「Pixel 10 Pro XL」のコンピューテショナルカメラはどのくらい進化した? 撮ってみて分かったこと:荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ(1/3 ページ)
各社共に、フラグシップスマートフォンはそのブランド(メーカー)の特徴、あるいは個性をガンガンに押し出してくるようになってるから面白い。
個性的なのはXiaomiのLeica(ライカ)との協業っぷりだったり、ソニーがXperiaで一眼カメラ「αシリーズ」の技術やテイストを盛り込んだカメラらしさだったりするのだけど、「じゃあGoogleのPixelはどうなの?」というと、初期の頃からコンピュテーショナルフォトグラフィーを標榜してたわけで、その先にあったのがAIの活用だったと思っていいのである。Pixelカメラの特徴は“AI大活用”にあるのだ。
皆既月食が各地で観測されたとき、たまたま手元に「Pixel 10 Pro XL」があったので、ベランダから欠けかけた月を撮ってみたのである。
何しろ、今回は「超解像ズームPro」を搭載したおかげで最高で「100倍ズーム」まで可能なのだ。さすがに100倍(2400mm相当!)ともなると、月を真ん中に捉えるのがめちゃ難しいのだけど、何とか撮影に成功。
「超解像ズームPro」をかけてない状態だと、以下の写真のように「普通にデジタルズームで撮った、モヤっとした月」になってしまうのだ。
素晴らしいことに、超解像ズームProではオリジナル(未処理の)写真と超解像ズームProをかけた写真の両方を保存してくれるので、こうして比較できるのである。
流れとしては、まずオリジナルを撮ってから、バックグラウンドでAI処理をかけて超解像ズームProの映像を生成するので、画像を得るまでちょっと時間がかかる(&真夏にやりまくるとボディーが熱くなる)。でも、これはすごい。今までのデジタルズームとは全然違う。
なにをしているかというと、もやもやの画像を元に生成AIが仕事して補完してるのである。
というわけで、いきなり100倍ズームの話からはじめてしまったけど、もうちょっと続くのでご勘弁あれ。
超解像ズームProを使う場合、オンデバイス処理に使うためのAIモデルを事前にダウンロードしておく必要がある。この仕組みからすると、超解像ズームProに次ぐ、生成AIを活用した別のモデルも用意されるかも……だ。
超解像ズームProは、どの時点で働き始めるか?
Pixel 10 Pro/Pro XL(以下まとめた「Pixel 10 Pro」)のアウトカメラはトリプル構成なのだが、望遠カメラは広角(標準)カメラ比で5倍(5x)ズームとなっていて、センサーは約5000万画素だ。35mm判換算だと110mmとなる。
中央部の2500万画素分を切り出せば10倍(10x)相当になるので、カメラアプリ上は標準で「10x」まで表示されている。
ここからさらに倍率を上げると、「30x」を超えた時点で超解像ズームProがスタンバイする。ということで、30x~100xが超解像ズームProの“出番”なのだ。
「生成AIは使いたくない」という人は、超解像ズームProのモデルをダウンロードしないか、常に30x未満の倍率で使えばいい。
次は「月」のような生成AIの効果を発揮しやすそうな被写体ではなく、動物で試してみたい。
ちょっと遠くにネコがいたので、50xの望遠で顔のアップを狙ってみたのだ(さすがに100倍だと強力すぎた)。超解像ズームProの前(オリジナル)と後を続けてどうぞ。
オリジナルの方は「いかにもデジタルズームしました!」って写りだけど、超解像ズームProの方はしっかりネコの顔になってる。モヤっと潰れてる白い毛の部分も、それっぽくなってる。これは予想以上なのだった。
その他いろいろ試してみたけど、建物や風景は秀逸。人物は……無理しない方向のようだ。めっちゃ遠くにいる人の顔を、生成AIが勝手に作るようなことはしないのである。
文字は……かなり頑張ってる。以下の例はかなりうまく行ったパターンだけど、部分的には失敗することもある。下がいかにもデジタルズームかけたっぽい元の画像で、上が超解像ズームProの画像。細かい所まで見るとあやしかったりするけど、ちゃんと読める文字にはなってる。
で、次はお約束のガスタンクを撮ってみるのである。超解像ズームProから離れて、0.5xから100xまで一気にいく。
アウトカメラユニットの基本性能自体は、原則として前モデルと同じだ。
0.5xの超広角カメラは約4800万画素センサーを採用し、35mm換算で12mm相当でF値はF1,7となる。等倍(1x)の広角カメラは先述の通り約5000万画素のセンサーで、35mm判換算で24mm相当、F値はF1.7となる。そして5xの望遠カメラは約4800万画素センサーを採用し、35mm判換算で110mm相当、F値はF2.8となる。
