野菜の価格高騰が続いています。国内最大級の青果市場・大田市場(東京)で仲卸業を営む「野菜の目利きのプロ」本多諭さんに、物価高での野菜選びのポイントを聞きました。 : 読売新聞

野菜の価格高騰が続いています。さまざまなモノやサービスが値上がりする中、高値の野菜はなるべく買い控えたいところですが、栄養豊富な野菜は毎日の生活に欠かせない食材だけに、節約を考えながら賢く購入したいものです。国内最大級の青果市場・大田市場(東京)で仲卸業を営む「野菜の目利きのプロ」本多諭さんに、物価高での野菜選びのポイントを聞きました。

キャベツの価格 平年の3.4倍に

農林水産省の食品価格動向調査によると、1月14~16日のキャベツの全国平均小売価格は1キロ当たり553円で、平年の3.4倍に達しています。このほか、白菜は平年の2.5倍の同360円、レタスは平年比74%増の同985円などとなっており、葉物野菜を中心に、調査対象8品目の全てが平年を大きく上回っています。

値上がりした野菜は節約を考えながら賢く購入を(写真はイメージ)

昨夏の猛暑と昨秋以降の天候不順によって生育の遅れや品質不良が生じ、生産地の多くで出荷量が減少していることが主な原因です。本多さんは「高値は1月いっぱい続くと見られていますが、2月以降は生産が回復してきて、価格はもう少し落ち着いてくるのでは」と今後の見通しを語ります。

保存が利き価格安定の根もの野菜

冬が旬の野菜には、白菜や大根、長ネギ、ほうれん草、ブロッコリー、レンコンなどが挙げられます。野菜は、旬の時期になると栽培するのが容易になり、収穫して出荷できる作物の割合(歩留まり)も高くなることなどから、価格が下がる傾向にあります。

ところが、天候不順が頻発している近年は、旬の野菜も不作で値上がりすることが増え、「旬の野菜は安い」とは一概に言えなくなっています。そのため、本多さんは「旬にとらわれずに、一年を通して流通していて価格が比較的安定している野菜を使うことが大切」と強調します。

具体的には、天候の影響を受けにくい大根、レンコン、ジャガイモ、サトイモ、ニンジンなどの「根もの」が挙げられます。新聞紙などでくるみ、涼しい場所に保管しておけば日持ちするので、スーパーで安売りしている時などにまとめ買いをしておくと、食費の節約につながります。

中でも本多さんが勧めるのは、体の温まる鍋物やおでんの具材として定番の大根です。おいしい大根の特徴について、本多さんは「全体に張りとつやがあり、まっすぐ伸びて太い。持った時にずっしりと重く感じたら、水分が豊富でみずみずしい証拠です。また、ひげ根の毛穴が浅くて少ない、表面の滑らかなものが良いです」と説明します。

煮物や汁物の具材としておなじみのサトイモも、お勧めの根もの野菜の一つです。皮がしっとりと湿っているどうかが新鮮さの目安で、泥が付いたまま売られており、皮のしま模様がくっきりと見えていて固いものは風味が良いといいます。

キノコは張りがあって肉厚なものを

天候に左右されやすい畑ではなく、工場で栽培される野菜も、価格が大きく変動することが少ないため、家計の強い味方になります。キノコ類やモヤシ、フリルレタスなどが該当します。

【左】「秋が旬」のイメージが強いキノコは、年間通じてリーズナブルな価格で購入できる【右】白菜は丸ごと購入し、余ったら冷凍保存を

とりわけキノコは、お勧めの食材だといいます。「キノコは鮮度が良いほど、味や香り、食感が良く、おいしく食べられます。エノキ、シイタケ、エリンギ、シメジなど様々な種類がありますが、どのキノコも見極めのポイントは、張りがあって肉厚かどうかです」

キノコは全体の80~90%が水分で出来ていて、時間がたつと水分が表面に出てきてしまい、食感が損なわれます。店頭で手にとってみて、水っぽいと感じたり、包装のパックや袋に水滴が付いていたりしたら、避けた方が良いそうです。

白菜は丸ごと購入、余ったら冷凍保存

軒並み高値となっている葉物野菜の中で、値上がり幅が比較的小さいのが小松菜です。良い小松菜を見極めるポイントは、(1)葉の緑色が濃くて鮮やか(2)葉が肉厚でみずみずしく、ピンと張っている(3)葉脈が軟らかい(4)茎が太く、しっかりしている――などです。

冬の旬野菜の代表格とも言えるのが、白菜。現在は価格が上がっていますが、もともとボリュームが大きいわりに安価な野菜です。「1個丸ごと購入し、使い残した分を上手に保存して使い回せば、経済的には依然お得だと言えます。店頭で選ぶ際には、葉先まで固くしっかり巻かれていて、上部を押した時に弾力があるものや、底面の切り口が白くて新鮮なものが良いでしょう」

