“食えない学位”の逆襲か AI業界でいま「哲学専攻」が強く求められる理由
ロバート・ロングがニューヨーク大学の大学院に進み、心の哲学を専攻したときの志は、ごくありふれたものだった──学術誌に論文を発表して、就職市場に出て、大学で職を得る。 同じ哲学の博士課程にいた女性が、OpenAIという無名の非営利団体でAI政策に取り組むつもりだと打ち明けてきたとき、彼は「ずいぶん突飛だなと感じた」と言う。 だがロング自身の哲学的関心も、AIへと傾いていった。博士論文のタイトルは「機械学習の哲学に関する諸論考」。そして2023年初頭、ちょうどChatGPTが爆発的に広まりつつあったころ、彼はポスドク研究のためサンフランシスコへ移った。 新しい大規模言語モデル(LLM)が不気味なほど人間らしいふるまいを見せはじめると、彼は意識を持つ可能性のあるAIの重大さに目を開かれた。そして、この場に踏みとどまっていれば、職業的に興味深い何かが起こるかもしれない、という可能性にも気づいた。 根源的な問いに厳密に答えようとすることは、いわば哲学の眼目そのものだ。ロングは、動物福祉を専門とするニューヨーク大学の哲学者ジェフ・セボと共同で取り組んだ論文で「AIの福祉を真剣に受け止めるべきだ」と主張した。AIシステムが「道徳的に重要な存在」であるなら、それを傷つけることは避けるべきであり、逆にそうでないなら、そうしたシステムを気づかう必要はないと論じる内容だった。 のちにロングは、三つの財団から資金を得て、同僚とともに非営利団体「エレオスAIリサーチ」を立ち上げた。
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