米と豪州、重要鉱物とレアアースで署名-日本も一部関与と豪首相

トランプ米大統領は20日、訪米中のオーストラリアのアルバニージー首相との間で、米国によるレアアース(希土類)やその他の重要鉱物へのアクセス拡大に向けた合意書に署名した。中国によるサプライチェーン支配に対抗する取り組みの一環となる。

  両政府は電気自動車(EV)や半導体、戦闘機などの先端技術で使用される資源の生産拡大を目的に、オーストラリア国内の複数の鉱山・加工プロジェクトに共同出資する方針だ。アルバニージー氏はホワイトハウスでの首脳会談で、85億ドル(約1兆2850億円)規模の「パイプラインをすぐに稼働できる状態にある」と述べた。

トランプ大統領(右)とアルバニージー首相(10月20日、首都ワシントン)

  トランプ氏は「今から約1年後には、どう扱えばいいか分からなくなるほど多くの重要鉱物とレアアースを手にすることになるだろう」と話した。

  トランプ政権の通商攻勢に対抗して中国がレアアースの輸出制限を発動して以降、米中間でレアアースを巡る対立が続いている。その後、中国はこれらの制限をさらに拡大した。

  供給が一段と逼迫(ひっぱく)する可能性が高まる中、代替生産体制の構築を急ぐ米国の動きは勢いを増している。ただ、業界幹部やアナリストは、広範な鉱山・精製施設のネットワークを置き換えるには時間がかかると警鐘を鳴らしている。

  両首脳は、今回の合意にはレアアースやその他の重要鉱物のオーストラリア国内での加工が含まれると表明。アルバニージー氏は、オーストラリアにはこうした取り組みを拡大する「能力」があると語った。

  豪首相府が公表した合意文書によれば、米国とオーストラリアは「不公正貿易慣行」から自国市場を守ることを約束し、「価格下限やそれに類する措置」を含む貿易基準の採用を通じて対応する方針を明記した。

  米戦略国際問題研究所(CSIS)で重要鉱物分野を担当するディレクターのグレースリン・バスカラン氏は電話取材に対し、「これは西側主要国同士としては、これまでで最も重要な2国間の鉱物協力だ」とコメント。「今回の発表は、米国が重要鉱物の課題に単独で取り組もうとしていないことを明確に示している。米国は適切なパートナーを見つけようとしている」と解説した。

  この合意を受け、21日のオーストラリア市場ではレアアース・重要鉱物関連株が急伸した。アルバニージー氏によると、米国とオーストラリアは今後半年間にそれぞれ10億ドル余りを初期プロジェクトに拠出し、その後も両国で追加プロジェクトを実施する予定という。資金提供を行う主体については、合意文書には詳細が記されていなかった。

  最近の輸出規制導入前から、中国はすでにガリウム、ゲルマニウム、アンチモンなどの重要原料の供給に制限を設けていた。

  ホワイトハウスによれば、米国防総省は今回の合意の一環として、ウエスタンオーストラリア州で計画されているアルコア双日による年産100トン規模のガリウム精製所の建設資金を支援する。また、米輸出入銀行は、重要鉱物関連プロジェクト向けに22億ドル超の融資を対象とした意向表明書(LOI)を発行する。

  今回の会談は、トランプ氏の返り咲き後、アルバニージー氏がホワイトハウスを訪問する初めての機会となった。アルバニージー氏は、自国の豊富な鉱物資源をてこに米国との関係強化を図る考えだ。中国によるレアアース輸出制限は世界経済に動揺をもたらしており、ベッセント米財務長官は先週、オーストラリアを含む同盟国が協調対応を協議していると明らかにした。

  オーストラリアは世界第4位のレアアース埋蔵量を有しており、半導体や防衛技術、再生可能エネルギーなどの産業に不可欠な供給源として、中国に代わる有力な選択肢となることを長年目指してきた。また、同国にはライナス・レアアースを通じて、中国以外で唯一の「重希土類」生産拠点もある。

関連記事:トランプ米大統領、AUKUSへの支持表明-「全速力で前進」と強調

トランプ米大統領とオーストラリアのアルバニージー首相が合意書に署名

原題:Trump Makes Rare Earths Deal With Australia to Fight China (4)(抜粋)

関連記事: