インドネシア財務相解任で市場動揺、財政巡る懸念高まる
スリ・ムルヤニ氏はインドネシアで最も長く財務相を務めた1人で、世界の投資家から高く評価されていた。
同氏の8日の解任を受け、同日のインドネシアルピアは1%超下落し、中央銀行が通貨安定化に向けた市場介入に踏み切った。ルピアは対米ドルで一時1万6488ルピア。
テリマーの新興国株式・地政学ストラテジスト、ハスナイン・マリク氏は「ムルヤニ氏は慎重な財政政策の守護者だった。彼女の退任は制約のない、そして抗議活動を受けて圧力にさらされているプラボウォ氏の下で、財政赤字が拡大することへの懸念を招くだろう」と語った。
インドネシアでは政府への抗議デモが2週間続いている。
プラボウォ氏はスリ・ムルヤニ氏の後任にエコノミスト出身で預金保険公社会長のプルバヤ・ユディ・サデワ氏を起用した。
ナティシスのアジア新興国担当シニアエコノミスト、トリン・グエン氏は「問題は新財務相が赤字を拡大させることなく、どのようにして国内総生産(GDP)の1.5%に相当する無償給食プログラムを実施し、国防などの分野への支出を増やすかだ。投資家にとって、これは重要な関心事だ」と語った。
フェデレーテッド・ヘルメスの新興国債券担当リード・ポートフォリオマネジャー、ジェイソン・デ・ビト氏は「インドネシアは長年にわたり非常に財政規律が保たれており、それが評価されてきた。そのため、より積極的な財政赤字への移行は、投資家の懸念材料となる可能性がある」と述べた。
海外市場のインドネシア債は下落。スリ・ムルヤニ氏の解任で海外勢が資金を引き揚げるかに注目が集まっている。
海外勢によるインドネシア国債の保有比率は、2020年12月には約25%だったが、現在は14%弱に低下している。
中銀が8日発表した8月末の外貨準備高は1507億ドルで、7月末の1520億ドルから減少したものの、通貨防衛のための十分な資金があることを示唆している。
中銀の金融管理部門トップ、エルウィン・グナワン・フタペア氏は「中銀は為替レートの安定とルピアの十分な流動性を維持するため、市場への関与を継続する」と述べた。
BNYインベストメント・インスティテュートのアジアマクロ戦略トップ、アニンタ・ミトラ氏は「内閣改造に伴い、歳出や財源がどのように変わるのか、市場が確信を持てるまでルピアは打撃を受ける可能性がある」と指摘。
「市場参加者は政策の方向性について確実性を求めており、財政運営で安定した舵取りを期待している」と述べた。
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