EU、対ロシア制裁最新案の提示を延期-トランプ氏要求でG7と協調
欧州連合(EU)は、ロシアに対する最新の制裁パッケージの正式提示を延期する見通しだ。米国が制裁に動く条件として欧州により強力な措置をトランプ米大統領が求めたためだという。欧州の外交筋が明らかにした。
EUの執行機関、欧州委員会は当初、17日に第19次の制裁案を提示する予定だった。だが、米国は12日に主要7カ国(G7)の協議で、ロシア産原油購入を理由に中国とインドに最大100%の関税を課すなどの措置を要求した。
米国の要求はロシアのプーチン大統領を交渉の場に引きずり出すことが狙い。G7当局者は現在、新たな制裁パッケージの策定に取り組んでおり、2週間以内に草案をまとめることを目指していると、事情に詳しい関係者が匿名を条件に語った。
ブルームバーグは先に、EUはロシアの石油取引を可能にしているインドと中国の企業に対する制裁を検討していると報じていた。
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トランプ氏は週末、欧州諸国が同調するならロシア産原油に対して「大規模な」制裁を科す用意があると述べていた。中国とインドによるロシア産エネルギーの購入は、プーチン氏にとってウクライナ侵攻の資金源として極めて重要となっている。
米国はロシアの石油会社だけでなく、ロシアが石油を輸送し取引で利益を得ることを可能にしているネットワーク全体を標的にすることを提案している。
トランプ氏はこれまで、自ら設定した複数の期限を過ぎてもロシアに直接的な制裁を科すことはなく、プーチン氏は和平交渉に応じない姿勢を続いている。一方で米国は、ロシア産原油の購入を続けていることを理由にインドに対する関税を2倍に引き上げて50%とした。米国とインド、中国との貿易交渉は引き続き行われている。
米国の提案は、欧州の側にボールを投げた形となる。インドや中国への関税は、両市場への輸出に多くの国が依存するEUにとっては厳しい要求だ。ただ、トランプ氏の要求の一部はすでにEUの制裁案に含まれていた。
EUはロシア産ガスの段階的購入停止を2027年以降に延期し、ハンガリーやスロバキアといった内陸国にはロシア産原油制裁の一時的な適用除外を認めている。それでも、22年の制裁発動以降、EUの輸入原油に占めるロシア産の割合は27%から昨年は約3%にまで低下した。
ブルームバーグが先に報じたところによれば、EUによる第19次制裁パッケージでは、ロシアの銀行やエネルギー企業約6社、同国の決済・クレジットカードシステム、暗号資産取引所、同国の石油取引に対する制限強化などが検討されていた。
EUの制裁案提示の遅れは、ポリティコが先に報じていた。
原題:EU Delays Russia Sanctions Proposal to Align With G-7 Priorities(抜粋)