トランプ氏の貿易戦争が招く混乱、ボラティリティートレーダーは歓迎
市場のボラティリティーで利益を上げるオプショントレーダーは、トランプ米大統領の貿易戦争によって引き起こされた市場の混乱を歓迎している。
自己勘定取引会社ブライト・トレーディングのメンバー、クリス・マコネル氏(56)は2024年の株価上昇時、午前3時に起床していた。オーバーナイト取引のボラティリティー上昇で利益を上げるためだ。だが、今年に入り市場は大きく変動しており、同氏の今年の利益は昨年を80%上回っている。
そして今、マコネル氏は目覚まし時計のスヌーズボタンを押すことも可能だ。
ラスベガス在住のデイトレーダーである同氏は、シカゴ・オプション取引所(CBOE)のボラティリティー指数(VIX)が「急上昇し20を上回れば『よし、きょうはゆっくり寝ていられる』と思う」とし、「トランプ氏がとっぴであればあるほど、ボラティリティーと私のあらゆるトレードにとって有利になる」と述べた。
一方、長期投資家の大多数はより大きな痛みを感じている。トランプ氏のカナダ、メキシコ、中国との関税を巡る論争により、S&P500種株価指数の時価総額は6%余り消失。ほとんどの人の確定拠出年金401kと退職後の貯蓄プランが過去2週間に打撃を受けている。
しかし、ボラティリティーを専門とするトレーダーは、市場を揺るがすトランプ政権の政策を巡る動きから恩恵を享受している。
パイパー・サンドラーのオプション責任者、ダニエル・キルシュ氏は、「今はトレーダーの市場だ」と指摘。株式の相関が高まるにつれ、ボラティリティーを取引するトレーダーにとってヘッジやオプションを通じてポジションを収益化する機会が増えていると説明した。
トランプ氏の関税のような大規模なマクロ面でのリスクは、足元のように株式の一段の連動をもたらすことが多い。株式の相関を測る指標は先週、円キャリートレードの巻き戻しで市場が動揺した昨年8月初め以来の最高水準に達した。同指標は今年に入ってから過去最低水準近辺で推移していた。
相関関係の高まりはボラティリティーの上昇を伴い、VIX指数は先週、取引時間中に26を上回った。これは20-22年の新型コロナウイルス禍以降ではほとんど見られなかった水準だ。
また、デイトレーダーは市場のストレスに直面して手控えるのではなく、ボラティリティーを歓迎しているようだ。
CBOEグローバル・マーケッツの集計データによると、S&P500のオプション取引のうち、24時間以内に期限切れとなる「ゼロ・デー・オプション(ゼロDTE=ゼロ・デー・トゥー・エクスピレーション)」は先月、全体の56%に上り、過去最高の割合に達した。
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デイトレーダー向けオンライン証券会社、トレードステーション・グループのジョン・バートルマン最高経営責任者(CEO)は「コロナ禍が始まって以来、これほどの取引量は見たことがない」と驚きを隠さない。顧客は、より広範な上場投資信託(ETF)から最も変動が激しい単一銘柄の株価変動に賭ける動きにシフトしており、エヌビディア、テスラ、マイクロストラテジーなどのオプション取引量が増加しているという。
VIX指数は上昇しているものの、急伸したり、パニックを示唆する水準に達したりはしておらず、市場ウォッチャーは最近の売りは昨年8月に比べて「秩序だった」ものと評価している。
Swings in the benchmark are the largest since August
Source: Bloomberg
トレーディング会社サスケハナ・インターナショナル・グループのデリバティブ戦略共同責任者、クリストファー・ジェイコブソン氏によると、オプション市場は過去1週間、取引時間中のボラティリティーを一貫して過小評価しているという。
ジェイコブソン氏は7日付のリポートで、過去5営業日の取引時間中の平均的な変動は約2.2%と8月初め以降で最高を記録しているが、終値ベースの前日比や取引時間中の値動きを考慮すると、実際にはボラティリティーがさらに高まる余地があるとした。
原題:Volatility Traders Revel in S&P 500’s Wild Tariff-Driven Swings(抜粋)