トランプ氏の看板公約、現実の壁に相次ぎ直面-中間選挙を前に停滞感
トランプ米大統領の野心的な2大公約、関税による米経済再構築とウクライナでの戦争終結は、現実の壁に突き当たり、行き詰まりを見せている。
トランプ氏が9月1日に期限を設定していたロシアのプーチン大統領とウクライナのゼレンスキー大統領による会談は、交渉の見通しさえ立っていない。 米連邦高裁はトランプ氏が世界各国・地域に発動した関税について、そのほとんどが大統領の権限を越えた違法行為だと判断し、審理を行うよう下級裁判所に差し戻した。
不法移民の送還を進める取り組みも司法判断に阻まれるなか、トランプ氏が任期1年目に掲げた主要公約は、不透明な道筋のまま秋を迎えている。来年の中間選挙を見据えて党内の基盤固めに動き始めたトランプ氏にとって、それが意味するところは大きい。
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関税
トランプ関税を巡り米連邦高裁は8月29日、米国際貿易裁判所が5月に下した「違法で無効」との判断を支持した。ただ、それが関税の影響を受けるあらゆる当事者に適用されるのか、それとも訴訟の当事者に限られるのかを下級裁判所で審理し直すよう命じた。
これにより、トランプ氏の関税措置が最終的に維持されるかどうかをめぐる不透明さが一層長引く可能性がある。最終的にトランプ氏の関税措置が違法とされれば、同氏が誇示してきた貿易協定は根底から覆ることになる。
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また、関税措置が無効となった場合には、トランプ氏の看板政策である3兆4000億ドル(約490兆円)規模の大型減税・歳出法案の財源根拠も失われる。トランプ氏は「MAGA(米国を再び偉大に)」キャンペーンの一環として、関税政策を通じて国内製造業の復活を導くと約束していた。
戦争
トランプ氏は2024年の選挙期間中、ロシアとウクライナの戦争を「初日に終わらせる」と繰り返し訴えていた。その根拠として、自ら「伝説的」とするディールメーキング能力と、プーチン氏との良好な関係を挙げていた。
大統領就任からの8カ月間、トランプ氏はゼレンスキー大統領を叱責する一方、プーチン大統領を説得して戦争終結の合意を取り付けようとしてきた。プーチン氏に対しては、アラスカでの米ロ首脳会談を用意するという厚遇を示した場面もあった。
プーチン氏は、領土交換による戦争終結に向けゼレンスキー氏との直接協議に応じるかの印象をトランプ氏に与えた。しかし、ゼレンスキー氏は領土割譲には一貫して反対の立場を崩していない。首脳会談後まもなく、ロシア当局者は交渉の予定はないと表明した。
トランプ氏はプーチン氏に対し、2週間以内に協議に応じるよう期限を設けた。その期限は1日に切れる。こうした中、ロシアは最近もウクライナに無人機とミサイルによる大規模攻撃を行っている。
フランスのマクロン大統領は8月29日、ドイツのメルツ首相との共同会見で「今回もまた、プーチン大統領がトランプ大統領を手玉に取ったことを意味する」と述べた。欧州首脳らは、トランプ氏による紛争解決の試みにいら立ちを募らせている。
トランプ氏は、プーチン氏とゼレンスキー氏との三者会談を、長年渇望してきたノーベル平和賞獲得につなげる思惑だったとみられる。
ホワイトハウスはコメント要請に現時点で応じていない。
FRB
トランプ氏は、住宅ローン不正疑惑を理由にクック連邦準備制度理事会(FRB)理事を解任しようとしている。利下げ方針で自身に従う「忠誠派」をFRBに送り込もうとする計画の一環だ。しかし、クック氏は提訴しており、ホワイトハウスとFRBの対立は新たな段階に入った。
ワシントンの連邦地裁で8月29日に開かれた緊急審理では、クック理事が求めた解任の仮差し止めについて、判事が判断を示さないまま審理を終えた。最終的には最高裁まで持ち込まれる可能性が高いとみられる。クック理事の解任をめぐる取り組みが頓挫すれば、トランプ氏にとっては新たな痛手となる可能性がある。
原題:Trump Progress on Campaign Vows Stalls Ahead of Midterm Season(抜粋)