アップルの売上高、市場予想上回る-関税前の駆け込み需要が寄与
米アップルが7月31日に発表した4-6月(第3四半期)決算では、売上高が四半期としては約3年ぶりの高い伸び率を記録し、ウォール街の予想を大きく上回った。スマートフォン「iPhone」と中国市場での需要が回復したことが追い風となった。
発表資料によると、4-6月期の売上高は9.6%増の940億ドル(約14兆円)となった。ブルームバーグが集計したアナリスト予想平均は893億ドルだった。
アップルは7-9月期(第4四半期)の売上高について、1桁台半ばから後半の伸び率を見込んでいると説明。アナリスト予想の3%増を上回る見通しを示した。
ティム・クック最高経営責任者(CEO)は決算説明会で、「大中華圏を含む多くの新興国市場をはじめ、世界の大半の地域で成長が加速した」と述べた。
米国の関税はアップルの事業コストを押し上げているが、4-6月期には逆に追い風となった。価格上昇を見越した消費者が駆け込みで購入したためだ。ただ、関税の効果は約10%の増収率のうち1ポイントにとどまったとクックCEOは述べた。
中国市場では、地元メーカーの製品が消費者の間に浸透する中でアップルが巻き返しを図っている。サービス部門も明るい材料となり、ウォール街の予想を上回った。
決算発表後に同社の株価は時間外取引で約2%上昇した。
アップルは以前、4-6月期に関税による9億ドルの逆風があると見込み、売上高の伸び率が1桁台前半から半ばとの見通しを示していた。31日の発表によると、実際の関税の影響は8億ドルだった。7-9月期には11億ドルのコスト増になる見通しだという。
4-6月期の1株利益は1.57ドルと、アナリスト予想の1.43ドルを上回った。中国市場での売上高は154億ドルと、前年同期比で4.4%増加した。ウォール街の予想は152億ドルだった。
iPhoneの売上高は、同四半期に446億ドルとなり、予想の401億ドルを上回った。関税による駆け込み需要に加え、2月に投入した低価格モデルの新製品「16e」が販売を押し上げた。
アップルは9月に次世代iPhoneを発表する見通しで、新機種は通常、7-9月(第4四半期)の最終週に発売される。
サービス部門は引き続き最大の成長源となっており、4-6月期の売上高は13%増の274億ドル。市場予想の268億ドルを上回った。
一方で、サービス事業は複数のリスクも抱える。各国の規制当局はアプリストア「App Store」の規約変更を求めており、ソフトウエアやサブスクリプションの収入減少につながる可能性がある。米司法省は、グーグルの検索エンジンをiPhoneでデフォルトに設定する契約の見直しに動いている。
また、人工知能(AI)の分野では、アップルは競合に後れを取っている。ブルームバーグの報道によれば、同社は生成AIを支える基盤技術である大規模言語モデル(LLM)の外部委託も検討している。
クックCEOは決算説明会で、アップルがAI分野への投資を拡大していると述べた一方、LLMが汎用(はんよう)品化するかどうかについては自社の戦略を明かすことになるとしてコメントを控えた。この発言は、アップルが外部のAI技術を取り入れる方向に傾いている可能性を示唆する。
クック氏はアップルのロードマップを加速させるのであれば、買収にも前向きな姿勢を示した。今年に入り既に小規模企業7社を買収済みだとした上で、「企業の規模にこだわるつもりはない」とも語り、より大規模な企業の合併・買収(M&A)に含みを持たせた。
4-6月期の製品別売上高は、パソコン「Mac」シリーズが80億5000万ドルに増加し、市場予想の73億ドルを上回った。3月上旬に投入した新型「MacBook Air」と「Mac Studio」が業績を押し上げた。
一方、タブレット端末「iPad」の売上高は8.1%減の65億8000万ドルで、市場予想(71億ドル)に届かなかった。前年同期は高価格帯の「iPad Pro」が発売された時期で、比較のハードルが高かった。
ワイヤレスイヤホン「AirPods」やスマートウオッチなどを含むウエアラブル・ホーム・アクセサリー部門は低迷が続き、売上高は8.6%減の74億ドルにとどまった。市場予想は78億ドルだった。
原題:Apple Growth Rebounds on Strength of iPhone 16 Line, China (1) (抜粋)