政策金利引き上げ、ほふく前進的なアプローチが重要=野口日銀委員

 5月22日、日銀の野口旭審議委員は国債買い入れについて、昨年7月に決めた2026年3月までの現行計画は「大きく変更する必要性は感じない」とする一方、新たに決める26年4月以降の計画については「より長期的な視点から検討する必要がある」と述べた。写真は1月、都内の日銀本店前で撮影(2025年 ロイター/Issei Kato)

[宮崎市 22日 ロイター] - 日銀の野口旭審議委員は22日、今後の金融政策の調整においては「ほふく前進的なアプローチが重要」と述べた。政策金利を1段階引き上げるごとに「相応の時間をかけて」経済への影響を確認し、さらにその時々の上下リスクを「十分に点検した後に次の利上げを決める」方法が望ましいとの考えを示した。

同日、宮崎市で行った金融経済懇談会であいさつした。

野口委員は、トランプ米政権が打ち出した新たな関税政策が「想定外の強度で進展した」と指摘、「海外発の下方リスクは急速に高まっている」と述べた。その上で、今後の政策運営に必要なのは、拡大しつつある海外リスクをしっかり見据えつつも、状況の進展を冷静に見極めるような「慎重な楽観論」ではないかとも話した。

野口委員は政策金利の終着点であるターミナルレートについて「中立金利の推計などから決め打ちするようなやり方はとらない」と述べた。中立金利の推計はターミナルレートのおおまかな目途をつける以上の役には立たず、政策金利の終着点は「その時点の経済状況とりわけ物価動向から判断する以外にはない」と述べた。

<来年4月以降の国債買い入れ、長期的な視点で検討>

国債買い入れについて、昨年7月に決めた2026年3月までの現行計画は「大きく変更する必要性は感じない」とする一方、新たに決める26年4月以降の計画については「より長期的な視点から検討する必要がある」と述べた。バランスシートの縮小は十分な時間をかけて進めていくことが可能であり、それが市場の安定にとっても望ましいと話した。

野口委員は、現在は政策金利が日銀当座預金への付利を通じて設定されており「政策運営はバランスシートからは独立している」と指摘。仮に国債買い入れ減額の多寡によって金融引き締めや緩和効果が生じたとしても、「それは短期市場金利の操作によって調整されるべきものだ」と話した。

日銀は、金利の急上昇など例外的な状況が生じれば国債の買い入れ額を増やすなど機動的な対応に出る構え。ただ、3月以降足元までの金利上昇局面では静観を貫いている。野口委員は、例外的な措置は「あくまでも市場に無秩序なかく乱が生じた場合に限定される」とし、3月に日本の10年金利が急上昇したが「急激ではあってもかく乱的とは言えなかった」と語った。

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