米利下げ観測後退、FOMC控え市場は金融当局の明確な方針探る

トレーダーらの米利下げ予想が後退している。経済や政治に不確実性がある中、米金融当局の明確な方針を見極めようとしている。

  1週間前の時点では、年内約3回の0.25ポイント利下げが米短期金利先物市場の動きに反映され、6月にも利下げ実施が見込まれていた。しかし、19日に連邦公開市場委員会(FOMC)政策決定とパウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長の記者会見を控えた今は、トレーダーが織り込む年内利下げは2回にとどまり、年後半まで実施されないと見方が優勢だ。

Rate cut premium by the end of next year has diminished the past week

Source: Bloomberg

  米金融当局者と投資家は共に一筋縄ではいかない環境下にある。米経済は依然として成長し、インフレ率は金融当局の目標より高いものの制御可能な状態になりつつあるように見受けられる。こうした状況は追加利下げには慎重になるべきだという主張を裏付ける。

  その一方で、消費者心理は悪化しつつあり、経済成長シナリオにひび割れが見え始めている。トランプ米大統領の関税を重視した貿易政策が経済を失速させ、インフレを再燃させかねないとの懸念は強まっており、米国株などのリスク資産はここ数週間に大幅下落。指標の米国債利回りは数カ月ぶりの水準に低下した。トランプ大統領の財政政策や連邦政府縮小計画も経済に影響しそうだ。

  トレーダーの関心は19日のパウエルFRB議長の記者会見に集まる。議長は金融当局の足元の景気認識を伝えながらトランプ大統領の通商政策の潜在的影響を考慮する難しい綱渡りを迫られる。また、FOMC参加者による最新の「ドット・プロット」(金利予測分布図)も公表される。

  モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメントの債券担当の幹部、ビシャル・カンドゥジャ氏は「経済は順調だが当局には必要に応じ行動する用意があることをパウエル氏は市場に認識させる必要がある」と指摘した。

  米金融当局の政策動向に密接に追随する担保付翌日物調達金利(SOFR)に連動する市場では、トレーダーらは6月18日の会合まで当局が政策金利を据え置くことに注目するポジションを狙っている。

  一方、SOFR先物市場では、2025年6月限でショート(売り持ち)ポジションの基盤が形成される初期の兆候が見られ、過去4営業日で未決済建玉残高が増加している。

  シティのストラテジスト、デビッド・ビーバー氏はリポートで、「市場が年内3回の利下げ見通しを押し返していることから」、SOFRとフェデラル・ファンドのロングポジショニングは「ここ数営業日で行き過ぎた水準から縮小している」と分析した。

原題:Traders Ratchet Back Rate-Cut Bets as They Seek Clarity From Fed(抜粋)

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