「ベネズエラの雌虎」が持つ「2つの顔」にご用心? トランプ帝国批判の副大統領にも「裏の顔」が...
大統領が拉致されても体制は揺るがなかった。米軍の奇襲でニコラス・マドゥロが連れ去られてもベネズエラに権力の空白は生じず、副大統領のデルシー・ロドリゲスが粛々と「代行」に就任した。 【ベネズエラの「次」を読む】「ドンロー主義」=アメリカオンリー時代の到来...グリーンランドで狙う「ディール」&イランへの武力介入は? まだ56歳で国際的な知名度は低いが、ロドリゲスは既に老練な政治家だ。根っからの社会主義者で、かつては「雌虎」と評されたこともある強硬派。 ウゴ・チャベスの時代から頭角を現し、マドゥロ政権では通信情報相や外相などの要職を歴任。副大統領に昇格してからは諜報機関を統括する一方で石油相も兼ね、主義主張は曲げないが現実的な対応のできる人物として知られてきた。 要するに「顔が変わっただけで、体制は変わっていない」と評したのは米シンクタンク戦略国際問題研究所の上級研究員クリストファー・エルナンデスロイ。「軍隊を握り、昨日までマドゥロを支えてきた面々が今はロドリゲスを支えている」 スペイン語に加え、英語とフランス語にも堪能なロドリゲスには政治家の血が流れている。父ホルヘ・アントニオ・ロドリゲスは社会主義者で左派のゲリラ活動に参加し、マルクス主義の政党を創設した人物。1976年にアメリカ人実業家の誘拐に関与した容疑で逮捕され、獄中で死亡している。 兄のホルヘもマドゥロ政権の参謀格だった人物で、今は国会議長の肩書を持つ。 ただし、ここで注目したいのはロドリゲス兄妹が以前からトランプ米政権とのパイプを築いていた事実だ。米紙マイアミ・ヘラルドの昨年の報道によれば、2人は自分たちをマドゥロよりも「受け入れやすい」選択肢として米政権に売り込んでいた。
英紙フィナンシャル・タイムズも、2人が昨年段階で「マドゥロ以後」についてアメリカ側と内々の協議を行っていたと報じている。同紙の情報源によれば、トランプ政権は彼女を「こちらの言いなりにはならないが、交渉事では最も建設的な役割を果たせる人物」と見なしていた。 当然のことながら、ロドリゲスは(少なくとも表向きは)アメリカの軍事作戦を強く非難し、今もマドゥロこそベネズエラの「唯一の大統領」だと主張している。 一方でドナルド・トランプ米大統領は、マドゥロ拘束の直後(1月3日)にロドリゲスを「ベネズエラを再び偉大にするために必要なことを実行するのに前向き」な人物と評していた。 しかし同日のテレビ演説で、ロドリゲスはアメリカの行動を「国際法に反する非道な行い」と非難し、「われわれはいかなる帝国の奴隷にもならない」と宣言した。 するとトランプは、一転して彼女への脅しを強めた。翌4日には米誌アトランティック電子版のインタビューで、「正しいことをしなければ彼女はマドゥロよりも大きな代償を払うことになる」と警告している。 これを受けて、ロドリゲスはトーンダウンした。その日のうちにSNSで声明を発し、アメリカ政府と協力する用意があるとして、トランプに「私たち、そして私たちの地域に必要なのは平和と対話であり、戦争ではない」と呼びかけ、こう付け加えた。 「平和と発展、主権と未来。それがベネズエラの権利だ」 From Foreign Policy Magazine
クリスティーナ・ルー (フォーリン・ポリシー誌記者)