久保建英以来の出場となる“中学3年生”が国立の舞台で豪快なゴラッソ!トップチームのキャンプにも帯同した15歳、長南開史(柏U-18)が解き放つ確かな才能
豪快なゴールを突き刺したU-18 Jリーグ選抜MF長南開史(柏U-18/中学3年=柏レイソルU-15)
[2.8 NEXT GENERATION MATCH U-18 Jリーグ選抜 4-1 日本高校選抜 国立] もうこの15歳に“中学3年生”という枕詞は必要ないのかもしれない。既に昨季から高校年代最高峰のプレミアリーグで躍動を続け、年明けにはトップチームのキャンプにも参加。そのうえ、この日は国立競技場でゴールまで決めてしまうのだから、ただただ恐れ入るばかりだ。 「いつもプレミアを見に来てくれたり、応援してくれている人がたくさんいて、今日はそういう人たちにも結果でお礼がしたいという想いでやりました。もう今年中には絶対にトップチームでデビューしたいですし、プレミアリーグのような公式戦でもっと結果を残せば、トップの方でもチャンスをもらえると思うので、まずはプレミアリーグで活躍したいなと思います」。
黄色いユニフォームを纏う太陽王に、あるいは日本サッカーそのものに、明るく射し込む希望の光。U-18 Jリーグ選抜唯一の中学生、MF長南開史(柏U-18/中学3年)は初めて立つ聖地を舞台にしても、いつも通りの長南開史だった。
「自分的にはプレミアでも右サイドバックをやっていたので、そこが良かったですけど、今日は左サイドバックをやってみて、意外と楽しいなと思いました」。Jリーグの新シーズンの幕開けを告げるFUJIFILM SUPER CUP2025の“前座”として開催されたNEXT GENERATION MATCH。長南はU-18 Jリーグ選抜のスタメンに指名され、左サイドバックの位置に解き放たれる。 そもそもその選出自体が異例だと言っていいだろう。中学3年生がJリーグ選抜に選出されるのは、2017年大会の久保建英(レアル・ソシエダ)以来で2人目。昨シーズンのプレミアリーグEASTでは14試合に出場し、ゴールも決めているとはいえ、並み居る年上の選手たちを差し置いて白羽の矢が立つあたりに、この人に対する周囲の期待感が垣間見える。 だが、プレーを見ればすぐに合点が行く。「最初は知っている人が2,3人ぐらいしかいなかったんですけど、2日目になるにつれて、みんな本当に優しくて、弟キャラみたいな感じでチームになじめたので(笑)、それものびのびできた要因かなと思います」とは本人だが、前日練習の紅白戦でもアシストを含めた好プレーを連発。年上の選手たちの中でも、何ら見劣りすることなく実力を存分に発揮していたのだ。この日の一戦もキックオフからピッチに立つと、左サイドバックの位置で攻守に落ち着いたプレーを連発。前半13分にはオーバーラップから、右足で正確なクロスを送り込み、FW大西利都(名古屋U-18/2年)の惜しいヘディングを演出する。
特筆すべきはそのサッカーIQの高さだ。後半14分の選手交代を受けて、ポジションは右サイドハーフへ。さらに30分の選手交代後には左サイドハーフにスライドするなど、1試合の中で3つのポジションを任されることになったが、どの位置にいても託された役割を過不足なく遂行するあたりは、やはり並の15歳ではない。 その才能が眩く輝いたのは、後半もアディショナルタイムに入った40+1分。「途中から疲れてきて、足が動かなかったですけど、『攻撃になった時は走ろう』と決めていたので、そこでスプリントを出せたのは良かったです」と左サイドをドリブルで駆け上がると、その瞬間に今回の選抜に帯同している柿谷曜一朗コーチの言葉が脳裏へ浮かぶ。 「前半が終わった時に柿谷さんから、『オマエ、速いから縦に行ってシュートを打て』と言われて、あのシーンもその言葉が頭をよぎりました」。縦にそのまま運んで左足一閃。軌道はGKのニア上を破り、豪快にゴールネットへ突き刺さる。 「狙いはまったくなかったですけど、とりあえずコースはどこでもいいからシュートを打とうと思ったら、ニア上の良いコースに行ったので良かったです」。ガッツポーズしながらピッチサイドに走り寄ったチーム最年少の16番へ、“お兄さん”たちも次々と飛び付いて祝福する。 「Jリーグ選抜に中学生で選ばれるのは久保選手以来ということで、久保選手を超える結果を残したいと思っていたので、それは良かったです。自分は結構緊張するタイプで、メンタルも強くないですし、久保建英選手みたいな性格ではないですけど、もっとチャレンジできる選手になりたいと思います」。フル出場を果たした上に、久保も成し遂げられなかった史上初となる中学生のNEXT GENERATION MATCHでのゴール。長南は国立のピッチで十分なインパクトを残したと言っていいだろう。 昨シーズンもトップチームの練習に参加した長南は、年明けの鹿児島・指宿キャンプにも後半の1週間に帯同したが、自身の中では改めて現在地を突き付けられる機会になったようだ。「自分が思っていた以上にレベルが凄く高くて、本当に何もできないという感覚だったので、もっともっと自分の中で基準を上げて、普段から練習していきたいなと思います」。 とりわけ印象に残ったのは、チームのディフェンスラインを束ねるベテランセンターバックだったという。「犬飼(智也)選手は後ろから声を出せますし、安定感も凄くあって、本当にこういう選手がプロでも長く続けられる選手なんだなと思いました」。J1の世界を生き抜いてきた猛者たちと過ごした時間が、長南の目指すべき視座を格段に上げてくれたことは想像に難くない。 今回のJリーグ選抜合宿中には面白い一幕があった。練習の視察に訪れていた小林祐三・Jリーグフットボール本部企画戦略ダイレクターが、長南に「オレもレイソルでプレーしていたんだよ」と話しかけたところ、「え?プロサッカー選手だったんですか?」と返されたとのこと。2009年生まれの長南に対し、小林がレイソルに在籍していたのは2010年まで。「まあ、そうなりますよね」と笑う小林に対して、長南は「ちょっと知らなかったですね。今はもうさすがに覚えましたけど」と苦笑い。ただ、小林も「あの子は面白いと思います」と話しており、意外なところでレイソルの新旧サイドバックに新たな交流が生まれたようだ。 「プレミアでも上の年齢の人たちとやっていますし、今の時代は年齢は関係ないので、こういう中でも活躍できる選手になりたいなと思っています」と口にする長南は、試合前日に聞いた柿谷コーチの話に、小さくない感銘を受けたという。 「柿谷さんが『今の目標のもう1個上を行け』というふうに話していて、『確かにその通りだな』と。今はトップデビューという目標がありますけど、そこをステップにして海外に行けるぐらいの選手にならないといけないなと思ったので、良い影響を受けました」。 「自分としては“走る選手”になりたいなと思っていて、今の時代はハードワークとか走ることが大事になってきていて、走れない選手は上に上がれないと思うので、運動量ももっと上げて、アグレッシブに戦う選手になりたいです」。 黄色いユニフォームを纏う太陽王に、あるいは日本サッカーそのものに、明るく射し込む希望の光。過度の期待は禁物だが、それでも大きな期待を寄せざるを得ない確かな才能が、長南開史には間違いなく秘められている。(取材・文 土屋雅史)