アングル:カナダで広がる国産品購入運動、米消費関連企業に大きな痛手
[トロント/ニューヨーク 31日 ロイター] - カナダに市場を抱える米消費関連企業にとって、トランプ米大統領の政策への反発を背景にカナダで広がる国産品購入運動(「バイ・カナディアン」)が新たな懸念要素として浮上しつつある。
カリフォルニア州に拠点を置く紙おむつメーカーのパラソルは今年1月以来、ある卸売業者と手を組み、カナダ国内のコンビニなどへの販路拡大に取り組んできた、とジェシカ・ハン最高経営責任者(CEO)は語る。
ところが3月上旬になって、この卸売業者がカナダでの反米感情の高まりを理由に仕事から手を引いてしまった。ハン氏は「卸売業者はある小売業者から米国ブランドの発売を中止するよう指示され、われわれに市場環境が許せば再検討すると伝えてきた」と明かした。
ハン氏は「この種の混乱は全く想定していなかった。今までこのような事態が起きたのを聞いたことがない。かなりの逆風であるのは確かだ」と顔を曇らせる。
2024年にはカナダへ3500億ドル弱相当の米国製品が輸入されていただけに、小売店の棚に並ぶ品ぞろえが愛国的な消費行動に基づいてがらりと変われば、影響は大きい。
原因はトランプ氏にある。カナダは米国の51番目の州になるべきだといった発言や、カナダからの鉄鋼・アルミニウムへの25%の追加関税、またその他全てのカナダ製品に関税を適用すると脅していることなどから、カナダの多くの消費者の間で米国製品でなく国産品を買おうとの気運が高まっている。
ハン氏の話では、パラソルはカナダの消費者向けに商品のラベル表示をフランス語にする作業を進めていた。また、ご破算になった卸売業者と共同での販路拡大作戦に投入する商品の選別を開始していたという。
ケベック州サン・ジャン・シュール・リシュリューに住み、母親として医療保険業界で働くレベッカ・アスランさんは、自身が行ってきた国産品を探す取り組みをソーシャルメディアで披露している。
アスランさんはロイターに対し、最近になって子どもの紙おむつを、カナダの数少ないメーカーであるアービング・パーソナル・ケアの商品に切り替えたと話した。「私はこれまで紙おむつがどこで製造されているか考えもしなかったが、明らかにカナダ製紙おむつは入手が難しい。こうした買い物は私たちにとって大きな変化だ」と付け加えた。
アービング・パーソル・ケアは、国内各地の小売業者から販売量を増やしたいとの問い合わせを受けていると説明。事業運営担当副社長のジェーソン・マカリスター氏は「カナダで製造された唯一のブランド化された紙おむつとして、われわれの週当たりの出荷量は4倍になった」と胸を張った。
<進出計画白紙化も>
米カリフォルニア州における柑橘系果実の輸出事情に詳しい関係者は同じく3月上旬、カナダの小売業者が発注を取り消したとロイターに語った。
発酵飲料であるコンブチャの「シナジー」を販売し、米ロサンゼルスに本社を置くGT‘sリビング・フーズは、ウォルマート・カナダを含めたカナダの小売業者が、関税を巡る不透明感を理由に発注を減らしていると明らかにした。
米ペンシルベニア州の香水メーカー、ディメーター・フレグランシズは、年内に計画していたカナダ市場への進出を取りやめた。マーク・クレームズCEOは、カナダ国民の気持ちが米国製品から離れてしまっていると指摘。「市場進出は無駄な努力に思えるため、計画を単純に破棄した」と説明した。
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Nivedita Balu is a correspondent for Reuters based in Toronto, where she reports on Canadian banks and financial services. She previously covered U.S. tech, media and telecom companies, and consumer and retail companies in Bengaluru.
New York-based reporter covering U.S. consumer products and the companies that make them, and the role they play in the economy. Previously reported on corporate boards and distressed companies. Her work has included high-impact stories on CEO pay, Wall Street bubbles and retail bankruptcies.