トランプ大統領、予定通り関税措置発動-カナダとメキシコ、中国対象
トランプ米大統領は東部時間4日未明(日本時間同日午後)、カナダとメキシコからの輸入品に新たに関税を賦課し、中国からの輸入品への関税率を倍に引き上げる措置の発動に予定通り踏み切った。米国としては1930年代以来の大規模な関税措置で、貿易戦争の劇的なエスカレーションによって、主要貿易相手国との関係を覆すことになりそうだ。
具体的にはカナダとメキシコからの輸入品に25%の関税を課し、中国産品については関税率を現行の2倍の20%とする。カナダからの輸入のうちエネルギーには10%の関税率を適用する。全体で年間約1兆5000億ドル(約223兆円)相当の輸入品が対象となる。
新たな歳入を確保するとともに、国内で製造業雇用を創出するため、輸入関税を活用する方針に揺るぎがないことを市場に明確に示す動きとなるが、関係各国による報復や法的措置を招く公算が大きい。
実際、中国は鶏肉や綿花などの米国産品に最大15%の関税を課し、大豆や牛肉、果物には10%の関税を賦課すると、米国の措置発動直後に発表した。また、防衛関連を中心に米企業10社を「信頼できないエンティティー」リストに追加するとした。
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トランプ氏自身が政権1期目に再交渉した「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の先行きが危ぶまれ、北米3カ国にサプライチェーンが交錯する自動車産業に大きな影響が予想される。
さらに、米国では製造業活動に停滞の兆しが見られ、消費者景気信頼感が悪化する一方で、インフレ抑制の進展は滞っている。米株価も他国・地域に見劣りする状況にあって、トランプ政権による一連の関税措置は米経済のストレスを一層高めるリスクがある。
トランプ氏が3日、カナダとメキシコについて、一時的猶予を交渉する「余地は全くない」と述べたのを受け、米株式市場では売りが加速し、S&P500種株価指数は1.8%安で終了。4日のアジア市場にも株安の流れが波及した。外国為替市場では、カナダ・ドルとメキシコ・ペソが対米ドルで下落した。トランプ氏は両国に対する関税賦課を2月にいったん延期していた。
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米エール大学の超党派政策研究センター「the Budget Lab at Yale」が3日公表したリポートによれば、今回の措置の結果、米国の輸入関税率は平均で1943年以来の高水準となる。米家計には最大2000ドルの負担増となり、特に各国の報復があれば、米景気の大幅鈍化につながるとしている。
報復措置は迅速で、カナダ政府は3日遅く、米国製製品に対する包括的な対抗措置を発表した。その第1弾は、米国からの輸入品約300億カナダ・ドル(約3兆860億円)相当に対する25%の関税で、米国の課税と同時に発動される。同率の第2弾は3週間以内に1250億カナダ・ドルの製品に課される予定で、そのリストには自動車やトラック、鉄鋼、アルミニウムなども含まれる。
トルドー首相は3日夜の声明で、「カナダはこの不当な決定を放置しない」と指摘。同国の報復計画は、トランプ氏が広範な関税を課す大統領令に署名した後に発表したものと同じだ。
メキシコのシェインバウム大統領は3日、報復措置を打ち出す前にトランプ氏の決定を待つと言明。また中国商務省は、米国の関税に対して自国の権利と利益を守るために必要な対抗措置を取るとする声明を発表していた。
バイデン前政権の経済運営に対する有権者の不満が、トランプ氏のホワイトハウス返り咲きの原動力の一つとなっただけに、新たな関税措置は危険な一手と言えそうだ。最近の世論調査では、有権者がトランプ氏にインフレ対策強化を望んでいることが示された。
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トランプ氏の関税政策を巡っては、インフレ加速を招く一方、同氏やその盟友が予想するような歳入増にはつながらないと複数のエコノミストが警告。だが、政権1期目に成立した減税の延長を目指すトランプ氏はこうした懸念を一掃してきた。
なおトランプ氏は米東部時間4日夜(日本時間5日午前)に上下両院合同会議で演説し、政権2期目の優先施策を打ち出す予定だ。
原題:Trump’s Canada, Mexico, China Tariffs Hit in Deepening Trade War、China Hits Back at Trump by Targeting Farm Goods, Defense Firms(抜粋)