コメダ「おむすび」が握る海外成長 まず東京に専門店

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コメダホールディングス(HD)は2月、新業態のおむすび専門店を東京都と埼玉県で計3店舗開く。21日、東京都内で新事業説明会を開いた。「名古屋モーニング」を代表するコメダがおむすびに目を付けたのは、課題である海外市場攻略の切り札にしたいからだ。ウナギや名古屋コーチンを使った「名古屋流おむすび」で、日本食ブームに沸く海外を握る。

21日、新業態「おむすび 米屋の太郎」の第1号店(東京・新宿)で22日の開店を前に顧客が参加した説明会を開いた。

群馬県高崎市から訪れた自営業の60代女性はエビの天むすをほおばり「とてもおいしい。朝ご飯にまた食べたい」と話した。米屋の太郎の井上直樹ブランドマネージャーは「おむすびはターゲットを絞らない。これからも需要は高まる」と強調した。

米屋の太郎では注文後につくりたてのおむすびを提供するほか、味噌ヒレカツやウナギといった愛知名物の具材を充実させた。価格は150〜580円と幅広い価格帯で提供する。

おむすび専門店は2月中に埼玉県さいたま市と川口市でも開く。新型コロナウイルス禍の持ち帰り店舗などを契機に近年、おむすびブームが広がりつつある。グルメサイト「食べログ」を運営するカカクコムによると、同サイトに登録されているおむすび店の数は2025年2月時点で2155店と、前年同月から15%増えた。

コメダは展開する和風喫茶「おかげ庵」のモーニングで提供するおむすびが好調なことから着想し、同業態の姉妹ブランドとして米屋の太郎を立ち上げたという。コメダ珈琲店の「コメ」は創業者の実家が米屋を営んでいたことに由来するとされ、同社はコメに由縁がある。

コメダHDがおむすび専門店を出店するのは苦戦する海外事業強化への布石だ。コメダHDは喫茶店「コメダ珈琲店」を中心に世界で1071店舗(25年1月末時点)を展開しているが、うち海外店舗は48店舗と5%に満たない。売り上げも国内が大半を占めると見られる。

コメダHDは26年2月期までに海外店舗を80店に増やす目標を掲げており、シンガポールのカフェを買収する計画を進めるなど海外展開を加速する。

今後は海外のコメダ珈琲店でおむすびを提供する構想で、「日本の喫茶店」としてのブランド構築を狙う。すでにインドネシアなどのコメダ珈琲店ではおにぎりを提供しているといい、20〜40代の女性を中心に人気を集めているという。

いちよし経済研究所の鮫島誠一郎チーフアナリストは「アジアでは米スターバックスが強い。コメダが海外事業を成功させるには、まずブランディングが必要だ」と説明する。

国内勢のおにぎり業態ではイワイ(東京・品川)が運営する「おむすび権米衛」が米国やフランス、バローHDの「にぎりたて」がタイにそれぞれ進出している。

岩井コスモ証券の清水範一シニアアナリストは「人口が減少傾向にある国内では店舗を増やすのは難しく、高い成長が見込めない」と指摘する。

主力業態であるコメダ珈琲店に依存した経営からの脱却も課題だ。おかげ庵(14店舗)の出店強化を掲げており、米屋の太郎との併設出店も想定する。コメダの杉野正貴取締役は「(同社の)セカンドエンジンとして、おかげ庵を強化する」と説明する。

新宿とさいたま市で開く店は、おかげ庵に併設し、グループで展開する業態との相互送客や、顧客層の拡大を狙う。コメダ珈琲店のアプリをおかげ庵や米屋の太郎で利用できるようにすることも検討する。

おにぎり専門店はコーヒー店と比べて小スペースで出店できるメリットがある。米屋の太郎に必要な面積は約30平方メートルほどと、コメダ珈琲店の3分の1程度だ。同様に小規模な立地にも出店できるゼリー飲料の持ち帰り専門店「ジェリコ堂」も立ち上げており、4月には名古屋市で開店する予定だ。

一事業に頼る外食チェーンの経営は原料価格などの事業環境の変化の影響を受けやすい。吉野家HDがラーメン店のM&A(合併・買収)を加速させるなど、各社は相次いで事業の多角化を進めている。

井上ブランドマネージャーは「姉妹ブランドのおかげ庵とのシナジーを創出し、長く続くブランドにしたい」と説明する。おむすび専門店は小規模チェーンや個人店が多く、大手飲食店グループが手がけるのは珍しい。事業の成功にはおむすびブームを一過性にしない、顧客をつなぎとめる工夫が欠かせない。

(山名直花)

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