米最高裁「創作者は人間のみ」との判断を確定──AI作品の著作権をめぐる挑戦に終止符
米連邦最高裁判所は3日、人工知能(AI)が生成したアート作品に著作権保護を認めるべきかどうかをめぐる訴訟を審理しないと発表した。
この決定により、コンピューター科学者のスティーブン・ターラー(Stephen Thaler)が、自身のAIシステム「DABUS」が制作した作品に連邦著作権の保護を認めさせようと長年続けてきた試みは、事実上終結した。
2024年に『Art in America』に掲載されたターラーへのインタビュー記事の中で、彼は、DABUSをストレスやトラウマを経験しうる「原始的意識(proto-consciousness)」として捉えていると語っている。ターラーによれば、著作権の取得は金銭的利益の確保ではなく、AIモデルの主体性を認めることに主眼があったという。彼は、「DABUSは発明者なのか? それともアーティストなのか?」と自問し、こう述べている。
「わからない。断言はできない。より“知覚を持つ人工的存在”に近い。ただ、“人工”という部分さえ疑っている」
ターラーのこの風車に挑むような探求は、2018年、DABUSを用いた数多くの実験のひとつとして制作された作品《A Recent Entrance to Paradise》について、連邦著作権登録を申請したことから始まった。米著作権局は2022年、著作権の成立には人間の著作者が必要であるとして申請を却下した。
他の(失敗に終わった)AI生成作品の著作権取得の試みとは異なり、彼は自身に著作権を付与することを求めたわけでも、AIの補助を受けて自らが制作したと主張したわけでもなかった。むしろ彼は、《A Recent Entrance》はDABUSが独立して制作したものだと主張した。
彼は米著作権局による決定を不服として控訴したが、2023年、ワシントンの連邦判事は、人間による著作であることは「著作権の根幹的要件(a bedrock requirement)」であると判断。コロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所も昨年、この判断を支持している。さらにトランプ政権も、著作権は人間のみに帰属するとの立場を明確に示し、最高裁に対して本件を取り上げないよう求めていた。ロイター通信によれば、ターラーの弁護団は、この決定が創造産業におけるAI開発に「不可逆的かつ否定的な」影響を及ぼすと述べている。(翻訳:編集部)
from ARTnews
2. AI鑑定で「85.7%真作」──個人蔵カラヴァッジョ、世界的評価機関の判定に揺さぶり|個人が所有するカラヴァッジョの《リュート奏者》が、スイス拠点のAI鑑定会社によって「85.7%真作」判定された。本作をめぐっては、過去にメトロポリタン美術館とサザビーズが模写と評価してい【続きを読む】AIによって真作判定されたカラヴァッジョの《リュート奏者》。Photo: Wikimedia Commons
3. 贋作鑑定に保険が下りる時代が到来? 英テック企業が保険付き鑑定サービスをスタート|美術品の真贋鑑定に保険を付帯する画期的なサービスが登場した。科学分析とAIを組み合わせた鑑定結果が誤っていた場合、所有者の損失を保険でカバーできるという。【続きを読む】美術鑑定の「新たな可能性」に挑むArtDiscovery。Photo: Courtesy of ArtDsicovery
5. AIアート・オークションが1億円の快挙! 「アートにおけるAIの影響力が可視化された」|4000人近くのアーティストが中止を求めたクリスティーズのAIアート・オークション「Augumented Intelligence(拡張知能)」が終了した。オークションの入札者の約半数がミレニアム世代やZ世代で、総売上も予想を上回ったことから、クリスティーズのバイスプレジデントはAIの影響力が証明されたオークションだと語った。【続きを読む】レフィク・アナドル《Machine Hallucinations - ISS Dreams - A》 Photo: Courtesy of Christie's Images LTD 2025
