言。欧州の主要市場で4月に販売台数が大幅に減少したことを問われると、欧州以外では好調だと指摘。「現時点で当社の販売は順調だ」と語り、「深刻な販売減少が生じるとは見込んでいない」と付け加えた。

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  マスク氏は、自身の言動がテスラのブランド価値に傷を付けたとの見方を否定し、政治的に左寄りの一部の顧客は失ったものの、右寄りの顧客の支持を得ていると語った。

原題:Musk Says He’ll Scale Back Political Spending in Blow to GOP (1)Musk Commits to Tesla CEO Role and Plans Political Pullback (1)(抜粋)

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