「このクレイジーなイベントは一体何なんだ」…富山の奇祭に外国人が初参戦、巨石は「想像以上にヘビー」

 重さ100キロもの石を持ち上げて力自慢を競う富山県入善町の奇祭「 大磐(おおばん) まつり」が24日夜、新屋住吉社(新屋)で開かれた。今年は、史上初となる外国人の参戦や、約1世紀ぶりとなる「最重量」石の成功者誕生に沸き、地域の伝統行事に新たな歴史が刻まれた。(古池徹)

参加のため初来日

117キロの御影石と格闘するダニエルさん(24日、入善町で)

 オーストラリアの首都キャンベラの心理カウンセラー、ダニエル・ホワイトさん(36)は、SNSの動画にくぎ付けになった。巨大な石を持ち上げられるかどうか、日本人たちが競い合っている。「このクレイジーなイベントは一体何なんだ――」

 興味津々で今年4月、投稿主にメッセージを送ると、大磐まつりについて知らされ、「自分もチャレンジしたい」と初来日を決めた。

 動画の投稿主は「盤持ち石祭り界のレジェンド」こと、金沢市の会社員西野達也さん(39)だ。江戸時代から全国に伝わるとされる巨石を持ち上げる珍行事に興味を持ち、「そばつぶ」の名前で各地で石を担いでは動画を発信している。

 2022年には小矢部市の棚田神明社で、住民の知らぬ間に参道脇に巨石六つを整然と並べ、「誰が運んだのか」と地域を騒然とさせ一躍、時の人となった。最近は海外からの反響も増えているといい、自身3度目の出場となる大磐まつりにダニエルさんを誘った。

戦国時代の伝説

 大磐まつりの由来は、戦国時代に遡る。上杉謙信に攻められ境内に火が放たれたが、村人が神社にあった一対の神石を池に投げ込んだところ、不思議と火が消えたとの言い伝えがある。神石は引き上げられ、いつしか力試しの石になったらしい。

 県内でも同様の行事はあるが、途切れずに伝承されてきたのは大磐まつりだけといい、神石が引き上げられたとされる7月24日に毎年、大磐まつりが開催されている。

 用いられるのは「青石」(135キロ)と「御影石」(117キロ)で、肩まで持ち上げて成功となる。

 今年のトップバッターはダニエルさん。初の海外からの挑戦者とあって、観衆からの注目度は高かったが、横たわる御影石に力を込めても、なかなか動かない。奮闘むなしく膝の高さまで上げたところで力尽きた。

「想像以上にヘビーだ」

 「想像以上にヘビーだ」とうなだれるダニエルさんに温かい拍手が送られた。「失敗したが、みんな親切に接してくれていい思い出になった」と汗を拭った。

 その後、県内外7人の男たちが御影石に屈する中、西野さんは「ひょい」と軽々肩まで持ち上げる達人ぶりを披露。続いて、昨年失敗した青石も、成功させると、この日一番の歓声が上がった。

135キロの青石を持ち上げる「レジェンド」西野さん(24日、入善町で)

 西野さんは「これまで持った石の中でもトップ3に入る難しさ。リベンジできてうれしい」と笑顔を見せた。新屋住吉社の総代長・新田和典さん(67)によると、最後に青石を持ち上げた記録があるのは昭和初期という。新田さんは「本当にすごい。今年は一段と盛り上がってよかった」と喜んでいた。

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