トランプ氏、在韓米軍基地の所有権譲渡迫る…「役割見直し」李氏の思惑通りに進まず

25日、米ホワイトハウスで、韓国の李在明大統領(右)を出迎えるトランプ米大統領=AP

 【ワシントン=阿部真司、依田和彩】米国のトランプ大統領と韓国の 李(イ)在(ジェ)明(ミョン) 大統領は、25日の首脳会談で在韓米軍の役割を巡って明確な姿を打ち出すことができず、米韓同盟の先行きには不透明感も漂っている。

お世辞を連発

 会談では、李氏がトランプ氏を持ち上げる場面が目立った。

 「ピースメーカー(平和の構築者)」を自任し、紛争の調停者としてノーベル平和賞受賞の野心を隠さないトランプ氏に対し、李氏は「大統領がピースメーカーの役割を果たすなら、私はペースメーカーとして一生懸命支援する」と語り、米朝対話の再開に伴走すると訴えた。米朝対話に向け、「北朝鮮にトランプタワーを建設し、ゴルフをしてほしい。彼(北朝鮮の 金正恩(キムジョンウン) 朝鮮労働党総書記)はあなたを待っている」とも呼びかけた。韓国大統領府によると、李氏はゴルフが趣味のトランプ氏に特注のパターなどを贈呈した。

 李氏が低姿勢に徹したのは、トランプ氏から受け入れ難い要求を迫られないようにするためだったとみられるが、思惑通りには進まなかった。

 トランプ氏は、在韓米軍基地の土地の所有権譲渡を迫った。これまで主要議題に上ったことはなく、「韓米同盟を巡る基本的合意の枠組みを揺るがす言及」(聯合ニュース)だった。在韓米軍駐留経費の負担増や貿易交渉を有利に進めるため、トランプ氏が仕掛けた交渉術との見方がある。

共同会見なし

 会談の焦点は、在韓米軍の活動範囲を朝鮮半島以外に広げる「戦略的柔軟性」に関するやり取りだった。台湾有事も視野に、在韓米軍の役割を中国に対する抑止力強化にも拡大させるべきだとの考えで、役割の見直しに伴い、在韓米軍の一部をグアムに移転させる案が取りざたされている。

 在韓米軍の役割見直しは、米国防総省ナンバー3のエルブリッジ・コルビー国防次官の意向が反映されているとみられている。コルビー氏は就任前の2024年、自身のX(旧ツイッター)で「在韓米軍を中国に重点を置くよう再編することに賛成だ」と述べていた。

 李氏は会談前、戦略的柔軟性について「韓国の立場では簡単に同意しにくい」と韓国報道陣に述べていた。主要な貿易相手国でもある中国を刺激したくないためとみられる。

 トランプ氏は首脳会談の席上、在韓米軍の役割を見直すかどうか記者から問われ、「今は言いたくない」とはぐらかした。

 韓国の 魏聖洛(ウィソンラク) 国家安保室長も会談後、記者団から戦略的柔軟性に関して議論したか問われた際、「同盟の現代化について大きな方向性では意見の一致が図られている」と述べ、回答を避けた。会談後の共同記者会見も行われず、意見差を埋められなかったとみられる。聯合ニュースは米韓の間で「国益を守るための 熾烈(しれつ) な綱引きが続く」との見方を示した。

関連記事: