ウォラーFRB理事、関税によるインフレへの影響は一時的と予想

ウォラー米連邦準制度理事会(FRB)理事は14日、トランプ大統領の貿易政策が米経済に与え得る影響について2つのシナリオを提示し、いずれのケースにおいてもインフレへの影響は一時的なものにとどまる公算が大きいとの見解を示した。

  ウォラー氏はセントルイスでの講演で、新たな関税政策は「米経済に影響を与える数十年で最大級の衝撃の一つだ」と指摘。「今後の関税政策やその潜在的影響は依然として極めて不透明だ。そのため先行きも極めて不透明であり、政策担当者は幅広いシナリオを念頭に柔軟に対応することが求められる」と語った。発言は講演原稿に基づく。

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  同氏は関税政策が今後どう展開するかについて2つのシナリオを提示し、それぞれについて金融当局がどう対応すべきかに言及。最初のシナリオは、平均25%程度の関税が一定期間維持される「大規模関税」。2つめのシナリオが「小規模関税」で、一律10%の関税は残りつつも、それ以外の部分は徐々に撤廃されていくというものだ。

  「大規模関税」シナリオでは、経済成長は「ほとんど停滞」するほど鈍化し、失業率も大幅に上昇する公算が大きいとウォラー氏は指摘。この状況下ではインフレ率も大きく上昇し、企業が関税によるコストを迅速かつ全面的に価格転嫁した場合、今後数カ月で年率換算で約5%に達する可能性があると述べた。

  ただ、それでも消費者のインフレ期待がしっかりと抑制されていれば、インフレ率は2026年にはより落ち着いた水準に戻ると予想。「2021年に始まったインフレ上昇が、私自身や他の政策担当者の当初の想定よりも長引いたことは事実だが、関税によるインフレ上昇は一時的なものになると判断している」と同氏は語った。

  その上で「もし景気減速が深刻化し、リセッション(景気後退)の脅威さえある場合には、政策金利を従来想定より早く、かつ大幅に引き下げる方向を支持することになるだろう」と述べた。

  2つめのシナリオではインフレへの影響ははるかに小さく、年率換算で約3%程度になると予想。経済生産と雇用成長への悪影響はあるものの、1つめのシナリオより打撃は小さいだろうと話した。

原題:Fed’s Waller Expects Tariff Impact on Inflation to Be Temporary(抜粋)

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