全て四捨五入すると、センサーは全て「5000万画素」だけど、センサーのサイズは広角カメラだけ大きめ。これは昨今のハイエンドスマホのトレンドでもある。
ちなみに、さっきの超解像ズームProで撮った文字は、このガスタンク手前にあるユニットに書いてある注意事項である。
さらに5xと10xでも撮ってみよう。
さらにズーム倍率を上げるていくと、30xで超解像ズームProが働くようになる。ギリギリ29xだと働かない。
両者を撮り比べてみたけど、違いは微妙だ。ただ、小さな文字があるとAIに休んでもらった方が自然な写りになることもある。
そして2400mm相当になる100xまで一気に撮っていこう。オリジナルと超解像ズームProを続けてどうぞ。ボルトとかケーブルとか、元画像ではもやもやしててナニガナンダカって部分も、ちゃんとAIが判断して作ってる。
すごいよね。あくまでも生成AIが元のもやもやっとした画像をベースにAIが生成してるので、うまくいかないこともあるし、生成AIが作った画像をどこまで許容するかという問題もあるけど、かなりの“でき”だ。
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AI関連でいうと、複数撮った集合写真からベストな表情のものを組み合わせてくれる「オートベストテイク」という機能も面白いけれど、それは残念ながら複数人の被写体を用意できなくて試せず。
Pixel 9シリーズからある「一緒に写る」機能も面白いかな。カメラマンが自分が後から入る位置を空けておいてまず1枚撮り、続いてそこに自分が入ってもう1枚撮ってもらったら、これらを合成するというもの。
これ、やろうと思えば同じ人を2回撮って遊ぶこともできるので、楽しめます。
これもAIを駆使するので撮影後の合成にちょっと時間がかかるけど、面白いのでぜひ。
と、基本性能は前モデルと変わらないこともあってAI絡みのGoogleらしいところを追求してみた。
それだけではアレなので、最後に普通の作例もいくつかいきます、インカメラのものを含めて。
夜景は「夜景モード」を使用してみた。無理にシャドウ部を持ち上げた不自然な夜景ではなく、暗いところは暗く、明るい所は白飛びせずというバランスの撮れた映りにしてくれる。
被写体にググっと近づくと、オートマクロが働く。
という感じである。基本的な画質についてはもう特に得手不得手も感じず、問題ないのでさらっとすませてしまった。
何より、超解像ズームProとカメラコーチが面白かったのでそこを重点的にレビューしてしまったわけである。
Pixel 10 Pro XLをレビューした後、「Pixel 10」も使う機会があったので追記する。
Pixel 10も、アウトカメラは超広角/広角/5倍望遠のトリプル構成で、カメラユニット部の“見た目”もほぼ同じ。カメラコーチや「一緒に写る」などの機能は同様に使える。
ただし、全てのカメラの“中身”がProからワンランク落ちているので、その点は要注意。
まず、超広角カメラは約1300万画素センサーで、固定フォーカス。画角もProと比べると少し狭い。メイン(広角)カメラは約4800万画素で、センサーのサイズもProよりちょっと小さい。
まあ、明るい場所では画質にそれほど差は出ないけど、暗所撮影時では条件によっては違いが出るかな。
望遠カメラは同じ5倍ズームだけど、センサーが約1080万画素と画素数が少ない上にサイズも小さめ。3つのカメラの中で一番差が出やすい。
Pixel 10 Proは超解像ズームProを使うと最大100倍までデジタルズームできるが、Pixel 10は最高でも20倍止まりだ。
センサーサイズやレンズ性能といったカメラ自体に違いはあっても、最終的な画像はデジタル処理を施されて出てくるので、拡大して見比べない限り、そこまでの差は感じない。ただし、望遠カメラを多く使う人はProモデルにした方がいいことは確かだ。
最後に1つ。Pixel 10シリーズは、ワイヤレス充電において「Qi2」に対応した。これに伴い、充電位置を決めるための磁石が装備されたのだ。
これ、iPhoneの「MagSafe」と同じなので、iPhone用のMagSafeグッズをそのまま使えるのである。例えば、テーブル三脚になるMOFTの「七変化マルチスタンド」をこんな風につけられるので、端末を固定して動画を撮る時やセルフタイマーで撮る時にすごく便利。
かくして非常に安心して使えるカメラに、プラスαとしてGoogleらしいAIがついてきたのがPixel 10 Proといっていいと思う。
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