ロシアの石油精製所で火災、ウクライナのガス施設には集中攻撃 エネルギー戦争激化で燃料不足が深刻化
(CNN) ウクライナとロシアがエネルギー戦争を激化させている。ウクライナとの国境から約1400キロ離れたロシアの石油精製所で11日、火災が発生した。ウクライナ治安当局はこの火災について、ウクライナが長距離ドローン(無人機)で攻撃して発生させたと主張している。同施設の火災は過去1カ月だけで3回目だった。 【写真特集】「ガソリンなし」と書かれた掲示のあるガソリンスタンド、他1枚 攻撃を受けたのは、ロシア南部のバシコルトスタン共和国にあるウファ石油精製所。現場からの映像には工場から黒煙が立ち上る様子が映っている。同施設はロシア最大級の石油精製所だった。 ウクライナがロシアの石油施設を攻撃したのは過去1週間で少なくとも4回目。この夏ごろから攻撃が激化している影響で、ロシアの一部地域はガソリン不足に見舞われている。 ウクライナ軍によると、9日夜にかけてはロシア南部ボルゴグラード州のガス処理施設とポンプ場も攻撃した。ウクライナ特殊部隊はこのポンプ場について、年間5000万トンの処理能力があると主張している。 一方、ウクライナでも、ガス生産施設がロシアのミサイルやドローンの集中攻撃を受けて激しく損傷し、全土で大規模な停電が発生した。ウクライナ当局は、不足を補うために欧州からの高額な輸入ガスに頼らざるを得なくなるとの見方を示した。 ウクライナ南西部オデーサ州では11日、ロシアの攻撃によって24万軒あまりが停電に見舞われた。エネルギー省によれば、首都キーウでは一時80万軒以上で停電が発生した。 ウクライナが国境から1000キロ以上離れたロシア国内の施設に対する攻撃能力を強めているのは、国産ドローンとミサイルを増産していることによる。 ボロディミル・ゼレンスキー大統領は先日、ロシアのガソリン不足は「(必要量の)約20%に達している」との見方を示した。ウクライナは国産巡航ミサイルの使用も開始しており、「この兵器は成功の兆しが見えている」と強調している。 ウクライナ軍のオレクサンドル・シルスキー司令官は10日、テレグラムへの投稿で、ウクライナは9月にロシアを70回攻撃したと述べ、「燃料や潤滑油、爆弾など軍需品の製造施設を破壊している」と書き込んだ。 一方でロシアは、ウクライナのガス施設などのインフラに対する攻撃を激化させている。 ゼレンスキー大統領は「防空システムで守らなければならない重要施設が203ある」と述べ、改めて西側諸国に防空システム増強への協力を求めた。 この1週間は、ミサイルとドローンを組み合わせてウクライナのエネルギー施設を狙う集中攻撃が相次いだ。ウクライナによると、ロシアが今月5日に発射したミサイルは50発以上、ドローンは約500機。10日未明にはドローン465機、ミサイル32発が発射された。 ウクライナのユリヤ・スビリデンコ首相は10日の攻撃を「エネルギー施設を狙い撃ちにした最大級の集中攻撃」と形容。「残念ながら、エネルギーインフラに相当の被害が出た」と明らかにした。 ロシアがガス製造施設に対する攻撃を強めている影響で、ウクライナはガス輸入量を予定よりも増やす必要に迫られている。 スビトラーナ・フリンチュク・エネルギー相によると、冬が近づく中、貿易相手国との間で天然ガスの輸入量を30%増やす交渉を進めている。ウクライナのガス需要は例年、11月から急増する。