米国債市場、利回り曲線スティープ化見込む賭けが加速-関税で波乱

トランプ米大統領が仕掛けた貿易戦争の激化を背景に長期の米国債から投資マネーが逃避する中、米国債市場で人気の賭けが好調だ。

  市場混乱時の資金避難先としての米国債の信認に陰りが見えており、先週は株式相場が乱高下する中で、長期金利が急上昇。イールドカーブのスティープ化を見込む賭けが加速した。

  30年債の2年債に対する利回り上乗せ幅(スプレッド)は9週連続で拡大。これはブルームバーグがデータ収集を開始した1992年以降では、過去に1回しか見られなかった動きだ。先週にはスプレッドは2022年以来の水準に達し、こうした動きを見越してポジションを取っていたダブルラインなどの資産運用会社に追い風となった。

  先週、長期債の魅力が薄れた背景には、トランプ関税で海外勢からの米国債需要が減退するとの臆測などがあった。議会で減税が審議されており、すでに膨張している米国の財政赤字がさらに膨らむ恐れがある。一方で、景気の先行き懸念が強まる中で米金融当局が近く利下げに踏み切るとの期待感から、短期債は長期債よりも堅調に推移している。

  ダブルラインは2年債と30年債の金利差がさらに拡大すると見込んでいる。

  同社のポートフォリオマネジャー、ビル・キャンベル氏は「長期的な要因を考慮すると、これは現時点で引き続き堅実なイールドカーブ・ポジショニングだ」と指摘した。

  先週の大規模な長期債売りには、他の要因も影響した。ヘッジファンドによるレバレッジ取引解消の臆測や、貿易戦争による見通し悪化で銀行が顧客の流動性ニーズに対応し債券を売却して現金を調達しているとの見方も浮上した。

  長期債の下落がさらに悪化した場合、米金融当局による介入が必要になり得るとの声もウォール街では聞かれた。ボストン連銀のコリンズ総裁は、必要であれば米金融当局は「間違いなく」市場の安定化を支援する準備があると英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)に語った。

  米金融当局が介入する可能性があるだけに、スティープ化に賭ける戦略は順風満帆とはいかない公算が大きい。

  次に投資家心理を試すのは、16日に実施される20年国債入札(130億ドル規模)だ。先週の10年債と30年債の入札は堅調で、市場を一時的に落ち着かせていた。

  また、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が16日に講演する。議長は今月初め、トランプ政権の関税措置に対しFRBは急いで反応しない考えを明示していた。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は11日、米国の関税政策と移民減少により、経済成長の鈍化と失業率の上昇、インフレ加速を予想していると述べた

  トレーダーの間では今のところ、米金融当局が急激な景気後退を回避するために、年末までに0.25ポイント利下げを3回実施すると見込まれている。

  ミシュラー・フィナンシャル・グループのマネジングディレクター、トム・ディガロマ氏は「今後3-6カ月は不安定な状況が続くだろう。市場の動きが急激になっていることから、リセッション(景気後退)が予想されている」と述べた。

原題:Bond Market’s Steepener Bet Gets Turbocharged Amid Tariff Mayhem(抜粋)

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