カットした大根やサトイモを冷凍用食品保存袋に入れて保存

白菜を丸ごと購入したら、まずはサラダに。余った分は小口にカットして冷凍用食品保存袋に入れ、冷凍保存しておけば、1~2週間はおいしく食べられます。ただし、冷凍した白菜を解凍すると、繊維が壊れてシャキシャキ感が損なわれてしまうため、サラダにするのはやめて、鍋物や煮物に使うのがベター。繊維が壊れたことで、かえって味が染み込みやすくなり、おいしく仕上がります。

たとえ安価な野菜でも、あれこれとたくさん購入した結果、思わぬ大きな出費になって慌ててしまうことも。そんな事態を避けたければ、必要な野菜が必要な量だけ袋詰めされている「カット野菜」を選ぶこと。カット野菜のメーカーの多くは、原料となる野菜を契約農家から一定の価格で仕入れています。そのため、市場価格の影響を受けにくく、野菜が高騰しても、それに合わせてカット野菜が高値になることはありません。

コンパクトに袋詰めされたカット野菜は、冷凍保存にも適しています。「丸ごと野菜にせよ、カット野菜にせよ、購入したものは保存方法などを工夫して、無駄なく使い切ることが節約の 秘訣(ひけつ) です」と本多さんは結んでいます。

1皿だけでも食べ応え「節約野菜」活用レシピ5選

雑誌やウェブなどで野菜を使ったレシピを提案している「野菜の料理家」西岡麻央さんに、リーズナブルな価格で家計の味方になる「節約野菜」で作るお勧めの料理を紹介してもらいました。

コロコロ大根のドライカレー

【コロコロ大根のドライカレー】

■材料(2人分、調理時間15分)■ ◇ご飯=茶わん2杯(300g) ◇大根=4分の1本(200g) ◇にんじん=4分の1本(45g) ◇合いびき肉=150g ◇A中濃ソース=大さじ1と2分の1 Aカレー粉=小さじ2分の1 ◇深煎りごまドレッシング(市販品)=大さじ2

■作り方■ 〈1〉大根は皮をむき、2cmの角切りにする。にんじんは皮をむき、1cmの角切りにする。ぬらしたクッキングペーパーで包んで耐熱容器にのせ、ふんわりとラップをかけて電子レンジ(600W)で約4分加熱する。 〈2〉フライパンに、ドレッシング、合いびき肉の順に入れて熱し、弱めの中火で炒める。火が通ったらAを入れ、〈1〉を加えてさらに炒める。 〈3〉器にご飯と〈2〉を盛りつける。

「大根とカレーの組み合わせは意外かもしれませんが、香ばしいごまドレッシングなどをカレーに混ぜると、大根との相性がぐっと良くなります。2センチ大のゴロッとした大根に加えることで、ボリュームが格段にアップし、食べ応えのある一品に仕上がります。お肉をそれほど使わなくても量が増すので、食費の節約にもつながるし、作り置きもできるので、仕事が忙しくて料理にかける時間があまり取れないという人にお勧めです」

キノコと鮭の蒸しサラダ

【キノコと鮭の蒸しサラダ】

■材料(2人分、調理時間15分)■ ◇エノキダケ=1パック(85g) ◇エリンギ=1本(37g) ◇ブナシメジ=2分の1パック(50g) ◇鮭(生)=2切れ(200g) ◇パセリ=適量 ◇イタリアンドレッシング(市販品)=適量

■作り方■ 〈1〉ブナシメジは石づきを取り、小房に分ける。エノキダケは石づきを取り、ほぐす。エリンギは縦半分に切り、斜め薄切りにする。 〈2〉鮭は4等分のそぎ切りにする。 〈3〉器に乾いたクッキングペーパーを敷いて、〈1〉、〈2〉の順に重ねる。ぬらして軽くしぼったクッキングペーパーを材料がかくれるようにかけて、レンジ(600W)で約6分30秒加熱する。 〈4〉〈3〉クッキングペーパーを全て取り除いた後、再度盛りつけ、みじん切りにしたパセリを散らし、ドレッシングをかける。

「もし焼いた鮭の切り身を食卓に並べたら、あともう1、2品ないと物足りなく感じるでしょう。そこで、鮭にたっぷりとキノコを合わせたサラダにしてみてはどうでしょうか。ボリューミーで満足感を十分に得られる一品になります。レンジだけを使って調理し、仕上げの味付けはドレッシングをかけるだけなので、やはり多忙な人にぴったり。キノコに豊富に含まれている食物繊維をはじめ、必要な栄養がしっかり取れます」

