レイプで一審有罪の被告が控訴、刑期延長に ペリコさんめぐる裁判

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画像説明, ペリコさんは、自分へのレイプ事件で自分が「唯一の被害者」だと第二審で主張した。写真は南仏ニームの裁判所に入るペリコさん

南仏ニームの裁判所は9日、ジゼル・ペリコさん(72)をレイプした罪で有罪判決を受けた複数の被告のうち、一人だけ第二審に臨んだ男性に対し、刑期を1年延長する判決を言い渡した。ペリコさんに対する事件では、元夫のドミニク・ぺリコ受刑者(加重レイプ罪で禁錮20年)が薬でぺリコさんを意識不明にし、インターネットで募集した大勢の男性たちにレイプさせる犯行を10年以上にわたり繰り返していた。ドミニク受刑者に加え、レイプに加担した50人に被告も有罪となった。

フサメッティン・ドガン被告(44)は第一審で無罪を主張したが、法廷では、動かないペリコさんに被告が性器に挿入する様子を映した、生々しい映像が提示された。

ニーム控訴裁判所はあらためて被告の主張を退け、一審判決による禁錮9年の刑期を10年に延長した。ドガン被告は昨年12月、他の男性50人と共に加重強姦罪などで有罪判決を受けていた。

第二審でドガン被告は、自分もドミニク・ペリコ受刑者の「わなにはまった」被害者だと主張。それに対してドミニク・シエ検察官は、被告が女性の人間性を否定する「大々的な破壊行為」について「責任を取ろうとしなかった」として、禁錮12年を求刑していた。

ドガン被告は昨年の裁判前に勾留されたものの、判決以降は刑務所に収監されていなかった。

事件について警察は、ドミニク受刑者が犯行を撮影した映像を手がかりに、ペリコさんをレイプした男たちを特定することができた。

昨年の一審判決は、51人の男たちにさまざまな量刑の刑期を言い渡した。うち17人は控訴を申し立てたものの、すぐに取り下げた。トルコ生まれで、既婚者で子供のいるドガン被告だけが、実際に第二審に臨んだ。

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画像説明, ドガン被告は自分も被害者だと主張し、レイプ罪については否認した

ドガン被告を含めて昨年12月に有罪判決を受けた多くの被告たちは、ペリコさんが自分の意思に反して夫に薬物を投与されていたとは気づいていなかったと主張。そのため、自分たちの行為はレイプにあたらないと、無罪を主張した。

ニーム控訴裁での審理は昨年の第一審とは異なり、一般市民9人からなる陪審団と職業裁判官3人が審理を担当した。

控訴審では第一審での証拠が再び提示された。その中には、ペリコさんが意識を失っていびきをかき、レイプされても反応しない様子が映った映像も含まれていた。

それでもドガン被告は再び、レイプするつもりはなかったと主張。ペリコさんが夫の被害者であることは認めながらも、「私は性行為をしたが、誰もレイプしていない」と主張。「私にとってレイプとは、無理強いしてやることだ。誰かを縛って。わからない……私は被害者だ」と述べた。

それに対してペリコさんは、「私が唯一の被害者です」と述べ、性行為に同意したことは一度もないと否定した。

ドガン被告は、ドミニク受刑者に責任を転嫁しようとする中で、状況が何か妙だと「疑った」こともあるものの、受刑者が自分を安心させたと主張。「この男は人を操る」と述べた。

証人として出廷していたドミニク受刑者は、ぺリコさんが意識を失っていないとほのめかしたことは一度もないと主張。オンラインのチャットルームで集めた男性全員に、妻は「薬物を投与された状態」だと伝えていたと説明した。ドガン被告に対しても、「妻が眠っている間に、本人の知らないうちに虐待する相手を探している」とはっきり伝えたと付け加えた。

ペリコさんが第一審を公開裁判にすると決め、メディアの取材を受け入れたことで、この事件は世界的に注目された。しかし一審判決が出ると、ペリコさんはすぐに私人としての暮らしに戻った。

今週の第二審で証人として出廷し、昨年の一審判決以来初めて公の場に姿を見せたペリコさんは、数カ月間にわたり経験した原因不明の神経症状や記憶喪失についてあらためて証言した。自分の体調不良が、ドミニク受刑者に投与された薬の副作用だとは気づかず、当時の夫が自分に何をしたのか、何も知らなかったと強調した。

「(ドガン被告の)顔を初めて見たのは、彼が私をレイプしている映像を見た時」だったと、ペリコさんは証言した。「その映像は私の記憶に永遠に刻まれています」。

「最初の裁判では、この男は自分が私をレイプしたことを認めようとしませんでした。でも私は、この1年の間に彼が少しは内省したのではないかと思っていました」とペリコさんは言い、ドガン被告へ次のように付け加えた。

「あなたはこれがレイプだったと理解していない。いつになったらそれが犯罪だと認めるのですか? 私はあなたのことを恥ずかしく思います」

ペリコさんはさらに、昨年12月の一審判決以降、自分たちの家族関係がひどく破壊されてしまったことについても話した。

娘のカロリーヌ・ダリアンさんは、自分も父親に薬物を投与され虐待されたと主張している。ドミニク受刑者のコンピューターから、ダリアンさんが意識を失っている写真が見つかったためだ。

ダリアンさんは一審判決後、母親が支えてくれないと感じていることを明らかにした。母と娘は現在、連絡を絶っているとされる。母親が出廷した第二審の法廷に、ダリアンさんは姿を見せなかった。

「私たち家族は、どうにかして自分たちを立て直そうとしています」とペリコさんは話した。

「カロリーヌが、自分の求める答えを見つけられるよう願っています。いつかまた、私と娘がお互いを見つけられるよう、願っています」とも、ペリコさんは述べた。

ペリコさんはさらに、自分を何かの象徴的存在として扱うのをやめてほしいと求めた。「私は、自分の裁判を公開するなどということをした、普通の女性です。私は自分の希望とは無関係に、象徴になってしまったのです」。

第一審でそうしたように、ペリコさんは控訴審でも、他のレイプ被害者への思いで自分の陳述を締めくくった。ペリコさんと異なり、多くの被害者には、加害者を法廷に立たせるための大量の証拠はない。

「私たちが受けた仕打ちについて、絶対に恥ずかしいと思わないように、その人たちに言いたい。それは私たちのせいではないので」と、ペリコさんは強調した。

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