7.サルバトール・ダリの未完映画がグーグルの最新動画生成AIでよみがえる! 予告編をラスベガスで公開|4月9日、グーグルが動画生成AIツールの最新バージョン「Veo 2」のデモを行った。AIによる超リアル、あるいは超現実的な映像を目にすることが多くなっているが、映画の予告編を使ったこのデモのシュールさは、その脚本からきているようだ。【続きを読む】グーグルの最新動画生成AIツールVeo 2を用いてサルバドール・ダリの未完の脚本を映画化した『Giraffes on Horseback Salad』予告編より。Photo Screenshot/Dali Museum and Goodby Silverstein & Partners
8. 「作品は限界や障害との対峙からはじまる」──ホー・ツーニェンが語る新作、そして生成AIへの期待|2024年に東京都現代美術館で個展が開かれ、太平洋戦争を振り返る「日本三部作」など、歴史や社会状況、文化の緻密なリサーチに基づく作品で知られるアーティスト、ホー・ツーニェン。その最新作が、香港の現代美術館M+の巨大LEDスクリーンで上映されている。香港映画の黄金期の作品を、AIを用いて「脱文脈化」したこの意欲作について、US版ARTnewsがインタビューを行った。【続きを読む】香港の現代美術館M+のファサードに映し出されたホー・ツーニェンの《Night Charades》(2025)。Photo: Courtesy of M+ and Art Basel, presented by UBS; Photo M+
9. 「AIは道具にすぎない」という思考の重すぎる代償──クリエイティブ業界が直面する本当の課題|AIをめぐる議論は、創造性よりも労働環境の問題へと移りつつある。アニメーターやCGIアーティストなど複数のクリエーターへの取材から、AIをめぐる創作現場の「真の課題」を考察する。【続きを読む】Photo: CFOTO/Future Publishing via Getty Images
10. 重視すべきはテクノロジーよりシステム。「AIアート」懐疑派キュレーターが新ギャラリーを開設|ニューヨーク・マンハッタンに、異彩を放つギャラリーがオープンした。機械学習やアルゴリズム、スキャナーなどのツールを用いた作品を制作するアーティストを扱いながら、「AIアート」という表現を拒絶するこのギャラリーの創設者に、その意図と目標を聞いた。【続きを読む】アダム・ヘフト・バーニンガー Photo: Heft
11. 炭化した2000年前の巻物の著者と題名が判明! 大学生らがAI解析を駆使した成果に学者もびっくり|古代都市ヘルクラネウムの遺跡から発掘された焼け焦げたパピルス文書の1つが、研究者たちによってエピクロス派哲学者フィロデモスによる『悪徳について』の一部であることが特定された。これはヴェスヴィオ・チャレンジと題されたコンペの一環であり、タイトルと著者の判読に成功した研究者たちには、約860万円の賞金が贈られた。【続きを読む】解読が進められているヘルクラネウムの巻物「PHerc. 172」。Photo: Courtesy of The Vesuvius Challenge
13. グーグルが碑文復元ツール「Aeneas」を発表! 古代人が遺した「巨大なジグソーパズル」解読に期待|古代ローマの人々が残した碑文は毎年およそ1500点が発見されているが、多くは欠損が激しく、内容の解読が困難とされている。こうした課題を解決するため、グーグル傘下のDeepMindが、欠損部分の補完や作成年代を推定するAI「Aeneas(アイネイアス)」を発表した。【続きを読む】修復された青銅製の軍事卒業証書。Photo: Courtesy of the Metropolitan Museum of Art
14. 死海文書の新事実がAI技術で明らかに! 専門家は将来の実用化に期待|写本に関する近代最大の発見と言われている「死海文書」。その解読が進められる中、オランダ・フローニンゲン大学の研究者たちはAIと炭素年代測定の2つのツールを使った調査により、新事実を明らかにした。【続きを読む】2025年2月26日、カリフォルニア州シミー・バレーのロナルド・レーガン大統領図書館で展示された死海文書。Photo: MediaNews Group via Getty Images