アングル:日銀利上げで預金に変化、問われる地銀のビジネス展開
[東京 21日 ロイター] - 日銀が利上げを継続する中で、預金が動き始めた。人口減に直面する地方銀行では預金動向に差が出てきており、今後の金利上昇局面でのさらなる変動に神経質になっている。日銀では、預金シフトが金融システム不安に発展するリスクは低いものの、預金の少ない銀行は預金・貸出という伝統的な銀行ビジネスからの転換を模索する必要があるとの声が出ている。
<預金増やすネット銀、明暗分かれる地銀>
日銀が12日に発表した1月のマネーストック統計では、定期預金を含む「準通貨」の平均残高が490兆6000億円と前月の489兆1000億円から1兆5000億円増えた。調査統計局は、増加分は「ほぼ定期預金とみられる」とし、1月の追加利上げを受け金利に敏感な法人の預金が定期預金にシフトしたとみている。
<預金は「運用の原資」に、動向を注視>
地銀各行は、今後の日銀の利上げを見込んで、預金動向に目を光らせている。
各行ともすでに預金獲得策に打って出ている。力点を置くのは若年層へのアピールで、千葉銀の「ちばぎんアプリ」は担当者によると、同行の口座を持つ10─20代の9割が導入しているという。群馬銀は新生児からの預金口座開設を促すキャンペーンを3月に始める方向で検討中だ。
めぶきFGでは、傘下の常陽銀行が昨年12月、相続した資金をターゲットに定期預金金利に6カ月間0.5%の金利を上乗せするキャンペーンを始めた。
昨年12月末の個人預金の残高は、めぶきFG(常陽銀と足利銀の合算)も群馬銀も前年比1%増だった。
<預金シフトと金融システム>
市場では、日銀が利上げを継続する中で金融機関の淘汰が進んでいくと予想する声も出ている。
日本資産運用基盤グループの直井光太郎執行役員は「政策金利が1%に到達すれば、規模の小さい金融機関の中で経営基盤が揺らぐところが出てくるのではないか」と警戒感を示す。日銀が利上げを進めても、貸出金利が追い付かず預金金利ばかりが上がって赤字に転落する金融機関が増えてくるのではないかとみている。
日本総研の大嶋秀雄主任研究員は「今後、業況が悪い金融機関からはじわじわと預金が抜け出ていくことはあるのではないか」と指摘。「業績が悪い金融機関は貸し出しなどで収益を拡大して業績を立て直さなければいけないが、その原資となる預金が調達できず、悪循環に陥ってしまうリスクはある」という。
日銀では、預金が減る地銀があっても金融システム不安に発展する可能性は低いとの見方が多い。預金の多寡が銀行の信用力や健全性の度合いを示すとの考え方とは一線を画し、預金量が少なければ預金・貸出中心のビジネスモデルから転換し、地元企業へのコンサルティングの充実など地域のニーズに沿ったサービスを構築していくべきだとする。
ただ、収益を確保していけるか、人手不足の中で銀行が人材を確保できるのかが課題だとの見方も日銀内にはある。来年度の日銀考査では、利上げ開始に伴う預金・貸出ビジネスの態勢やリスク管理、各行のビジネスモデルなどを重点的に検証していくとみられる。
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