サトイモとベーコンのマヨネーズ炒め

【サトイモとベーコンのマヨネーズ炒め】

■材料(2人分、調理時間10分)■ ◇サトイモ=3個(150g) ◇ベーコン=3枚(60g) ◇小ネギ=2本(4g) ◇しょうゆ=大さじ1 ◇マヨネーズ=大さじ2

■作り方■ 〈1〉サトイモはよく洗い、耐熱皿に入れ、ラップをかけ、レンジ(600W)で約5分加熱する。水に取り、流水にさらしながら皮をむき、1cm幅に切る。 〈2〉ベーコンは2cm幅に切る。 〈3〉フライパンにマヨネーズ大さじ1を入れて火にかけ、〈1〉と〈2〉を焦げ目がつくまで炒めたら、残りのマヨネーズとしょうゆを加えてさっと炒める。 〈4〉器に〈3〉を盛りつけ、小口切りにした小ネギを散らす。

「サトイモは煮物など和食に使うイメージが強いですが、ベーコンのような洋食に使う食材との相性もとても良いです。サトイモの下処理も簡単で、レンジで加熱すれば、皮がぺろりとむけ、中もしっかり軟らかくなります。最後にベーコンと一緒に少しだけ炒めれば完成です。ジャガイモで作ってもおいしいですが、サトイモをあまり食べたことのない小さなお子さんに、この料理でサトイモに親しんでほしいです」

小松菜とブナシメジと油揚げのサラダ

【小松菜とブナシメジと油揚げのサラダ】

■材料(2人分、調理時間10分) ◇小松菜=3株(100g) ◇ブナシメジ=2分の1パック(50g) ◇油揚げ=…2枚(40g) ◇深煎りごまドレッシング(市販品)=適量

■作り方■ 〈1〉小松菜は葉と茎に分け、葉は小さめのざく切りにし、茎は2cm幅に切る。 〈2〉ブナシメジは石づきを取り、小房に分ける。油揚げは縦半分に切り、1cm幅に切る。 〈3〉フライパンを油をひかずに熱し、〈2〉をこんがりと焼く。 〈4〉器に〈1〉を敷き、〈3〉を盛りつけ、ドレッシングをかける。

「小松菜は生でもおいしく食べられますが、知らない人も案外多いのでは。サラダにすれば、生のシャキシャキッとした食感が楽しめます。小松菜自体の味はあっさりしているので、カリッと焼いて香ばしい油揚げや、濃厚なごまドレッシングと合わせて、満足感が得られるように。焼いたブナシメジのプリッとした食感も良いアクセントになります。お酒好きの人には、ヘルシーなおつまみとしても楽しんでもらえるでしょう」

白菜と豚肉の蒸しサラダ

【白菜と豚肉の蒸しサラダ】

■材料(2人分、調理時間15分) ◇白菜=8分の1個(240g) ◇豚肉(こま切れ)=100g ◇深煎りごまドレッシング(市販品)=適量 ◇豆類と穀物類のミックスセット(市販品)=1袋(40g程度)

■作り方■ 〈1〉白菜は葉と芯に分け、芯はそぎ切りにする。葉は食べやすい大きさに切る。 〈2〉豚肉は食べやすい大きさに切る。 〈3〉耐熱容器に乾いたクッキングペーパーを敷いて、〈1〉、豆類と穀物類のミックスセット、〈2〉の順に重ねる。ぬらして軽くしぼったクッキングペーパーを材料が隠れるようにかけて、レンジ(600W)で約6分加熱する。 〈4〉〈3〉のクッキングペーパーを全て取り除いて水気を切り、再度盛りつけ、ドレッシングをかける。

「旬を迎えた白菜は、甘みがいっそう増しています。甘みたっぷりの白菜と、うまみたっぷりの豚肉は、鍋物の具材としてベストの組み合わせの一つですが、サラダにしても相性バッチリです。蒸しサラダだと、加熱された白菜のかさが減って、たっぷり食べられます。生のサラダなら、白菜をシャキシャキとかむうちに、甘みがどんどん出てくるのを味わえます。旬の今こそ、いろいろな食べ方を楽しんでほしいです」

(読売新聞メディア局 田中昌義)

慶応義塾大卒。株式会社紀ノ国屋に2年間勤務した後、大田市場で野菜の仲卸業を70年以上営む家業の株式会社 大治(だいはる) に入社。2011年に代表取締役社長に就任。「東京野菜」ブランドを推進する東京野菜普及協会の代表理事を務める。
大学卒業後、航空会社で客室乗務員として4年間勤務。退社後、料理研究家の井上絵美に師事し、食のプロ養成学校「エコールエミーズ」のプロフェッショナルコースを修了。現在はCM、雑誌、ウェブなどで野菜を使ったレシピの提案を中心に活動。

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